第三回 誕生日の朝
出勤前にカレンダーを見て初めて、今日が誕生日であることに気づいた。
何故気づかなかったのだろう。四十回目ともなると思い出したくなくて、心が敢えて逸らすように仕組んだのか。歳をとって忘れてしまったのだろうか。
誕生日を忘れて歳を感じることが、自分への誕生日プレゼントだと思うと、やりきれない。気づかなければよかったのに自ら地雷を踏んでしまった。爆発は連続する。二度目はおめでとうメールが、一通も届いていないこと、三度目はラインアプリから『友達を登録しましょう』と催促メッセージがきたことだ。
ライン登録している相手くらいある。アプリが勝手にリセットしたのだ。スマホが古いせいか、最近とみに調子が悪く、アプリがリセットされる珍現象が続いている。考えてみれば三十代で購入したスマホだ。古すぎて、不具合を起こしているのだろう。
友達を登録するよう、機械に指示されるなんて恥の上塗りだ。リセットされたら全て失う。戻ってはこないのだ。ラインに登録していた、いくつかの洋服屋と化粧品会社と雑誌のサイトに、とっくに疎遠になった数名の知り合いと引き換えに、初心に返れということなのか。ラインがリセットされたくらいで腹を立てている自分に驚く。誰とも関係を深めたくなかったのに、四十になった途端、誰かと関わりたいと思うのは、歳を取った証拠なのかもしれない。
爆発で瀕死の状態だ。早く出勤しよう。ペンダントを首にかけた。
目覚めると海だった。
何が起きたのだろう。





