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せっかくアバターの姿で転生したのに異世界の連中がやけに強い。  作者: モノノキ


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第27話 疑問

ちょい短い!すまん!

評価ブクマ反応ありがとー!

結晶の中の顔を見つめたまま、タナカは首を傾げた。


「え、なんだこれ?」


タナカは記憶を探る。ChaosFantasyでこんな容姿のNPCがいなかったか。フレンドの誰かが、こんな見た目のアバターを使っていなかったか。

掲示板で見た有名プレイヤー、PKギルドの幹部、討伐したボスの関連キャラクター、思いつく限りの引き出しを漁ってみても、この金髪の女に見覚えは一切なかった。


「知らんなぁ、マジで」


呟きながら、タナカは結晶の周りをゆっくり歩いた。四方の壁から垂れる根が、淡い光を絶えず滲ませている。足裏の木肌が沈み、戻る感触が続いた。


一周したところで、タナカはふと足を止めた。


「ん、待てよ」


顎に手をやる。


「なんとなくここに俺を待ってる奴がいると思って、あの群れ全部叩き伏せたわけだけど……別にここが正解とも限らないよな」


言葉にしてみると、急に腑に落ちない気分になってくる。モヨモトが言っていたのは、俺を待っている誰かが大森林の禁域にいる、という曖昧な話だ。禁域の奥にある強大な気配を辿ってみただけで、確証があったわけではない。

目の前の結晶に眠る女がその誰かだという保証など、どこにもなかった。


「もしかして、無駄に戦ったか?」


あれだけの数を斬り伏せて、辿り着いた先がただの見知らぬ誰かだったとしたら、なかなかに間の抜けた話だ。


タナカはしばらく黙り込んだあと、口の端を持ち上げた。


「まぁ、転移魔法陣を設置できる場所が出来ただけいいか……?」


苦笑しながら、自分を納得させるように頷く。無駄足になったとしても、大森林の禁域までの近道を作れたことは事実だ。それに、久しぶりに全力を出せたのも悪くなかった。


気を取り直し、タナカは改めて結晶へ視線を戻した。


薄青い表面は、相変わらず滑らかな光を放っている。内側の女は、目を閉じたまま微動だにしない。長い金髪が、水の中を漂うようにゆっくりと揺れていた。


「うーん、封印されてるとしたら、変に触るのも面倒だよな」


タナカは結晶の縁に伸ばしかけた手を止めた。


「放置が安定か……?」


こうも仰々しく封じられているものには、大抵それなりの理由がある。うかつに解いて厄介事を背負い込むより、今日はここまでにして、モヨモトにでも相談した方が賢明だろう。


そう結論づけて、タナカは一歩、結晶から離れようとした。


その瞬間だった。


結晶の中の女の瞼が、かすかに動いた。


「――ん?」


タナカは足を止めた。閉じられていた目が、ほんのわずかに開いていく。長い睫毛の下から覗いたのは、あの鳥と同じような金色の瞳だった。


「起きたのか?」


問いかけには何も返らない。それでも、瞳はゆっくりと動き、やがてタナカの姿を捉えた。


驚いた様子はない。焦りも、怯えもない。ただ静かに、こちらを見つめているだけだった。その落ち着き払った視線に、逆にタナカのほうがわずかに戸惑う。


「お前は誰なんだ〜?」


答えは返らない。タナカは結晶へ近づこうとして、思い直し、その場で足を止めた。首元のペンダントへ意識を向ける。


ぜんぶ見え見えだゾ〜?の感知は、結晶そのものからは何も拾ってこなかった。予兆も、脅威度も、攻撃の兆しも、一切が空白のままだ。まるで結晶という存在そのものが、感知の外側に置かれているかのようだった。


すると、結晶の中の女が初めて口を動かした。唇がわずかに開き、何かを紡ごうとしている。だが、分厚い結晶に阻まれて、音はまるで届かなかった。


「なんて?」


タナカは耳を澄ませた。額の目まで結晶へ寄せ、わずかな振動でも拾おうとする。しかし、何も聞こえない。


女の視線が、今度はハッキリとタナカへ向いた。それまでの朧げな仕草とは違う、明確な意志の宿った目だった。

唇が、もう一度動く。ゆっくりと、確かめるように。


タナカは目を凝らした。だが、口の動きから言葉を読み取るような特技は持ち合わせていない。


「聞こえねぇし、分かんないわ」


その時だった。


結晶の表面に、細い亀裂が走った。


一本、また一本。蜘蛛の巣のように広がっていく亀裂は、女の顔のすぐ横を通り、根元まで伸びていく。


「お、おい」


タナカは慌てて後ろへ半歩下がった。


パキッ、と小さな音が響いた。


亀裂の奥から、淡い光が漏れ出す。


「ちょ、おい。触ってませんけど?」

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