出来る事③
「トーマスさん、ラインおはよう!」
9時頃扉から出てきた親子を見つけ、そばへと駆け寄る。
「おはようガルムさん」
「おはようガルム君、ラインに魔法を教わるんだってね?頑張って!」
「はい、頑張ります!それとトーマスさんに聞きたいことがあるので少しいいですか?」
「ん?分かった、ラインは先にクララちゃんの所へ行っておいで」
「分かりました、ガルムさん西門で待ってますね?」
「おう!」
ラインの駆け出す背中を見つめトーマスさんと向き合う。
「2人のほうが良いんだよね?」
「はい、ありがとうございます」
僕の目線で察してくれたようだ。
「報告からさせて下さい。昨日の夜のうちに修理用の木材と今日の分の獲物は獲ってあるから行かなくて大丈夫です。」
「いつの間にそんな事を?!有難いけど体は大丈夫なのかい?」
「殆どミオが頑張ってくれたので傷口が開くようなことはしていません」
隣のミオの頭に手を置きながら話す。
「そうか、ミオちゃんもありがとう、助かるよ」
頷きで返しどこか遠くを見つめてしまう。
まだミオが村に来て3日目だが、
僕以外とは喋らないらしい。
皆と仲良くして欲しいが、無理強いすることも出来ないからな…。
「それとトーマスさんに聞きたいことがあって、ぼくの家の屋根を修理したんですけど隙間が空いてるんです。それを埋める方法って何かありませんか?
それと1つお願いがありますーーー」
ーーーーーーーー
トーマスさんから粘土を被せれば隙間を埋められると聞き、作り方などを教わった後別れる。
「ガルムお兄ちゃ〜ん、ミオちゃ〜んおはよー!」
門の下で手を振るクララに小走りで駆け寄る。
「ラインは?」
「ヘンリーの所に顔を出すってさ」
「そっか、ヘンリーも参加してくれれば良いけどな」
「でもいいの?アストレアさんから誰にも教えるなって……」
暗い表情になるクララに笑いかける。
「それならアストレアから許可は貰ってるよ、お前の判断に任せるって言われてるからさ」
「そっか!よかった〜」
胸をなで下ろすクララに癒される。
「もう本は読んだか?」
「途中までだけど読んでるよ?」
「ちょっと見せてくれない?僕の本って2人がもらった本と少し違くてさ…」
僕の右手にある本と自分の本を見比べている。
「ほんとだ、少し薄いんだね!
良いよ見て見て」
「ありがと」
受け取った本をペラペラとめくる。
最初の内容は同じ…か、
後半を流し見していたら、
あるページの言葉が目に留まる。
【魔法は貴方達の心を見てる、
上辺だけでは見透かされる事を覚えておいて】
「この本に書いてある通りなら……見透かされてたって事か」
「ねえねえ、クララいい方法思いついたの!」
「いい方法?どんな?」
「精霊さんに名前を付けるの!」
「…ほう?例えば?」
「水の精霊さんだからスイレンにする!」
おお!
なんて安直なんだ!
でも、いい考えかもしれないな…。
生き物として扱うなら名前があるのは当たり前だしな。
「いいね!僕はそうだな、
雷の魔法覚えたいからライ、かな?」
「ダメ!!
ライはクララの精霊さんの名前なの!」
「……もしかして全部の精霊さんの名前つけてる?」
「うん!もちろん!」
「名前は、スイレン、ライ、エン、フウ、ド、コウ、アン、、とか?」
「おしい!
土だけ一文字だったから二文字に変えたよ?」
「どんな名前にしたの?」
「つち!」
「……多分クララは土魔法は使えないと思う」
「なんでよ〜!」
そんなやり取りをしていると森からラインが歩いてくるのが見える。
「1人か…」
「だね…」
ラインの表情から暗いものは感じない、むしろ凛々しいくらいだ。
「おかえりライン、
ヘンリーは参加しないって事でいいんだよな?」
「はい、今は剣術と体を鍛える事を優先したいって言ってました。余裕ができたら教えてくれとも言われましたよ」
「そっか、それは良かった」
「クララは少し寂しいな…3人で色々するのが当たり前だったから」
「お前らは心で繋がってるだろ?
将来の事は分からないけどさ…お前らなら3人一緒にどこまでも歩いていけるさ」
「もう1人女の子が欲しいけどね!」
「この子は渡さないからな!」
ミオを引き寄せ抱きしめる。
「そんな!狙ってたのに!
ミオちゃんと仲良くなりたいよ〜」
「それは全然構わないぞ、むしろ仲良くしてほしいくらいだ」
クララとならミオも仲良く出来ると思うけど…。
すごい嫌そうな顔をしてるんだよな。
「クララは僕より優しい娘だぞ?
なんでそんな嫌そうな顔するんだよ」
「違う!この娘が嫌なんじゃなくてそのヘビが嫌なの!」
「黒丸が?」
「昔お母さんと喧嘩してたの、だから嫌!」
「……やはりあいつの娘だったか、俺様は何も悪くないからな、縄張りに勝手に住み着く貴様らが悪い」
「な!
うちらはずっとあそこに住んでたから!
縄張りを少しづつ広げてたのはあんたでしょ!地を這うしか能がないくせに!」
「なんだと!お前等こそ引きこもりの化け狐だろうが!」
「黒丸静かにして!」
「ミオ落ち着けって!」
クララと僕の声で罵り合いは止まる。
ミオの唸り声は響いているけど。
黒丸は口をモゴモゴさせるが何も言ってこない。
「はぁ」
クララと仲良くさせるのは無理そうだな…。
「あの〜、そろそろ行きません?」
ラインの一声で僕らは黙って頷き平原を歩き出す。
歩き出しながら、ふと思う。
魔法は心を見る。
……なら僕はどう見えているのだろ?
…名前、か
【雷帝】にしようかな。
ビリッ!
「え?今の…」
「ガルムどうしたの?」
腹の奥が痺れるような感管がした。
これが傷口が傷んだからなのか、
魔法が答えてくれたのか…分からない。




