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始原の裁定者と終結の器  作者: 解放さん
1章 モース村

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ガルム君の1日目 (日常)

登場人物

①アストレア②ウィリアム・アルフレッド(赤髪)③ヘンリー・アルフレッド(やんちゃな子)

④ライン(子供眼鏡)⑤クララ(子供たちのアイドルの子)


村での歓迎会を終えて住む家の紹介をされた時は絶望したが、新参者が我儘など言えるはずもなく、ましてや外で寝るなども嫌なのでしぶしぶアストレアと一つ屋根の下で暮らすことになる。


家は2階建てで1階はアストレアが使い2階は僕が使う事に決定した。食事などはありがたい事に村の奥様方がくれるらしいので心配することはないと言われた。


僕の最初の印象とは違い村の人とは上手くやってるんだなと感心する。村長の話ではアストレアには生活面等で沢山お世話になっているので恩を返したいという話もあったくらいだ、その話を聞いて僕は半信半疑だったが、魔族である僕をこうして世話してくれているのだから悪い奴ではないのか?と認識を改める。


そして初めての夜が明け早朝に目を覚まして階段を降りるとテーブルに座るアストレアが本を読んでいる姿を見てびっくりする。


「朝早いんだね?結構早い時間だと思うんだけど」

「あたしも同じようなものよ」


本から目を離さずにいる彼女に何の本を読んでいるのか聞くと、「魔族の殺し方について」と言ってきて小さく悲鳴を上げると「嘘よ」と笑えない冗談を言う、寝起きに物騒な事言わないでほしいと思っていた所読んでいた本の表紙を僕に見せてくれる。


……


「文字は分からないっと」


その言葉に僕はにっこりしながら頷くのみだった。


「タイトルは【馬鹿でもわかる文字の覚え方】よ」


な、なんて崇高な本なんだ!頭の悪い人間にも分かる本なんて存在したのかと驚愕していると、アストレアが立ち上がりその本を僕の頭の上にポンと置くように渡してくるのでそれを受け取りその表紙を見る。


「1日10分でいいわ目を通して覚えなさい」


「10分だけでいいの?」


その短さに僕が驚いていると、続きがあるらしく話を続ける


「今日はね?でも明日は最初のページから20分目を通しなさい、そして毎日10分づつ増やし続けて最初のページから最後のページを読める時間まで行ったら逆のページから読み進めてそれも早く終わるようになれば次の本を渡すわ」


最初は簡単そうと思ったがその思いはすぐに消え去るが、それが大変かそうでもないのかがはっきりとは分からない。言われた通りに今はするしかないからな。


アストレアから毎日課題をする事を命令されその内容を頭でまとめる。


①先ほど言われた文字書きの練習

②この世界での常識の勉強

③魔法の訓練、最初は基礎知識を教えるとの事で座学からなのだが、文字が読めないので分かるようになってからと言われた。

④最後に基礎訓練を疎かにするなと言われ自分で考えて体を鍛えろと言われた。(身体的な訓練はアストレアには分からないからとの事)


それが終われば自由時間で好きにしていいとの事だ。


「あたしがいう事をするもしないもお前の自由だ、だがその時は当然あたしは今後一切お前に教えることはしない」


「あぁ分かってる、必ずするよ」


僕は強くならなきゃいけない、少なくともこうして誰かに守られて生きなくてもいいようにはしたい。


「なら早速始めろ、お前が起きて来た時が始まりだ」


その言葉を合図に僕は机に座り渡された本を見るとそこには文字の発声が書かれていると思うのだがこの形の文字が何を意味してるのか分からず横に立つアストレアを見ると、僕の言いたいことが分かってるのか発声方法を教えてくれる。


「ねぇ、僕は発声はできるんだから僕の言った言葉をアストレアが教えてくれない?」


「なるほどね、たしかにその方が貴方にはいいかもね、なんでもいいから一文字言ってみなさい」


そう言われ僕は一文字言葉を発すると、アストレアがページをめくりそれはこの文字よと教えてくれる。


「なるほどね…、それなら言葉を順番にした方がいいわね」


そんな独り言を話すとしばらく休憩と言われ、何やら紙に書き留める事をしたので手持ち無沙汰になってしまう。


無言で待ってるのもあれなので、基礎訓練について聞いてみることにした。


「ねぇ、たしかアルフレッドさんって王国の守備隊だったんだよね?ならその人に体の鍛え方を教えてもらうとかでもいいの?」


手を休めることなく僕の話を聞いて答えが返ってくる。


「いいんじゃない?そこのヘンリーってガキも朝に訓練しているのをたまに見るから混ざってくれば?」


「さすがにこんな早朝からはやってないよね?」

「日が昇り始める頃にしてるわね、今後それに参加するなら勉強の時間はずらすなり上手くやりなさい」


僕は了解を示して少しの時間待っていると僕の前にアストレアが書いた紙を広げて1文字づつアストレアが先に発声をしてそれに僕が続くという事をした。


この基礎の文字を覚えれば後は1人でも学ぶことが出来るとの事。


なんか最初の時の印象と違い、いい奴じゃんと心で思い時間は過ぎ、世界の常識などを教えてもらったのだが、挨拶の仕方などおじさんに教わったことばかりだったので、復習と言う形になり10分が立ち今日は終わりという事になった。


そのころにはちょうど日が昇り始めてきた頃だったので「じゃあ行ってくるね」と言い外に出てアルフレッドさん宅の近くでしばらく待っているとウィリアムさんが出て来たので、事情を説明して参加させてもらえる運びとなった。


最初は腕立てや腹筋などの体の基礎作り、それが終われば剣での指導を受ける形となり、最後に平原を駆け抜けるという事をして終わりとなる、毎日このメニューをしているらしいのでいつでも来いと言われたので僕は頷いて答える。因みに息子のヘンリーの参加は不定期らしく今日は参加していない、こうして誰かと一緒に訓練するのは楽しいなと言って笑うウィリアムさんを見て僕も笑顔で返す。


その訓練が終わるころには日が頂点に上っており川で体を洗ってから一緒にウィリアムさんと村に戻り解散となる。その時にウィリアムさんが息子にも毎日参加してほしいのにと言っていたので、お世話になってる僕は任せてくださいと言って大事な任務を引き受けたのだった。


広場を見ると3人の子供達が集まって話をしているのが見えたのでそちらに向かう。


「今日はかけっこ!!」

「今日はかくれんぼっていったじゃん!」

「やだやだ、死体ごっごするの!」


僕が近づくとそんな会話が聞こえてくる。

最後のは何が楽しいんだいお嬢さんと言いそうになったが目的を遂行するために話かける。


「なんか楽しそうな話してるね?何の話してるの?」


それぞれが挨拶してきてから今日何して遊ぶかを決めかねてるらしくガルムはどれがいいか言ってくれと言われたので僕の希望を伝える。


「その3つもいいんだけどさ、その全部の要素を詰め込んだ遊びをするっていうのは?」


「「「そんな遊びがあるの!?」」」


その言葉とキラキラの目を僕に向けてくる子供たちに頷きで返す。ごめんよクララ、君の遊びは正直できるのか分からないと心で謝りつつ話始める。


「それは森の中で隠れて追いかけて死んだふりをするというすべてを詰め込んだゲームをすることだ!!」


3人の感嘆の声を聞き得意げに説明する。


「と言うよりもこの村の近辺の事を僕が知りたいからさ、遊びながら周りの地形を覚えておきたいんだよね、だから僕が鬼になって皆を探すからさ、皆は隠れるなりわざと姿を見せるなり死んだふりなりをしてほしいんだ」


「すげーいいアイディア!それやろ!」

「興味深いですね」(眼鏡クイ)

「よし!本気で死ぬぞ~」



物騒な事が聞こえたがフリだよなと心で唱えて早速始めることにした、時間は日が落ちたら村に集まることと言い伝えスタートとなる。


20分後僕は早速森に入り走り出す、子供の足だ多少時間が立とうが追いつける!

そしてこの遊びの最大の目的はヘンリーのプライドをへし折ることにある、他の皆には悪いが眼中にあるのはやんちゃ坊主だけだ、なのでヘンリーが走って行った方向の足跡を見ながら走り始める。


それから10分ほど走るとヘンリーが遠くの坂の上で腰に手を当てて立っていた。


「ガルムー!!お前に俺が捕まえられるなら捕まえてみろー」


そう言って坂上の反対方向に逃げ姿が見えなくなったので急いで追いかける。


「くくく、お前ごときが逃げられるわけがなかろうがー!!」


僕はそう叫び全力疾走をして追いかける。


◇ ◇ ◇


「くそ~」

決着はすぐにつき僕の完全勝利で終わる。

「全然大したことないな~?これならラインとかけっこした方が楽しめたな~がっかりだ」


僕はそう言って首を横に振り呆れた態度を見せる。


「んだと~?さっきのは全然本気じゃなかったからだし!次は捕まらないし!」

「ほぉ?じゃあ逃げていいよ?10分待つからさ、また捕まえたら僕のいう事何でも聞くってのはどう?」

僕の発言に応えあぐねているヘンリーに畳みかける。


「勝負を受ける根性もないのか…クララが知ったらどうおもうんだろ~な~?」

ちらりとヘンリーを見ると鼻息荒く急にやる気を漲らせる。


「やる!!やるに決まってるだろ!」

「おし!じゃあスタートだ!」


僕の手を叩くのを合図にヘンリーの背中を見送る、ちゃんと15分ほど待ってから出発する、早かったなどの言い訳を作らせないためだ。


◇ ◇ ◇


「はぁはぁはぁ」


地面に大の字で息を荒げるヘンリーを見下ろす僕。


「降参か?」

「まだまだ~」

と言うが捕まってる時点で負けなのだがと思いつつもまだ心が折れてないので逃がすことにする。


「じゃあまた逃げていいぞ?」

「え!?」

「まだ降参じゃないんだろ?じゃあ僕もまだ付き合ってあげるよ」

笑顔で話す僕と絶望の顔をするヘンリーに心苦しくなるが心を鬼にしなきゃなと言い聞かせる。


「僕はヘンリーのおじさんとこれから毎日稽古するから一生僕には勝てないね!」

「まだ…できるし!」

その言葉と同時に立ち上がるヘンリーに感心しつつ震えてる足を見るが止めはしない。


「じゃあ初め!」

また手を叩きヘンリーを逃がす、引きずるように走る背中を見て強情だなと思いつつしばらく待ってやることにした。


そろそろ探すべく走り出すとあることに気づく。足跡がない…靴を脱いだなあいつ。

僕はにやりと笑い嬉しく思う。


「駆けっこは諦めて、隠れられたら僕もたいへんだからなぁ~」


そうして手当たり次第に走り回るのだった。



◇ ◇ ◇


日も傾きかけて来た時にとうとうヘンリーを見つけて捕まえる。


「僕の勝ちだね、負けを認めるか?」

「……」

ふてくされたように唇を突き出すヘンリーの頭を乱暴に撫でる。

「でも最後はてこずったわ、やるじゃん」

「ふん、当り前だろ!」

失敗かと思いつつ時間もないので帰ろうとすると小さく「今回は負けを認めてやるよ」と聞こえてきた。

素直じゃないなと思いつつそれは僕もそうなので何も言わない。


「結構森の奥まで来ちゃったな~帰り道分かる?」

「分かんない、こんな奥まで入ったことないから」


これはもしかしなくても迷子なのでは?僕はヘンリーをおんぶで持ち上げて村の方角だろうと思う方角に全速力で駆けだす。


◇ ◇ ◇


あれから2時間近く走り回りやっとの思いでモース村へとたどり着くとそこには大人たちが集まっておりアストレアの姿もある。


「ガルム!ヘンリー!お前たちどこにいたんだ!」

焦った様子で大声を上げられ萎縮しつつ森で遊んでいたことを説明をする。


「そうか…でも戻ってきて良かった、それで他の2人も一緒なんだろ?」

「え?クララとライン戻ってないんですか!?」


僕の言葉に周りの大人たちは焦りだしすぐに森へ探し出そうと手分けして入ろうとした時に小さい影が2つ重なってこちらに歩いてくる。


遠目からラインがクララをおんぶしてこちらに来るのが分かるがラインが泣いていて、どうかしたのかと目を凝らすとラインの顔付近に血が付いている。良く見るとクララの頭から血が流れ落ちてるのが見える。


皆が集まりクララを横にして状態を見ているとラインが喋りだす。


「ぼ、僕が見つけた時には頭から大量の血がでてて、息を確認したんだけど…息をしてなくて…

うぅ、うわ~ん!!」


そう言って泣き出すラインとそれを聞いて絶望の顔をする皆、僕のせいだ、僕がこんな遊びを提案しなければ…。近くでクララのお母さんのマーガレットが大声を上げ泣き崩れ、父親は膝から崩れ落ち地面を凝視する。


ヘンリーが泣きながら


「クララが死んだーー!!!」

と言いその場は涙の声がそこらから聞こえる。


「ほいっと!わぁ~泣いてる!私の死体の真似すごい上手いでしょ?生き返っちゃいました!!

大成功!!」


そう言て体を起こすクララをみて全員が固まりアストレアは分かっていたのか首を振っていた。

「クララが立ったー!!!」

ヘンリーのその言葉が広場に響く。



その後大人たちに僕達4人は本気で怒られ泣いたクララが「また死んでくる~」といいさらに火に油を注ぎ説教が長引く結果になったのだった。




「人に迷惑をかけないって常識も叩き込んでおきなさい」

家に帰ったらアストレアが僕にそう言って杖で頭を何度もコンコン叩かれたが僕は黙ってそれを受け入れるというシュールな夜を過ごすことになったのだった。










































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