怖い魔女再び②
ガルムより背が低い魔女が目の前にまでやってくる、相変わらず悲鳴を上げ続けてるガルムを無視して魔女を見るが…。
『不気味じゃな』
目の前の魔女の心が読めない、魔術の類かと思案する。
私に一瞬目を向けるが目線はすぐにガルムに向く。
「ずいぶんと遅かったわね?送り届けるのに丸一日かかるとは思わなかったわ」
「ひぃぃぃぃぃぃぃぃ!」
「『うるさい』」
2方向から言われてようやく静かになったガルムに目の前の人物について聞きたかったが目の前にいる者に意思疎通ができると思われたくなかったので黙っていると、ようやくガルムが話し始める。
「あ、あのどうしてあなたがここに?」
「あなたを待っていたのよ、ゼルムから貴方の事を頼まれたから」
◇ ◇ ◇
おじさんから頼まれた?!
こいつに僕を?!
冗談じゃないと言いたいところだが、あの1件以来この人に逆らうのが非常に恐ろしい、拒もうものなら問答無用で殺されそうな気がして拒否することができない。
「貴方が1人で生きていけるというのなら構わないわ、私は頼まれたからここにいるけど強制はしないわ」
じゃあさようならと言おうとした所セイからのストップがかかる。
『待てガルム、そやつと一緒に行くんじゃ』
僕は念話を受信する事はできるが発信することはできないので抗議することができない、せいぜい首を思い切り横に振ることが精一杯だ。
『何をそこまで怖がってるのかは知らんが、お前に行く当てなどないのだろう?…お前が想像してる以上に魔族であるお前が1人で生きていくことは難しい、生きる術もお前は身につけてはいないだろ?』
セイの言う事は当たり前に分かる…目の前の魔女をチラリと盗み見る。
昨日と変わらない無表情で何を考えているか分からないそんな方と一緒に行けと?
「あの、1つ質問してもいい?」
正直何でこの人が僕の面倒を見るのか理解が出来ない、僕を殺そうとしてきたのに、おじさんがお願いをしたから僕の面倒を見る?正直理解不能だ。
「ダメよ」
もうやだこの人!
「あなたの面倒を見る理由が知りたいんでしょう?昨日もあなたに似たようなことを言ったけれど、あたしは自分の考えで動いてる、その理由を面に出すつもりはないわ」
まぁ素直に教えてくれないとは思っていた、なら別の確認ならいいだろう。
「僕が魔族でも面倒見れるの?」
「あなた本当にバカね、そんな事は昨日会った時から知っててここに来てるんだから当たり前の事でしょ?」
僕は二重でショックを受ける、やっぱり魔族だったんだという気持ちと、心の底からの罵倒でくじけそうになる。
おじさんがこの人に僕を任せた理由、そんな事は分からないけど、でもこの人といれば強くなれるんじゃないかと言う予感はする。
乗り気はしないがこれも運命なのだと割り切るしかないか…。
「アストレアさん!迷惑をかけるとは思いますがよろしくお願いします」
「迷惑なのは折り込み済みよ大したことじゃないわ」
そう言うと踵を返して歩く彼女を見送る。
『見送ってないではよ行け!』
「そんなぁ〜!セイともちゃんとお別れできないのかよ!」
『私はここら辺からなら呼べば聞こえるからその時にいつでも話せるから安心せい』
それはなんて嬉しいんだ!今日一,嬉しいかもしれない!
「色々ありがとね!君が居なきゃここまで来れなかったよ、次会うときはお土産持ってくるから!」
『期待せずに待ってるよ』
そう言って笑うセイの笑顔に癒やされてから、
地面にセイを置いて魔女の背中を追いかけるようにして歩き出した。
くっそ!意外と足が速いな、全然追いつけないし距離が離れる一方じゃないか!
少しくらいこっちにペースを合わせてくれてもいいだろ!!
「セイもそう思うよな?」
『…足踏みしてるだけだけだぞガルムよ』
呆れたセイにふくらはぎを叩かれて渋々歩き出す、少し歩いて振り返ると手を振り見送ってくれてる。
なんか別ればっかりじゃね?と思いつつも新しい門出に少しだけ、ほんの少しだけワクワクした。
「おい、早く来い」
魔女様に急かされたので小走りで草原を駆け抜ける。
自由…か
今この瞬間がそうなのかな、
自分自身と向き合う事から始めなきゃな。




