ガルム君の5日目(日常)⑧
「ヘンリー、ライン!こっちに来ーい!」
事情を知ってるであろう2人を呼ぶ。
クララは気を失い今は眠っている。
クララの親がこちらに来ようとしてるのが目に入る。
「まだ危険だから2人以外は来ないで!」
その声にクララの両親は顔を見合わせ止まる。
アストレアが頷くのを見て堪えてくれてる。
「いい判断ね?褒めてあげるわ」
「そりゃどうも」
クララを部屋に運びたい。
だが──
首に巻き付く黒い蛇を見る。
その瞳が、静かにこちらを見ていた。
まだ無理だ。
2人が恐る恐るやってきてクララを見る。
「無事よ、何も問題ない、それよりも何があったのかを教えなさい」
先回りして聞かれる問いを返し、状況説明を促す。
「えっと、そのいきなり、その何かが」
頭が混乱しているのかヘンリーの脈絡のない言葉。
アストレアはラインを見る。
「僕が代わりに言います、ガルムお兄ちゃんがアストレアさんの家に向かった後、井戸の中で見つけた丸い石を3人で見てたんです、そしたらヘンリーが中に何か入ってるかもしれないって言ってー ー」
「お、おい!その言い方だと俺が悪いみたいに聞こえるんだけど!」
「い、いやそうじゃなくて僕は事実を…」
言い合いを始めた2人にアストレアと同時にため息をつく。
アストレアに顔を向けるとこちらを向いていたアストレアがどうぞと手を前に向ける。
しょうがないな。
「ヘンリー少し静かにしろ!」
「で、でも」
「今は犯人探しじゃない。だから落ち着け。」
ヘンリーが頷いたのを確認してラインに先を促す。
「いい判断ね「2回も言うな!」」
僕達のやり取りを見た後ラインが続きを話す。
「それで丸い石を近くの石に叩きつけて、
割れたと思った瞬間にクララちゃんが倒れて…」
「分かったもう大丈夫だ、ここまで聞けば十分だろ?」
「ええ、質問するから余計な事は言わなくていい、一文で返しなさい」
いつも通りのアストレアの問いに僕が返事する。
「なぜ井戸に入ったの?」
「村長のおばあさんがそこに伝説があるって言ったから」
「それを主導したのは?」
「ヘンリーとクララ」
「誰か止めた?」
「ラインと……僕」
「その間は何なのよ」
嘘は言ってないと首を振るに留めた。
「その秘密の部屋に行ったのは?」
「ヘンリー、僕、ラインの順番」
「何でヘンリーに行かせたのよ?」
矛先が僕に向かってくる。
「止める前に行っちゃったから」
アストレアが考え込む。
「つまり?」
僕が答えを急かす。
「ヘンリーが悪いわね」
僕とラインは同時に頷いた。
「ちょっと!犯人捜しはしないんじゃなかったの!?」
「ヘンリーが悪い以外に分かったこともある」
なぜか僕を見てくる。
「村長が何か知ってるかもって?」
「ストレスがかからなくていいわね」
その村長は街へ買い出しに行ってるのでいない。
戻って来てから聞くしかない。
子供たちを村に帰し、アストレアと向き合う。
問題はーー
ヘビの方を向きアストレアを見る。
「…今のところは問題がない」
「今の所ねぇ」
含みのある言い方に不安が増す。
「そもそも固有持ちって何なんだよ?」
「特別な能力の事、クララの場合は幻獣視でしょうね」
聞きなれない単語に首を傾げる。
「目に見えないモノが見え契約することが出来るのよ」
なるほど?
「そして今回したのは正規の契約じゃなく、強制契約になる」
「このヘビが嫌がってるのがいけないと?」
アストレアが頷く。
「起こり得る問題は三つ」
指を一本立てる。
「①力の暴走」
二本目。
「②精神侵食。長く使えば使うほど記憶や魔力が混ざる」
三本目。
「③宿主が弱れば幻獣の制御を失う」
全部最悪だな…。
「感情が高ぶれば暴走、それを繰り返せば精神混濁、宿主が死にそうになれば最悪殺される」
蛇が目を細めて舌を出す。
笑ってるようにも見える。
「今のクララの状態は大丈夫なの?」
「死にそうな訳ではないから大丈夫よ」
それは良かった…ただ。
村の方へ視線を向ける。
クララの母親が、唇を噛みながらこちらを見ていた。
「これ両親に説明できなくね?」
「……」
アストレアは眉を寄せる。
「この蛇はペットよ」
「は?」
何を言ってんのこいつ?
「今までペットと遊んでいたのよ」
「この拳の傷は?」
「ガルムが負わせた」
おい!
「喋る蛇の説明は?」
「ガルムの芸」
おい!
「後は頑張りなさい」
その言葉を言い残し村へと向かう。
「え?」
まじかあいつ!逃げやがった!!
クララを村へ運び、エドワードさん達に預けた。
その後、村のみんなに集まってもらう。
①クララが固有持ちだった
②土地神様を呼んだ
③契約を試してみた
④僕が土地神様を怒らせて暴走しかけた事
「先ほど暴れてたのは僕のせいなんです、本当にごめんなさい!」
聞こえてくるのは沈黙だけだ。
いい、これでいいんだ。
「ガルムが毎度迷惑をかけて申し訳ありません、話に合った土地神は口は悪いですが、安全はあたしが保証します」
こいつ!
逃げたくせしていい所だけ持っていきやがって!
◇ ◇ ◇
皆が去った後も頭を下げ続けていた。
「ガルム」
僕は顔を上げヘンリーと顔を合わせる。
「ガルム…ありがと」
「どうしてなのヘンリー!!?ヘンリーが全部悪いのになんで僕が悪者にならないといけないの!!?」
僕の大声が村に響き渡る。
「ちょ!やめて!」
「どうして庇ってくれなかったの!?ずっと待ってたのに!」
「『俺が全部悪いんだ』って言ってくれるのを期待していたのに!もう嫌だ~村の皆に嫌われた~」
「ごめんって!謝るから叫ぶのやめて!!」
その後
アストレアに引っ張られて家に入るまで叫び続けたのだった。
「僕は悪くないんだ~!!!」
「最後までかっこつけろドアホ!」




