見送り⑧
井戸がある場所を見つめる。
僕が見た時とは形を変えている。
突き出ていた部分が綺麗に切り取られ落とし穴のようになっている。
アストレアにお願いしていた事だ。
「僕が行こうか?」
首を振りミオは母親を抱えて井戸の中に入っていく。
それを見送り、森の中へ入り、服を使って土を集める。
「……これで、足りるだろ」
井戸に向かうと既にミオが戻っている。
「ミオ、蓋……閉めてもいいか?」
井戸の中を悲しげに見つめるミオに語り掛ける。
「ここに来ればいつでも会えるさ」
「うん、閉めて…」
頷いて蓋をしようとした腕を掴まれ止められる。
水滴が顔を伝うその光景は泣いてるようにも見え心が痛くなる。
「行ってきます、お母さん」
ミオが頷くのを見てから蓋を閉め、その上に持ってきた土を被せる。
その後、周りの土を掘り木の幹を被せるように井戸の上に置く。
ミオが自分で動くまで少し離れた場所で見守る。
親のことは、僕には分からない。
ミオが朝に僕に言った言葉を思い出す。
【あなたが死ぬ時まで、傍にいさせて欲しい】
その言葉にどんな考えや思いがあるのか分からない。
その時の不安そうに僕を見る顔。
【大変な道のりになるかもよ?それでもいいなら、お願いしたいな】
その時の笑顔だけで、十分だった。
ミオが動き僕の横に並ぶ。
「最初はどうするの?」
「村長の所に行ってから森に行こう」
「うん」
何が正しいかなんて分からないけど、
間違いではないはずだから……。
不安な心を動くことで置き去る。
立ち止まる事は、したくないから。




