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ハッピーバースデー  作者: 松本あおい
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第十五回 貴船神社

 荒井さん曰く、貴船神社は真鶴の心臓部らしい。

 京都の貴船神社とは違い、きぶねと濁るんだと教えてもくれた。

 山は聖域と言うが、真鶴ではお林が聖域なのかもしれない。


 神社は興味がないどころか行きたくない。荒井さんが無理に鳥居前で降ろしたのだ。

 貴船神社は真鶴マリーナの向かいにある。こんもりした森のようだ。鳥居から階段が続いている。上る気になんてなれない。

 駅まで歩いて帰ろうかと思ったとき、一人のおばあさんが現れた。


「具合悪いの?」


 地元の人だろうか。背中が曲がっていて、わたしよりも具合悪そうだ。


「階段多くて疲れるわよね。百八段あるのよ。上るだけで煩悩が祓えるわよ」


 頑張ってねと、おばあさんはわたしの肩を叩き、階段を上り始めた。上れる体力と気力があることに感心する。


「上った先から新しい景色が見えるわよ」


 荒井さんも、真鶴の全容を見るには貴船神社が適していると言っていた。

 上っていくおばあさんの後ろ姿も本殿も眩しくて怖い。反面恐いもの見たさの気持ちもある。

 おばあさんが上りきるまで見ていた。本殿に向かったのだろうか。姿が見えなくなった。

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