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始原の裁定者と終結の器  作者: 解放さん
1章 モース村

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魔法と魔術①

お昼時となりアストレアの家にラインとクララが来て同じテーブルを囲んでいる。

ヘンリーの奴は一昨日アストレアに蹴られたのをまだ根に持っており不在だ。


まぁ気持ちは分からなくもないが、

魔法に関しては無理に教わるものでもないが、

武極の時は来るのか不安になる。


「最初に言っておく、魔法の概念を教えた後手取り足取り教えるつもりはない」


ん?


「はい!」

「今日は質問は禁止だ」

手をあげて質問しようとしたが断られてしまった。


「なんで?いつもなら気になることがあればしていいって言うじゃん」

「今回それをすると話が進まなくなる、だから黙って聞く事」


出鼻を挫かれる感じがしたがまずは言う通りにしよう。

気になることをメモしつつ黙ってうなずく。


皆が頷くのを見てアストレアがラインに顔を向ける。


「王国では魔法を扱うのに必要な事はなんだと教えられている?」


「本で学んだ知識ですが…

①魔力容量②制御力③記憶力と理解力④集中力⑤適正⑥精神の安定。これらが重要だと本に書いてありました」


「ガルム、クララ、今言った事はメモしておけ、

だがそこまで重要じゃない、頭に入れる程度に覚えておけばいい」


「ライン、お前もだ、あたしの教えを受けるなら今持つ知識を上書きしろ」

「はい…」


苦しそうに返事をするラインを見て心が痛む。

どれだけの期間魔法に費やしてきたかは知らない、

けど必死に覚えて来たのは分かる……それを捨てろと言われてるんだもんな…。



「今ラインが言ったのは”魔法の術式を扱うための条件”に過ぎない」


…やばい、早くも訳が分からなくなってきてる、僕以外も首を傾げてる。

質問したいが止められてるため必死に理解するしかできない。



「王国の考えでは才能が全てなのよ、生まれた瞬間に決まっていて魔法を使えない者、

魔力の容量を持たない者は神に選ばれなかった人間と見下す。それが今の現状よ」



「よく聞きなさい」

静寂が場を包みアストレアの言葉に皆が耳を傾ける。


「王国で教えられているのは”魔法”ではなく”術式”よ」


「術式とは、世界の理を”真似て”、現象を無理やり再現する技術」


「火を理解し、形を作り、言葉で起動する」


「そうやって”燃えてるように見えるものを”作ってるに過ぎない」


「もっと簡単に言うなら、無理やり命令をして従わせて”同じ現象を作り出す”のが術式って事」



「訳が分からない……」

そのつぶやきは僕ではなくラインだ。

口に手を当て眉間に皺を寄せている。


知識のあるラインだからこそ、混乱は僕らの比ではないはずだ。

僕も頭に入ってるようで入ってこない。


「魔法はね」


一拍。


「生き物なのよ」


――ぞわり、と背筋が粟立つ。


理由は分からない。

けど、その言葉は“間違っていない”と本能が告げていた。


「ん?」

「え?」

「は?」


僕の膝で寝転んでるミオ以外から発せられる素っ頓狂な声。

アストレアじゃない人間が言ってたら笑っていたかもしれない。


「いやいやいや、

そんなの可笑しいですよ!ありえない!」



引きつった笑みでラインが笑っていた。


「おかしいか?」

「アストレアさんのいう事でもそれはさすがに……、

それを言われて納得できる人なんていません!」




まぁ、うん、それには同意だ、

だけどアストレアが言う生き物、

その言葉に一昨日見た巨大な眼が頭を掠める。


「ならついてこい、実際に見せてやる」


立ち上がり部屋を出るアストレアに僕らも続く。



――――――――――――――――――――――――


村から少し離れた平原に4人が佇む。


「ラインあたしと離れて対峙しろ」


アストレアが僕らから離れてラインに向けたその言葉、

僕の顔が悲痛に歪む。



ラインの肩に手を置き、

言おうか迷っていた言葉を繰り出す。



「ガルムさん?」

「お前、死んだな」

「な、なんでですか!?」

「アストレアを馬鹿にしたから、あいつが怒ったんだよ、

そうに違いない」


ラインが震えて及び腰の背中を無理やり押して送り出す。

僕には…ラインを救う力が、ない……。



「ごめん…ライン…」

「ガルムは意地悪だな」

「ガルムお兄ちゃんひど~い」


天使2人の言葉を無視して2人を見つめる。


「”ファイアボール”は作れるか?」

「はひ、つ、作れます!」




「何ビビってんだよあいつは、なぁ?」

「クズなガルムでもうちは好きだぞ」

「黒丸が言ってるよ?【魔族の質も落ちたものだな】だって!」

今回の言葉は地味に効くな…自重しよう。



そんなやり取りなど関係なく、

ラインの突き出した両手に火の球が出来上がる。


「それをあたしに向けて撃て」

「え?でも…」

「お前の魔法ごときであたしがどうにか出来るわけないだろ?

さっさと撃て」


(さっさと撃て、だけで良いだろうが!)


一言多いアストレアに悪態を付きながら見守る。


「ッ!”ファイアボール”!」


放たれた火の玉がアストレアに向かって―――

横にずれたアストレアの脇を通り過ぎる。


まぁ、うん、遅くもなく、早くもない、

そんなスピードだったので何か言うことはない。


「次はあたしの番だ、動くなよ、動くと当たるぞ?」


片手をラインに向けている。


「あち!!」


は?


ラインの声にそちらを向くとラインの顔の横に火の玉が浮かび止まっていた。


すげぇ…。

そうか、思えばアストレアは何もない空間から魔法を生み出すのは何度か見たことがある、

目の前のあれもあいつにとっては普通の事なのか。


でもそれが魔法が生きてるとどうつながるんだ?


「ラインお前ならこの異常性が少しは分かるんじゃないか?」


一瞬考えるそぶりを見せその目が見開かれる。


「あぁ…確かにそうだ、これは本には書かれてない」


「教えてやる、王国では遠くに魔術を生み出したい時は”必ず”魔法陣を作ってから、魔術を作り出す、

こんな風にな」


目の前に魔法陣が出現し、前方に水が噴き出す。


なるほど?

アストレアの概念を学べば無から魔法を生み出せるという事、だよな?


「まだ終わりじゃない、あたしが魔法は生き物と言った理由がまだだからな、ラインその火の玉から逃げてみろ」


その言葉に2歩3歩と後ろに後退する、

そのラインの顔にぴったりと離れずついてくる魔法に驚愕する。


「言っておくが、今あたしはその魔法に何も手を加えていない、最初に”命令”をしただけだ、

目の前の子供の顔の近くに居ろってな。」


「好き勝手に動かすことも出来る、”お前らの好きにしろ”と命令をすればな」


その言葉を合図に火の玉が消える。


「もう一度笑ってみるか?」


その言葉にラインは首を振り、

僕とクララも一緒に首を振る。


右腕を引かれそちらを見るとミオが笑顔で見上げていた。


「ヤバいね!あの人!」


頷きで返し、苦笑いを浮かべる。

物怖じしない君が羨ましいと心に秘めつつ胸が高鳴る。


両方の手の平を見つめ、僕もいつか……。


「頑張ろうね!ガルムお兄ちゃん!」

「あぁ、頑張ろう」



アストレアに朝言われて得た答え、


体を使えないなら頭を使う。


それなら心配はかからない――


……なんて。


本当は分かってる。


これも焦りだって。


――それでも、立ち止まりたくない。


無力な自分に泣くのは、


二度とごめんだ!


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