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始原の裁定者と終結の器  作者: 解放さん
1章 モース村

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見送り②

「でもそれはあくまでアストレアの予想なんだろ?」

「そうね、今言ったことを信じるも信じないもどちらでもいいわ、本当だとしてどうする事も出来ないことだしね」


「正直どっちでも良いって感じなんだけど、強くなれるんならそれが1番だし!」


「そう、そうね。あたしが急いでも意味のない事かもしれない…か」

「最後の方なんて言ったの?」


後ろの言葉が聞こえず聞き返したが、

首を振り何も答えずに外へと歩き出す。


呪い…か。


――その言葉が、まだ頭から離れない。



肩を並べ村を歩くと村の入り口に馬車が止まっており、

周りには村の人達が集まっていたが、ヘンリーだけは遠くの木の陰でこちらを見ていた。



「約束は守るよ」

「期待せずにしておくさ、帰ってきた瞬間に倒れたくはないしね」


「どんな悲惨な想像してんだよ」

「皆と仲良くやりなさいね?」


「母親みたいだな、当たり前だろ、僕がいなくても寂しがるなよ?」


ニヤけた顔をアストレアに向ける。


「むしろ心が軽くなってよく眠れそうよ、ついてくるなんて言われたらどうしようかと…」


可愛げのない奴だな!


皆に向かって、

見送りはいらないとか言い出しそうだなこいつ……。


ヘンリーの方へ視線を向ける。


やれやれ…。


「しょうがねぇな」


ヘンリーの方へ駆け出ーー



「ぐえ!」



ーーそうとした瞬間に襟を捕まれ首が締まる。


「ゴホ!ゴホ!ゴホ!な、何すんだよ!」


ジトッとした目で見られ訳も分からず困惑する。


「どこに行くんだ?」

「いや、ちょっと用事ができて」

「見送れよ」

「え?」


「いや、え?じゃなくて見送るだろ普通、仮にも保護者兼師匠だぞ?」


「いや、あの、もちろん見送るけど、

ちょっと、ヘンリーを連れてこようとしただけで…」


思いもよらない反応でこちらが狼狽えてしまう。


説明を聞き襟首を離してくれたのでヘンリーの元へ走り出す。

後ろを振り返るとまだジト目のアストレアがいた。


意外と寂しがりや…なのか?


アストレアの反応に驚きつつヘンリーの元にたどり着く。


「…なんか用?」

「誰と会話してるんだ?僕はこっちだぞ?」


横を向いて腕を組むヘンリー、

説得、は無理だろうな、

ヘンリーの腕を掴み村の入り口まで引きずる。


「ちょ!放せよ!あいつの見送りなんてしたくない!」

「はぁ、なら何で外に出てきてんだよお前は、村の一員なら見送りくらいしろよな」


両足を揃えて踏ん張るほど嫌がるヘンリーに苦笑いをする。


「家にいても暇だったからだけだし!他に意味なんてない!」

「アストレアと仲を悪くしたっていい事なんて1つもないだろ?

あいつには理由があって一昨日あんな事をしたんだと思うぞ?」


「ガルムはあいつの味方かよ!それならちゃんと理由を教えてくれればいいじゃんか!」


それは…うん。

そうですねとしか言えない、

だけどアストレアの性格上受け入れるしかない事もある。


引きずるのを止めて、腕を掴んだままヘンリーと向き直る。


「両方の味方だよ僕は、アストレアの性格は僕以上に分かってるはずだろ?

アストレアから教わることもある、そうだよな?」


「ふん!あんな奴に教わらなくても俺は強くなるよ!!」


ギリ!


ヘンリーを掴む腕に力がこもる。


「ちょ!ガルム!痛いって!」

「それは本気で言ってるのか?」


「急にどうしたんだよ!?本気だって!

俺って天才だからさ、きっとガルムなんかもすぐに追い抜くしあいつにも追いつけるよ!」


歯を思いっきり噛みしめる、

そうしないとヘンリーを殴ってしまいそうだったから。


「なぁ、僕がお前にしたお願い…覚えてるか?」

「お願い?なんかお願いされてたっけ?」


ッ!!

ヘラヘラと笑うその姿に僕の目が見開くのを感じる。

自分の体の事なのによく分からなくなってきてる。



ヘンリーの腕を離し近くにあった岩の前にまで進む。

後ろにいるヘンリーがどんな顔をしてるのか、

分からない、分かりたくもない。


拳を強く握り力一杯に腰ほどの大きさの岩へと叩き下ろす。



ドゴーン!!


轟音が鳴り響き、

岩が崩れ落ちる。



入り口に集まり話しをしていた人たちが一斉にこちらを向き、

皆が驚愕に目を見開く。


「ライン!!こっちに来い!!早く!」


ラインが急いで駆けつける。

ラインが目の前に来てから、後ろのヘンリーに首だけで言葉を向ける。


「ヘンリー今からラインと競走しろ、ラインも分かってるよな?」


「ど、どうしちゃったんだよ急に!?それに俺の方が足が速いのなんて分かってることだろ?

ラインも今更そんな事したくないはずだし!」


「……競走しよヘンリー?僕は負けない!」


「ライン、お前は1回も俺に勝った事ないだろ?無駄だって分かってるーー」

「ーー無駄じゃない!」


ラインの大声にヘンリーが目を見開く。


「…いいぜ?やってやるよ、ラインじゃ俺には勝てない事教えてやる」


西側の門に僕ら3人は移動する。向かいには村の皆がこちらを見ている。



「2人ともここから東門までだ、いいな?」


2人が頷きラインはまっすぐに前を向き、ヘンリーはにやけ顔でラインを見る。


「みんなの前で恥かいちゃうぞ?」

「恥をかいてでも、僕は前に進みます」

「ッチ」


「ほら、始めるぞ」

僕が片腕を空へと伸ばす。

音の消えた村の中に風のざわめきが起きる。


「始め!!」

声と同時に腕を振り下ろし、

2人が駆け出す。


僕はそちらを見ずに少し離れたミオに視線を移すとこちらに駆け寄ってくる。


「ミオ、頼みがある」

「うん何でも言って?」

「ーーーーー」

「いいの?」

「ああ」

「分かった、そのまま伝えるからね?」


僕が頷くのと歓声が上がったのは同時だった。

東門には喜ぶラインと肩を上下させ立ち尽くすヘンリーがいた。


「行こう」

「うん!」


――――――――


ヘンリーに話しかけていたウィリアムさんとアンナさんが僕と目が合う。


「どいてください」


僕の言葉に2人が心配そうにヘンリーを見て、後ろに下がる。


僕とミオが立ち尽くすヘンリーの横に並ぶ。

ヘンリーが僕を見てくるが、

僕が顔を向けることはせず喜び合ってるライン達を見る。


「な、なんで?」

「学ぶことを拒否したお前と、

学ぼうとしてるラインってだけの話だろ?」


ー魔力による身体強化ー

魔法の概念を教わった帰り道にアストレアから教えてもらった事、

体の魔力の流れを理解できるならラインなら出来るかもとなり、教えてもらっていたことだ。


ラインに才能があると言ったアストレアの気持ちが分かる、

時間をかけることなく理解して使えるようになっていた

ラインに驚いたのはクララも同じだろう。


ーー


「魔力で足を速くしたただそれだけの話だよ」

「な!そんなのずるじゃん!」


「何がずるいんだ?戦うため、守るための力を使う事の何がいけないんだ?」

「それは、そうだけど、こんな…ただの遊びにそんな……」



「必死になってでもお前に勝ちたいラインの気持ちも分からないのかよ!」

「え?」


「勝ち続けたお前と負け続けたライン、気持ちなんて分からないだろうさ、

負けることの悔しさも、恥ずかしさも、無力感も、絶望も、何もかも!」


握る拳から血が滴るのを感じる。

これは自分自身にも語り掛ける言葉でもある。



「クララの事を伝えたよ、あいつにもな」


ヘンリーが目を見開き一緒に喜び合ってるクララを見る。


「ま、まってよ!忘れてたわけじゃーー」

「ヘンリー!思い出せない時点で…同じなんだよ…」


心が苦しい、苦痛に歪むヘンリー。

頼むヘンリー分かってくれ。



「まだお前は俺は強いと、天才だと、誰にも教わらなくてもいいと言えるのか?」

「俺、は……」


頼む!


「1人でも…強くなれる」

目を強く瞑り、右手に握られたミオの手に力がこもる。



「ヘンリーお前は僕より強いのか?それとも弱いのか?答えてくれよ」

「俺が上…だと思ってるよ」

「僕が腹を貫かれたのは知ってるよな?体験してみるか?」

「何言ってるの?そんな事出来るわけないじゃん」


「…その痛みでまた西門まで走れるか?そうしたらお前を認めるよ」

「いいよ?そんなことできるならやってあげる、でも出来っこな―――」


「ミオ」

頷きで返したその瞬間。



「ぎゃあああああ!!!痛い!!痛いいぃ!!」


突然腹を抑え蹲るヘンリーを見下ろす。


駆け寄ろうとするウィリアムさんとアンナさんの前にミオが立ちふさがる。

「ガルムの邪魔、しないでくれる?」

6本の尾を広げ行く手を阻む。


後ろをちらりと見た時、アストレアが2人の肩に手を置くのを見て前に向き直る。


「どうした?その痛みが僕が受けた痛みだ、その状態で長い距離走ったんだ、

ヘンリーも出来るんだろ?」


叫び声が続き声など届いてるか怪しい、それでも言葉を続ける。


「僕と同じだよお前は、まだ弱いんだよ僕らは!それを自覚しろ!

1人で強くなるのは限界があるんだって事を!」


「……ミオ解いてくれ」


「ぐうぅ!、はぁはぁはぁ」

涙と鼻水にまみれたヘンリーの顔を見下ろす。


「お前にとって本当に大事なものは何なんだよ?

自分のプライドを守る事なのか?見せかけの強さを誇示する事なのか?」


「奪われてから後悔することになるぞ?それでもいいのかよ?」



「はぁ、はぁ、お、おれは、はぁ…つよ…」


口の回っていない、

その言葉を最後に気を失い地面に倒れる。


「ミオ、もういいよ」

その言葉で僕の横にミオが来るのとアンナさんがヘンリーに駆け寄るのは同時だった。

こちらを睨むアンナさんと目を合わす。


すぐに逸らされ、ヘンリーを抱えて家に走るのを見送る。


「ありがとうガルム、息子にはいい薬だよ、アンナには俺から言っておく。」

「いえ……」

肩に手を置かれ駆け出すウィリアムさんの背中を見つめる。


「はぁ、辛いな…これは…」

心配そうに見つめるミオに無理やり作った笑顔を向ける。


「ありがとミオ、ごめんな嫌な事させて」

「ううん、嫌なのはガルムが辛そうにしてることだけだよ?」


そっか、言葉も出せぬまま馬車の方へ2人で歩き出す。





































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