魔女の憂鬱
モース村に来てからあれから7日が過ぎた。
僕が村に入るなり皆が僕のことを歓迎してくれ、宴なども開いてくれた、村の皆が僕の生い立ちを知りたいと言うので記憶がある限りの昔の話と、ここに来るまでの話をしたら悲しんでくれる人、僕の為に怒ってくれる人、泣いてくれる人、様々な反応を見せたが一様に僕の境遇を憂いてくれた。
大人たちの酒が回り始めた時に僕も村長や夫婦に何でこの場所に住んでいるのか聞いてみた。
村長=フレデリック・バーモント (60代)
彼が最初にこの村を亡き奥さんと一緒に作ったらしい、村長と同じようにここに流れ着いた者を迎え入れるという大義を抱えて。
元々は王国の首都に住んでいる富豪の商人だったらしいのだがお金を目当てに貴族や領民がお金を奪いに来たり、せびりに来る生活に嫌気がさしていた所に貴族からあらぬ疑いをかけられ家財没収され、投獄までされそうになり逃げて来てたどり着いた場所がここだったらしい。
グレイソン夫妻=エドワード、マーガレット、クララ(20代)
彼らは貴族に歯向かった事でその領地から逃げると同時に王国にも不信感が募り噂で聞いていたこの村を訪れたらしい。歯向かった理由、それは娘のクララをよこせと言われ連れ去られてしまう寸前の所でエドワードが領兵を殺してそのまま逃げて来たと語った。
アルフレッド夫妻=ウィリアム、アンナ、ヘンリー(40代)
王城守備隊だったウィリアムだが出世争いを目論む同僚に切りかかられ、それを弾いて逆に反撃をした所を運悪く他の人間に見られてしまったらしく、結果閑職に追い込まれる形で罪人の監視役に落とし込まれ、友と家族と逃げて来たのだと語った。
アーサー夫妻=トーマス、エリザベス、ライン(40代)
王城所属の政治を担当する政務官だったと言う、だが獣人国との戦争を決めた瞬間に税を上げ、作物を大幅に徴収する決定に反対の立場のトーマスは何度も政務総監に進言をしたが聞き入られることはなく、独断で徴収の負担が重くのしかかる領地の貴族にお触れを出したのがバレ投獄されることとなり、死罪を言い渡されているときに救ってくれたのが、ウィリアムだったという。
そして僕よりも一回り年齢が低い子供たちが3人いてそれぞれ反応は違うが「カッコイイ!」だったり「仲良くしてやるよ!」だったり「興味深いですね」などと言うちょっと変わった子たちだったが、僕に懐いて引っ付いてくるまでにそう時間はかからなかった。
そんな辛い経験をしてきた人たちだからか僕を暖かく迎え入れてくれた、皆いい人たちで何の問題もなく楽しくこの村での生活を謳歌している。
のだが。
1つだけ厄介なことが起きている、その原因がアストレアだ。
小さい村の為、仕方なくアストレアが住む2階建ての家に住まわせてもらっているのだが、それはいたるところで起きる
~僕が階段を下りて来たのを見て
「はぁ…」
~僕が机で勉強をしているのを見て
「はぁ…」
~僕が子供たちと遊んでいるのを遠目で見るアストレアと顔が合うと
「はぁ…」(動作でわかる)
~そして僕がアストレアに向き合って「はぁ」とやり返すと。
「はぁ…」
と言うように僕と顔を合わせるたび、何かをしてるのを見るたびにこの魔女はため息をついてくるのだ。
よろしくない、非常によろしくない!!このままの状態が続けば僕の精神は狂って騒ぎ散らしてしまう。
もう我慢が出来ずに僕は椅子に座って机に本を置いて読んでいる魔女に向かい机をバン!っと叩き顔を上げるアストレアと目が合う。
「はぁ…」
「それ!!」
僕は指をさしてその行為について咎める。
「僕の顔を見るたびにそうやってため息をつくの辞めてくれない?言いたいことが有るならはっきり言えばいいだろ?!」
ピクリとアストレアの眉が動く。
「言ってもいいと?」
そんな確認をしてくるアストレア、そこで僕は嫌な予感がした、目の前の魔女が遠慮と言う言葉を知っているのだろうか?いや知らない!その魔女が言い淀む事……だと?だがやっぱり聞きたくないです等と言えばこのため息が続く結果にしかならない!もう腹を括って立ち向かうしかない!!
「当り前だ!僕が何をしたって言うんだ!?」
僕の言葉を受けて無表情だった魔女の顔が驚愕に目を見開き口がぽっかりと開く、何をそんなに驚いているんだと思いながら言葉を待つ。
「心当たりがないと?」
表情そのままでそんな事を聞く魔女に僕は沈黙で答える。
「私がため息をつく理由が本当に分からないと?」
再度聞いてくる魔女の圧に僕は負けない!
「1日目…」
その言葉を聞いた瞬間突然用事を思い出した!約束を破るのはいけない事だよね?!
「あー!あー!用事思い出した!子供たちと遊ぶ約束があたんだった!」
そう言って扉に向かい押して扉を開けようとするが開かない、アストレアの奴魔法で何かしてやがるな!?
力ずくで壊そうとも思ったがその後がものすごく怖いので諦めてアストレアの方に向き直る。
そして淡々と話し始めるアストレアに僕もこの村に来てからの1日目を思い出すのだった。




