第十八回 カエル
不思議なことに、大学三年になって、綺麗だと褒められるようになった。
ゴールデンアップルが近づいていたこともあり、徐々に自信がついてくる。一度は諦めたゴールデンアップルだ。
「絶対優勝出来る」
甘い言葉に踊らされ、意気揚々と立候補する。モデルとして生き残れる、とは思っていなかったが、就職活動に役に立つと考えた。
予選を勝ち抜き、最後の三名に残る。
最終審査員を見て酷く驚いた。わたしをストーカーしていた、男子学生だった。執拗に観察している。
何かをされたわけではないので親友以外に相談したことはなかった。
不安だが、苦情を言うことで問題が起きたらと思うと怖くて目を瞑る。
興奮しながら舞台に上がってくる彼の笑顔は今でも忘れられない。
予定通り自己アピールタイムが始まった。
他の二人はアピールしていたと思うが、よく覚えていない。わたしは不安で何もできなかった。
万が一わたしが勝ったらどうなるのだろう。
彼はわたし以外の子を選んでくれるだろうか。
恐ろしくて気を失いそうだった。彼が最終審査員になるなんて、偶然とはとても思えない。きっと裏で不正が行われていたんだ。
でも何の為に誰が最終審査員に選んだのか。
自己アピールは全くできなかった。彼の熱い視線を感じる。
水着をつけていたにも関わらず、裸にされているような気持ちだった。
皆の前で視姦されている。
ゴールデンアップルに出なければよかった。
後悔ばかりがわたしを責め立てる。早く舞台を降りたい。
わたしの様子が変だと気づいたのか、ちゃんとやれなどと野次も飛んだ。怖くて早く終わるよう祈る。
長過ぎる時間がついに終わった。
おそらく、三位になるだろう。
わたしの希望とは異なった結果になった。
「ゴールデンアップル、女王は、本庄倫子」
司会者の言葉は、割れんばかりの歓声にかき消される。
彼がわたしを選んだのだ。
王冠を手に近づく彼の顔は金色に輝いている。
わたしはカエルになった。蛇の前で動けないカエルだ。
女王は最終審査員へ、礼をしなくてはならない。
わたしはアピールタイムで何をするか宣言していない為、最終審査員の言うなりだ。
カエルは蛇に飲み込まれる。
彼の手で金製のりんごの形の王冠を載せられた。
「逃げるなよ」
彼の声を初めて聞いた。





