魔法と魔術②
「王国の教える魔法は機械的で面白みがない、全員が魔術師の階級に囚われ、才能ある者は驕り高ぶり、才能なき者は嘆き諦める」
アストレアはそれらを見てきたのだろう、
その言葉には重みがあった。
「ライン、もう一度手に出してみろ」
「はい!」
ラインと肩を並べ僕らと向かいあう。
2人の手には火の玉が浮かんでいる。
「同じ魔法…なんですよね?」
クララがアストレアに質問をするのを聞きながら2人の魔法を見比べる。
…形が違う。
ラインの方は丸い玉に炎を纏った感じ。
アストレアの方は炎そのものが浮かんでる感じに見える。
「同じ魔法だ、王国の人間が見れば評価されるのはラインの魔法だろうな」
「王国の人の判断基準ってあるの?」
質問は禁止されているがどうしても気になってしまうのでクララも僕も構わずしてるが、怒られる気配もない。
質問をしすぎるなって事なんだろうと勝手に解釈して答えを待つ。
「①見本に忠実か、②魔法構築の速さ③威力、
学園で教えた通りにする、といった感じだ、
例えばこれですらあたしにとってはファイアボールなんだよ」
「「「え?」」」
驚きの声が重なる。
アストレアの手に握られてるそれは、先ほどの球状の炎ではなく、剣状に姿を変えた炎があったから。
形が変わる――じゃない。
“意思を持って変わっている”。
剣になった炎が、次の瞬間には槍に変わる。
僕達を楽しませるような…。
そんな風にも見えた。
「1つ目の教えだ」
「あたしの概念で一番重要なこと」
「それは創造力だ」
「言葉にするほど簡単なことではないけどな、
ラインの手に持つそれだと同じようには出来ない、絶対にな」
「そうなのライン?」
「…はい、絶対にあんな事出来ません、僕が勉強したやり方は、…うーんと、決まった形をイメージして整える感じなんです」
「王国の魔法はファイアボール=1つの答えしかない、あたしの魔法は術者の力量でいかようにも変えられる。限界はあるがな」
「何度も質問して申し訳ないんだけど、その説明だと、初級の魔法でもどでかい魔法も使えるって事にならない?」
「確かに〜」
クララが感嘆の声をあげ、ラインも顔をハッとさせる。
「へぇ?よく気づいたわね、それがさっき言った限界があるって事に繋がるのよ」
「見てなさい」
両方の手の平に2つの風の渦が出来、
大きくなっていく。
バン!
片方が破裂と共に弾け、強風が僕らを襲う。
「こんなふうに魔力の容量が初級だと耐えられなくなる、そんな感じね」
頷きで返す。
「ねぇねぇガルムお兄ちゃん」
「ん?どうしたんだ?」
「結局は魔力量がないと凄い事はできないってことなのかな?」
「確かにな〜、どうなの?」
声が聞こえてる距離なのでアストレアに確認をとる。
上手いやり方だなと内心クララを褒める。
「正解でもあり、間違いでもある。基本は自分の体内にある魔力を使うからその考えで正しい、だけど空間にも魔素と呼ばれるものがあって、それを媒体として魔力量を補うこともできる。知識程度に覚えておきなさい」
「最後にラインとクララにはあたしが纏めた本を渡す、分からなければそれを見て勉強しなさい」
僕にはないの?という顔をしていたら、「貴方には教える機会は何時でもある」と言われたので納得する。
でも欲しい!後でお願いしよ。
アストレアがいない間はクララと一緒に勉強するしかないな。
「正直に言って少ない時間で教えられるものではないし、今日言った事もほんの一部でしかない、時間があれば教えるわ」
「あたしがいない間はラインに魔法の基礎を教えてもらえ、
魔法とちゃんと”向き合うのは魔術が使えるようになってからだしな」
「まずは自分の体の魔力を感じられるようにしてみろ、
それがあたしが帰るまでの宿題としよう」
魔力を感じるねぇ?
目を閉じて魔力を感じようとするが。
「全然分からない!」
「クララもさっぱり!」
「なんて言えばいいんだろ?体の中のエネルギーみたいな感じだよ!、
…魔術を1つ使えるようになれば分かるようになると思います」
ラインは分かるのか……、
やっぱそう簡単じゃないよな。
「帰るわよ」
アストレアが村に向け歩き出し、少し離れて僕らも続く。
「やはり恐ろしいな…」
「まだいたんだ…」
アストレアの背中を見つめ、
黒丸とミオの声で僕ら3人は足を止める。
「黒丸どういう意味?」
「どういう意味だ?」
今度はクララと僕の声が重なる。
「フン!」
「あの人のいう事は正しいって意味かな?」
黒丸はそっぽを向き、ミオは目を細め笑う。
僕ら3人は顔を見合わせ眉をひそめるしかできなかった。




