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始原の裁定者と終結の器  作者: 解放さん
1章 モース村

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葛藤

「で?今の話を振り返って、自分の体を見ても心当たりがないと?」

「い、いえ、心当たりがありまくりです……」


てか2日目の話し出す前に心当たりがあるって言いましたけどね!?

その声を心に押し込め改めて自分の体を見る。


見た感じはいつも通り、だけど服を脱ぐとお腹に包帯が巻かれ腕にも包帯が巻かれてる状態だ。

腕は火傷、腹は狐さんに貫かれたモノだ、朝起きた時に恐る恐る腹の傷口に触れたら激痛が走ったが、穴は塞がっていた。


エリザベスさんが治してくれたのは気を失う前に知っているので今日お礼に行くつもりだ。


それよりも大事な事、僕が助けた狐は朝起きたらいなくなっており、

替わりに栗色髪に狐の耳を生やした女の子が一緒に寝ていた。

今も僕の後ろにいて、後頭部に視線を感じてる状態だ。

因みに名前は【ミオ】。

さっきまで話してたのだが一階に降りてから一言もしゃべらない。



あれから丸1日眠ってたらしく今は早朝のいつもなら勉強をしている時間。

アストレアが「予定が狂いまくる」と眉間を抑える姿に申し訳なく思うがこればかりは許してほしい。


「お前には悪いが今日はウィリアム達との鍛錬は見送れ、どのみち体の傷が治るまでは許可しないがな」

「じゃあなんで言うんだよ?」

「【鍛錬に行ってくる!】って言うバカの未来が見えたからな」

「すげぇ、未来まで分かるの?」


ん?なんで何も答えてくれないんだ?

変な目で見てくるし。


「鍛錬に行こうとしてたのか?」

「え?もちろん――イテ!!」


叩かれた頭を押さえ、驚愕に目を見開いてしまう。

「な、なんで叩くの?!未来見えてたんでしょ?」

「冗談で言ったんだ、お前あたしがいない間に鍛錬するだろ?」

「しないよ!」


満面の笑顔で信用してもらおう、傷口が開いてまた痛い思いするのは嫌だし!



「今足掻いたところでお前は弱いままだ」

「ッ!」


目を見開き下に顔を向け、

手を思い切り握りこむ。


今一番言われたくない言葉を言いやがって…。


バン!


机を思い切り叩きアストレアを睨みつける。


「足掻いて何が悪いんだ!

今ここで足掻かずに何もしないでいたら後悔するかもしれないだろ!!」


守りたいと心から思うのに守ることが出来ない悔しさ、

この世界の強さと自分の弱さを知った時の絶望。


大人になれば勝手に強くなると、考えていた僕自身の甘さ、

僕がしてる鍛錬なんてこの世界では当たり前の事なんだと昨日気づかされた。


目の前のアストレア然り、

昨日会った独特な服を着る奴らも僕と5歳くらいしか変わらないと感じた。


そんな奴らに勝てるようにしないといけない僕の焦りが分かるはずがない。



「僕の今の気持ちが、強いお前に分かる訳ねぇだろ!!」

「分からないな」


「だったらだま――」

「誰の気持ちなら分かるんだお前は?」


は?


誰の?


頭が真っ白になる。


そんなの――


「分かんねーよ……誰の気持ちもな」

「皆そうだと思うぞ」


何が言いたいんだこいつは?


「それならどうして、お前は危険な森に入ってまでその子を助けたんだ?

その子が助けを求めたわけじゃないだろ?」


昨日僕が死の淵で考えていた事と重なる。

ミオを助けたのは僕の身勝手な思い込み、

助けを求めてる”かもしれない”という思い込みでしかない。


「……助けなきゃいけないって思ったからだ」

「その行動に後悔はあるか?」


後悔などない、朝にミオと話してその思いは強くなっている。

それでも、即答できない自分がいた。


「ガルム、お前の夢をもう一度声に出して言ってみろ」

「……僕の大切な人が幸せに生きられる世界を作る事」


話がどんどん飛び、頭の回らないまま答えるしかできない。


「お前にとっての幸せとはなんだ」


僕にとっての幸せ。


「大切な人皆が笑顔になって、大切な人が自由に生きられる…事」

「ガルムの夢には、お前自身は入ってないんだな」


それは。


…確かにそうかもしれない、僕の夢は”守る事”を第一に考えてる。

自分の事はあまり考えてない。


「お前の大切な人たちはガルムの事をどう思ってると思う?」

「分からない…けど、大切にしてくれてる、とは思ってる」


「あたしもそう思う、お互いが大切に思ってる、それはあたしも同じ気持ちだ」


え?


予想外の発言に驚き体が固まる。

アストレアがこんなこと言うとは思わなかったし、

否定されてボロクソに言われると思っていたから。


「誰でもいい、お前の大切な人がお前と同じようにボロボロの状態で無理をしようとした時、

お前はどうするんだ?」

「……必死に止めるさ、大事だから」



「お前が今無理して強くなろうとして、それを見た村の人が喜ぶと思うか?笑顔になると思うか?

ガルムの想いをよく知る人たちこそ苦しむ結果になるんじゃないのか?

自分たちが弱いから、不甲斐ないからガルムに無理をさせてると」


「それは違う!!これは僕が勝手にやってる、ことで……」



「他人の考えは分からない、だろ?

お前の行動でそう思わせてしまう”可能性”がある。

それはお前の夢から遠ざかる結果にしか、ならないんじゃないのか?」



分かる!分かるさ!全部全部理解してる!

だけどもしそれが原因で大切な人が守れなかった時……

それを考えるのが恐いんだよ……



今のままだと、誰も、守れない……。



「ガルム、今だけは考え方を変えろ」

「どういう意味?」

「”次に”来るかもしれない最悪の事態に備えて、

体を万全の状態にするんだと」


アストレアのその言葉に胸がざわつく。


「なぁ」

「話は終わりだ、後は自分で考えろ」


アストレアが外に出るのを見送る。

それに合わせて隣に座ってこちらに笑顔を見せるミオの頭を撫でる。


「ミオはどう思う?」

「あの人のいう事に賛成かな、うちもガルムには無理しないで欲しい、

うちのせいでもあるから…さ。ガルムが言うならこの村も守るから」

「うん、ありがと」



それが僕にとっては嫌な事なんだけどと心で思いつつ頷く。


大切な人たちを危険に晒したくない、我儘……なんだろうな。



はぁ、考え方を変えるねぇ。


体を休める……そっか。


「どうして笑ってるの?」

「何でもないよ、ただ頑張ろうって思っただけ」

「今は頑張らないって話じゃなかった!?」


「それでも頑張るんだよ」

「んん~?」


そう、頑張れることは”他にも”あるんだよ。












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