第二十回 ダブルトモコ
甘美で刺激的な美女生活。
男たちは皆優しく親切だった。
調子に乗ったわたしは親友の彼に手を出すという大失態を犯す。
知らなかったのだ。彼が親友の彼であることも親友に彼がいることも。
「本当に親友だったのか」
マスターの疑問は最もだ。
わたしも事件の後思った。
当時聞けなかったことを今更掘り返せない。小さな傷は時を経て大きな傷になった。
親友の名前は友子。
西洋美術史の授業で出会った。
友子と倫子。倫子はトモコとも読めるので、ダブルトモコだと盛り上がった。
二人ともロセッティが好きで、友子に『魔性のヴィーナス』に似ていると褒められたことがある。
りんごを持った美の女神が微笑んでいる華やかな絵だ。微笑みに騙された男の心を金の矢で射ろうしている。ロセッティの中でも一番好きな絵だ。
「絶対優勝出来る」
ゴールデンアップルに応募するよう、勧めてくれたのも友子である。
期待に応えたいと思った。女王になった時誰よりも喜んでくれたことは今も本当だと信じたい。
友子の彼と知らずに出会ったのは、国立西洋美術館だ。
ロセッティの描く女性に似てますねと声をかけられる。縁を感じ、ホテルに行った。
友子は、平凡な名前が好きではないと言っていたが、友達が沢山できそうで羨ましかった。
実際彼女には沢山の味方がいたのである。
事件が起きてからは、ゴールデンアップルで負けた女たちが全員友子側につき、わたしは大学中の女子全員を敵に回した。
大学生なんて、常に退屈している。
何か面白い遊びを探しているものだ。
失敗したわたしは格好の的だったのだろう。
わたしを女王にするところからが始まりだとすれば、壮大な遊びだ。
すぐに飽きると期待していたが、一年経って女王を返還しても、わたしはひとりぼっちだった。





