見送り⑥
昼下がり、円になり4人で作戦会議を開いる僕ら。
「どうすんだよ!お手上げじゃん!」
僕の大声が広場に響く。
「待て待て、材料は分かるから……トーマスさんが」
「剣を振るしか能がない自分が恨めしい!」
「壊す事なら得意だけど……」
僕ら4人、屋根の作り方を知らないと言う事態に陥っていた。
「よし!トーマスを呼んでくる!」
畑で作業してるトーマスさんの元へウィリアムさんが走り寄り、
何かを話し、手を引っ張ってくる。
「屋根の作り方、私も知らないよ?なんとなーく、想像でしか語れないんだけど…」
「ん?ちょっと待ってよ?誰も知らないの?
この村の家はどうやって建てたの?」
「「「アストレアさんが…」」」
大人たちは恥ずかしそうに顔を逸らす。
大人って……。
全部知ってるわけじゃないんだな。
てか壊れた時にアストレアが直せばよかったんじゃ?
あ!
「ねぇ!村長の屋根って綺麗に切断されてたよね!
それを見ながらすればいいんだよ!!」
自分の名案に顔を明るくするが、
大人たちの表情が暗くなる。
「え?すごくいい方法ーー」
「ないんだ…」
「え?」
「もう分解しちゃってさ…」
頭が真っ白になる。
「な、なんでそんな事してんだよ!そんな事する必要ーー」
声を荒げる僕にトーマスさんが広場中央を指さす。
なんだ?広場中央の大きな焚火に薪を入れるマーガレットさんがいた。
…まさか!
「アストレアさんがいない間は火を絶やさないようにしようってなって…
それで使いやすい様に分解をね、アハハ」
思わず天を見上げてしまう。
はぁ、
アストレアの偉大さを思い知らされるよ。
「もう丸太を乗っけるだけの屋根にするか?」
「さんせー」
「ガルムが賛成ならうちも」
「お、おいガルム!投げやりになるんじゃない!」
「そうだ!私たちの家の屋根裏を見に行けばいいんじゃないかな?」
皆が目を見開き、それぞれの家に走り出す。
――――――
「「「「登れねぇ……」」」」
屋根裏に登る方法が、なかった。
「丸太で」
「さんせー」
「うちも」
「剣を振るしか能がないんだ…」
「ちょっとちょっと!丸太はさすがにおかしいですって!」
「ミオ、誰かの家の屋根裏ぶち抜いて見に行くか!あはは」
「「「それだ!!!」」」
え?
「いやいや、冗談だって!」
「いやメチャクチャいい案だよガルム君!」
「さすがガルムだな」
「私もそれしかないと思います」
「……で、誰の家ぶち抜くの?」
途端に皆が固まったと思ったら、皆が僕の方へ体を向けてくる。
「無理無理無理!!!
アストレアから問題起こすなって言われてるんだよ僕は!」
なんてずるい大人達なんだ!
「言い出しっぺだし、なぁ?」
「俺の家はもうボロボロで…」
「妻が嫌がると思って…はは」
こいつら……。
歯を食いしばる。
「一回確認取って来てよ!
優しい奥さんたちなら誰かしらいいって言うかもしれないじゃん!」
僕の言葉に足取り重く奥さんの元へ去っていく。
近くにいるミオを抱きしめる。
「どうしたの?」
「ミオ、大人って怖い」
「うちはガルムの味方だよ」
抱きしめ返してくれるミオと絆を確認しあう。
「お兄ちゃん何してるの?」
「…仲良しごっこ」
クララとラインに見られ、
恥ずかしくてすぐに離れる。
――――――
戻ってきた三人の顔を見て、全部察した。
「「「ガルムさんお願いします!!!」」」
「……分かりましたよ、やればいいんでしょ!ミオ行こ」
「ガルム可哀そう」
…ミオ。
何かあったら優先的にミオを守ろう、今決めた!
暗い気持ちで家に入る。
――――――
「ねぇパパ、さっきから何の話してるの?」
「ん?村長の屋根を直すために誰かの家をぶち抜いて確認しようってなってさ、
今ガルム君が勇敢にも確認しに行ってる所だよ」
「フーン」
「直すのにぶち抜くんですか?」
「ハハ、エドワードさんそれだと説明不足過ぎますよ、屋根の構造を知りたくてね、
それを知るためにガルム君の家を少し壊すって事になってね」
「え?それってーー」
「お風呂小屋見ればいいじゃん」
「「「あ!!!」」」
「ウィリアムさん!急いで!!」
「分かった!!」
ドゴーン!!
皆が音の方向を見ると屋根から尻尾が一本突き出していた。
「クララ!お風呂小屋の事は絶対にガルム君に言うなよ!!
今度行商人が来たら好きなもの買っていいから!」
「え!いいの!分かった!」
「ラインも頼む!黙っていてくれ!」
「僕にはなにくれるの?」
「す、好きなものを買っていいよ」
「分かった!」
――――――
家から出てくる2人は何やら言い合いをしてる。
「お前はな~にやってくれてんだよ!!」
「ガルムがぶち抜けって言ったんじゃん!!」
「屋根の上までぶち抜くなよ!アホかお前は」
「ひどい!だって“ぶち抜け”って言ったじゃん!!どこまでか言ってなかったじゃん!!」
「お、お帰りガルム君、いや~災難だったね!」
「ちゃんとガルムの家の屋根も直すからな!」
「私も言われてませんが手伝いますから!」
「…直してください、お願いします」
「なんじゃ!でかい音がしたが、なにが起きたんだ?!」
「えっと…僕の家の屋根が壊されました」
「何その言い方!うちが悪いみたいに言ってる!」
「うるせぇうるせぇ!事実だろうが!」
「もう知らないもん!」
そっぽを向いているが離れる気はないようだ。
「何なんじゃ?」
「あのね?屋根の構造を知りたくて屋根をぶち抜いたんだって!」
娘!!言うなと言ったのに!!
いや?お風呂小屋の事を言うなと言っただけか……。
くぅ~ハラハラする。
エドワードさんもウィリアムさんも同じ表情をしている。
「そんなのお風呂小屋のを見れば良いじゃろうが」
その場から音が消える。
「え?え?なんじゃ?わし変なこと言ったか?」
「あーあ!バレちゃったね皆!」
笑顔で笑いかける娘の視線から皆が顔を背ける。
「バレチャッタネミンナ?」
ガルム君の声が聞こえるが顔を見ることが出来なかった。
「ボクヲダマシテタノ?」
「ち、違うんだガルム君!私たちもさっき気づいて、言いに行こうとしたんだ」
「ミオ!力を貸してくれ、少し痛みを与えた方がいいと思う!」
「フン!」
「ちょっとミオさん!僕らの絆はどうしたんだ!!」
「たった今解消されました!」
「さっきのは冗談に決まってるだろ?なぁ?」
ミオちゃんにそっぽを向かれたガルム君が涙目で睨みつけてくる。
居たたまれない。
「夜道には気を付けてくださいね!!」
それだけ言い残し家に走り去っていってしまう。
ミオちゃんもその後を追う。
(ガルム君と離れたくはないんだな)
「「「村長~」」」
「儂何も悪くないじゃろ!というか状況も分からんわ!!」
クララを見ると黒いヘビの尻尾を持ち俺らに突き出してる。
脅しの道具にされるヘビが少し不憫だ。
俺の娘の成長が少し怖い。
この先大丈夫だろうか……
この思いは俺だけじゃないだろな。
「やれやれ」




