ガルム君の6日目(日常)②
1話割り込み投稿しました!!!
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「そんな事を急に言われても答えなんて出せないよ」
「それなら、答えが決まったら聞かせて頂戴」
僕は頷きだけで返し、外へ向かった。
朝稽古の時間にはまだ少し早い。
広場で、今言われた事を考えたかった。
外はまだ薄暗く、朝の冷気が肌に触れる。
広場に置かれた木製の長椅子に腰を下ろす。
中央には焚き火の跡があり、
黒く焦げた薪と灰だけが残っていた。
「こういう時に魔法が使えれば楽なのになぁ」
「火、つける?」
「うん、お願い──って、うわ!」
なんでこいつ付いてきてんだよ!
振り返ると、アストレアが焚き火の跡に手を向けていた。
次の瞬間、魔法で火が灯る。
「クララの件で、言い残しがあっただけよ」
その言葉で、重要な話だと理解する。
「クララの事、死ぬ気で守りなさい。
もちろん、あたしの手が届く範囲なら、あたしも守る」
引っかかりを覚える。
「言い方的に、クララに憑いてる蛇から……って話じゃないよね?」
アストレアなら、そんな回りくどい言い方はしない。
蛇に気をつけろと言えば済む話だ。
なのに、それを言わない。
それがやけに嫌な感じがした。
「固有持ちってね、貴重なのよ」
パチ、と薪が弾けた。
「戦力としても――」
揺れる炎がアストレアの顔を照らす。
「見世物としてもね」
「固有持ちを殺してその能力を奪う固有持ちもいる」
「……は?」
「…それ、冗談じゃないんだよな?」
アストレアは何も答えず焚火を見ている。
「伝えたかったのはそれだけよ」
そう言い残し、アストレアは去っていった。
僕だけが焚き火の前に残される。
空を見上げると、黒い雲がゆっくりと頭上を流れていった。
「…嫌な感じだな」
でもクララの件で悩む必要はない。
― ―当たり前だ。
王国。
奴隷を使い坑道を掘らせた黒幕。
戦争のために、人を攫い、使い潰す国。
…
王国がそこまで憎いか聞かれたら。
答えはいいえだ。
生まれすらよく分からない僕にとって、
坑道で過ごした日々こそが“普通”だった。
比べられる日常がない分、恨みも薄い。
アストレアの言う「楽しい人生」というのも、少し分かる気がする。
僕がアストレアに言った王国を滅ぼす計画。
退屈はしないだろう。
命を懸ける人生にはなるが。
そして一番大事なこと。
「それが僕の夢と繋がるのかねぇ?」
先の見えない選択を前に、思わず弱音に似た声が漏れた。




