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始原の裁定者と終結の器  作者: 解放さん
1章 モース村

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ガルム君の2日目(借金)

登場人物

①アストレア②ウィリアム・アルフレッド(赤髪大人)③ヘンリー・アルフレッド(やんちゃな子)④トーマス・アーサー(眼鏡大人)

「まいりました!心当たりがありまくりです!もう止めましょう!」

アストレアが話終わるのを黙って聞き止めに入るが口の動きが止まらない。


「2日目」


このちび魔女!全部言い切るつもりじゃねぇーか!!



            ――――――――――――――――――――――――


アストレアとの勉強会を終えて基礎訓練の為にアルフレッドさんの家の前で待っていると親子が出てくる。


「おっ!?ヘンリー今日は参加するんだ?」

「これから毎日俺も参加するからな!ガルムには負けないからな!」


その言葉を受けて僕とウィリアムさんは顔を見合わせ笑い訓練を始める。


正直舐めていたのだがヘンリーの剣の腕前は僕よりも上だと感じた、僕の方が力があるから押し込める部分があるがそれでも何本も取られるし、力が互角なら勝てるのか怪しいレベルだ。僕が剣を習っていないからとはいえ年下に負けるのは正直恥ずかしいし悔しすぎる。自主練でも始めようか本気で考えているとウィリアムさんが僕に話しかけて来たので思考を中断する。


「ガルム君は剣を扱い始めてそんなに時間が立ってないんだよね?」

「?はい、剣を扱ったたのは…2回?実質1回くらいですかね」

坑道を出てからの行動を思い出すがちゃんと扱ったのはボア・ホーンと戦った時くらいだ、後はアストレアに向かっていった時だがあれは未遂だしなと数に数えない。


「ふーむそれにしては筋がいいと思うぞ?自分の子供だからではなくヘンリーの腕は大人には敵わないまでも剣を扱った事がない人に負けないと思っている、それがお互い一歩も引かないんだから大したもんだ!」


そう言って肩を叩き褒められ嬉しく思っていると頭に水をかぶったヘンリーが近づいてくる。


「俺がガルムと同い年くらいになれば俺の方が絶対に強くなるけどね!」

「なにぉ~?その時は僕はもっと強くなってるに決まってるだろ?!」

「じゃあその時は逃げずに勝負しろよな!」

「こちらのセリフじゃ坊主!僕の偉大さを叩き込んでやるわ!」


お互いが顔を突き合わせ不敵に笑ってると僕たちの頭を大きな手が乗る。


「いいな!その時の立ち合いは俺がしよう!お前たちが強くなった姿を見るのが今から楽しみだ!」


そんなやり取りを終えて自由時間を満喫していると村の皆が入り口に集まっているのが見え僕もそこに行くと奥様方が「安い」だの「違うサイズは?」などが聞こえてきて覗き込んでみると、そこには荷馬車がありテントに覆われた場所にぎゅうぎゅうに身を寄せ合っている。


「なにこれ?」

僕は隣でそれを眺めていたトーマスさんに話を振る。

「ん?ああ荷馬車を見るのは初めてかい?これはね時々近くを通った荷馬車が寄ってきてくれる時があるんだよ、毎回人も違うし、持ってくる荷物は違うけどね、ここは娯楽がほとんどないからね、特に女性方は毎回来るたびに大騒ぎするんだよ」


そう言って困った笑顔でその光景を見つめる。


「トーマスさんは見なくて良いの?」

「僕はさっきちらっと見たんだけど良さそうなものもないし、欲しいものもなかったから大丈夫かな、じゃあ僕は畑仕事に精を出してくるよ、ガルム君も気になるなら見てみるといいよ?何か欲しいのがあれば少ないけどお金あげるからね?」


その言葉にありがとうと言って隙間から見ていると目に留まるものがある。

奥様方はなんか話し合ってるし、子供たちも欲しいものがなかったのかどんどん人が離れていったタイミングで行商人に話しかける。


魔族と知られたら面倒なので下を向きながら話す。


「ねぇおじさんそこにある2本の剣ってすごいの?」

「お?!お目が高いですね僕っちゃん、この剣は古から言い伝えられたほどの名剣なんですよ?その名も空舞双剣!!一たび剣を振れば空を飛ぶように敵は斬られ、二たび振れば地面に崩れ落ちるという2対一本の剣でございます!」


そんなすごい剣なのか!!鞘の装飾が派手で柄も派手なのですごい剣だと思ったが僕の予想は当たったようだ。


「おじさん!その2本の剣を買うから誰にも買わせないように隠しててね!!」


僕はそこから反転して自分の家に向かう、トーマスさんはお金をあげると言ってくれたがあの伝説の剣は絶対高いそんな無理なお願いをするのはだめだ!迷惑はかけられない!


迷惑をかけるとしたら1人しかいない!!


バン!!


「アストレア!!お願いだお金を貸してくれ!!」

「なぜ?」

僕の登場に動じない魔女に理由を聞かれたのでかいつまんで説明した。


「お願いだ!絶対にお金は返すから!!」

少し考えた後に懐から麻袋を取り出しそこから金色の硬貨を僕に渡してくれる。


「「あな」ありがとう!!」


何か言おうとしてるのが聞こえたがそれは後でいいだろう、今は少しでも早くあの剣を手に入れたい。あの剣は特別だ、ものすごい力が眠っていると直感する。


「おじさんお金持ってきたよ!!いくらなの?!」

「ちなみにいくら持ってるのですか?」

「えっとこれだけなんだけど買えるよね?」

そう言って握りしめた金貨を見せると、驚いた顔をして悩み始める。

「うーん金貨一枚ですか…しかしなぁ二本となるとなぁ」

悩む露天商だがさすがにもう一枚と言えばアストレアは貸してくれないだろう。

ここは何としても値切ってでも買わなければならない。


「お願い!この金貨一枚しかないんだ!これでその2本の剣を売って!」


まだ悩む行商人に僕も揺さぶりをかける。


「その剣は2本で1本なんだよね?もし1本しか買えないなら僕は買える1本も諦めるしかなくなっちゃう…」


商売人として物を売れない事の方が嫌な事だと思い僕がそう言うと行商人も慌ててくる、僕の予想通りと思いながらもう一度2本くれるか聞くと頷いてくれ「特別ですよと」いい交渉は承諾される。


金貨を行商人に渡して替わりに剣を2本僕は両手で受け取る。

「この剣を扱うのは本当に危険ですのでいざと言うときに使ってくださいね?」

その言葉に僕は頷くとまだ話し込んでいる奥様方に視線を向ける。


「奥様方申し訳ないのですがもう次の街に向かわなければならないのです、どうかご容赦を」


そう言って行商人は話し込んでいた奥様方の非難の声も聞かずに出発してしまった。


どうやら僕は運よくこの剣を手に入れたようだ、その事実に嬉しくなり1人離れて森の中でその剣を眺める。


僕が前まで使っていたぼろ臭い剣が嫌になりそれを地面に投げ捨てる。


「ごめんよ?僕には新しい相棒が出来たんだ、君とはこれでお終いだね」


そう言って剣を見つめうっとりし続ける、どれくらい時間が立っただろうかお今は夕日が周りを照らしており、腹が鳴る音で家へと帰る。


ガチャ!


「たっだいま~!!アストレア!さっきはお金貸してくれてありがとう!必ず返すから待っててね!」


僕は元気よくアストレアにそう報告すると僕が大事に抱える剣をちらりと見る。ふふん!気づいてしまったかこの剣の魅力に。


「おつりは?」


僕の求めていた答えじゃなくがっかりするが無理やりにでもこの剣の凄さを説明してやろう!


「アストレア!!この剣は伝説の剣で名を空舞剣って言うんだよ?その剣が金貨1枚で買えるように僕が値切ったんだ!おつりなんてあるわけないだろ?」


アストレアの顔が驚きに変わる。気づいてしまったようだなこの剣の凄さに。


行商人のおじさんはいざと言うときと言っていたがまだまだ子供なのだろう誰かにお披露目したくてしょうがなくて僕は2本の剣を抜き放つ。


刀身も紫色に光美しさを覚える。


「アストレアにだけ教えてあげる、この剣は一たび剣を振れば空を飛ぶように敵は斬られ、二たび振れば地面に崩れ落ちるという2対一本の剣なんだ!!」


行商人が言ってた言葉をそのまま伝えると、驚きの顔のまま口に手を当てるアストレアが見える。

ここまで驚くとは思わなかったがこの剣の凄さにアストレアも気づいているのだろう。


見せてやるよこの剣の凄さを!!

僕はその剣を高々と掲げて地面に向けて振り下ろす!!


「空舞剣!!」




カラン!カラン!










「え?」


僕は刀身が取れた剣の根本と地面に落ちた2本の刀身を見つめる。


「え?」


地面に跪いて折れた刀身を見つめる。


「空を舞って地面に崩れ落ちるね…うまい事を言ったものねその行商人は」


声の方へゆっくりと顔を上げる僕と目が合うその目は哀れなものを見る顔をしていた。


「ガルム、あなたは騙されたのよその行商人にね」


無言でもう一度剣の取っ手部分と取れた刀身を見てゆっくりと立ち上がり扉に向かう。

扉の取っ手に手をかけて後ろの魔女に言葉を投げる。


「僕を止めないのかい?僕は何をするか分からないよ?」

「止めるつもりはないわ、というかさっさと行って私の金貨を取り戻せこのドアホ」


優しい言葉に涙が出る、アストレアになら迷惑をかけてもいいって考えてた僕に罰が当たったのかな?


僕はゆっくりと扉を開け外に出る、外にはまだ農作業をしていたトーマスさんがいたので近づく。


「トーマスさんお願いがあるんだ…その手に持ってる鍬を貸してくれない?」


「え?う、うんいいけど」


僕の異様な雰囲気にびっくりしつつ鍬を渡してくれる、僕は何も言わずに先ほど行商人がいた村の入り口の車輪の跡を見て顔をあげ、鍬を天高く掲げる。








僕は全速力で草原を駆ける目印のわだちを頼りに足が壊れてもいいほどの速度で!!
























「きぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!!!」


そんな僕の奇声が村中、平原に響き渡る。








           ――――――――――――――――――――――――


「うぅヒック!」

時刻は深夜だ、村の入り口まで戻ってきた僕を出迎えてくれる優しいトーマスさんとアストレアに合わせる顔がなく僕は泣いていた、手には先端部分が折れた鍬だったものと葉っぱが大量についた僕だけだった。


「が、ガルム君大丈夫かい?もう泣き止んでくれよ?」

「おい、金貨はどうしたドアホ、もしや取返しもせず戻ってきたのかこのドアホ」


優しい!優しすぎて涙がもっと溢れちゃう!!



「トーマスさんすいませんこのドアホが壊した鍬の金額は支払いますので」


そう言って頭を下げるアストレアが見える。


「そ、そんな気にしなくていいんだよ!使ってればいつか壊れるものだからね」


笑顔でそんな事を言ってくれるトーマスさんにいたたまれない気持ちになる。


「そういうわけにもいきません、私が保護者のようなものなので受け取ってください」


そう言って金貨を1枚無理やりトーマスさんに押し付けてトーマスさんを家に帰すアストレア。



あぁ行かないで!この優しい魔女と2人っきりは嫌だ!


沈黙が場を包む


「おい」


ビク!


「は、はい」


「金貨の価値を知ってるか?」


「い、いえ勉強不足でして」


「1枚あれば贅沢しなければ5年は過ごせるぞ?」


………


「金貨2枚分しっかり返せよ?利子もつけるからな?」


その言葉を最後に家に戻っていくアストレアを見送る。

どんな生き方をすればこんなに優しくなれるの?

可愛い教え子にもっという事はないのか!!


その思いと一緒に僕も家に戻ろうとすると足が止まる、大事なことを忘れてる気がする、僕はゆっくり腰の部分を確かめる、()()()()


なぜないんだ!!いつでも一緒だと言っただろうが!!


「相棒!!待っててくれ!!必ず見つけ出すからな!!」




◇ ◇ ◇

そして僕は森に駆けだして5時間後に相棒との感動の再開を果たした。


「2度とお前を離したりしないからなー!!」


熱い抱擁を交わしてまた泣くのだった。


















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