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第十一回 三ツ石
ピーヒョロローと鳥の鳴く声がした。空を見上げると、空の雲を背に黒い鳥影が見える。トビだろうか。
わたしの視線の先を追った荒井さんが教えてくれる。
「トビではなくてノスリ。よく似ているけれど、見慣れるとはっきり違いがわかる」
ノスリの方がトビより小さいらしい。荒井さんが指した方にも鳥が飛んでいた。確かに大きい。どうやら声の主のトビだったようだ。
荒井さんがいない。小走りで後を追った。
半島の先端は長い階段があり、海中の三ツ石へと続く海岸に下りられる。荒井さんは階段を下り始めていた。
三ツ石は真鶴が誇るパワースポットだ。石といっても正確には岩である。駅で見た看板のように、聖域を守る社としめ縄があるそうだ。
突然足がすくむ。階段から見える海はめまいがする程輝いている。
荒井さんのわたしを呼ぶ声が大きすぎて、仕方なく階段を下りた。一段一段下りるごとに三ツ石からの視線が胸に刺さってくる。
お前は何をしている。
何故ここにいる。
何しにきた。
三ツ石の社の神の声なのだろうか。
何をしにここに来たのか、自分に問うてみても答えられない。
目が覚めたらこの町にいたのだ。全てが成り行きで、わたしの意志ではない。
海に向かって、三ツ石に向かって無駄に言い訳していた。





