帰り道
僕とセイは2人で森の中を歩いている。エルフが言う”正規の道と言う奴を通っているらしいのだが”僕には何処に違いがあるのかが分からない。
そりゃ分かりやすくここが正解の道ですと分かるようにしたら他国の人に侵入してくださいと言ってるようなものになってしまうので納得はする。
そんな道をセイの誘導で歩いていると、セイが僕に何で奴隷になっていたか等の僕の過去を聞いてきたので、僕が覚えている限りのことをセイに話しながら歩いていた。
『フム…記憶があるガルムが坑道にいたのが7年間ほど、そこから赤ん坊の頃の記憶のない期間を4~5年ほど…か』
しばらく考え込むセイだが話を続ける。
◇ ◇ ◇
『私から見たお前の身体的成長は13~15と言った所だ、まぁそんな事は些細なことだが頭の片隅に入れとくのも悪くなかろう。』
「そうなんだ?自分の年齢なんて深く考えたこともなかったからなぁ、フリージアは何歳なんだろう?」
聞くの忘れてたなと言う声に私が答える。
『フリージアは今年で13歳だな』
ガルムが奴隷として生きてきたのなら誕生日なども経験はないのだろう、自分の年齢に興味がないのも必然か。
もう少しで迷いの森を抜け王国との緩衝地帯に出る。(どちらの国にも属さない場所)
私はずっと疑問、と言うか違和感を抱えていたのでこのタイミングで切り出す。
『ガルム、お前に聞きたいのだが…魔族についてどう思う?』
「魔族?おじさんからそういう種族がいるって聞いたことはあるけどその時は世界にどんな種族がいるのかを聞いてたから詳しくは知らないよ?」(急に何の話だ?)
…違和感は確信を帯びていくが慎重にいかなければならんな。
『なぁ、なんでエルフはお前を殺そうとしたんだと思う?』
その問いに首を傾げるガルムは少し考えてから口を開く。
「うーん、おじさんからエルフは警戒心が強くて他の種族の侵入を許さないって聞いてたからそれが原因なんじゃないの?僕が思ってた以上の対応でびっくりしたし、今でも思ってるしね!」
なんか、雲行きが怪しくなって来たぞと心で思う。もうぶち込むしかないか。
『ガルムここに魔族がいるよな?』
「え?嘘!」
そう言って周りをすばやく確認して警戒心を上げる少年の反応と心の声を聞いて愕然とする。
「何もいないじゃん?嘘ついたの?…ハッ!まさか!!」
やはりこいつ、自分が魔族だと分かっていなかったのか!!
いやいや!約14年くらい生きていて第三者から魔族めとか言われたことがないのかこいつは!?
おじさんに守られていたとか言っておったがその影響か?
しかし私の発言でとうとう気づかせてしまったか……だが仕方がない事だ、この先の人生で遅かれ早かれ気づくこと、ここで自分の存在を知らせるのは悪い事ではないはずだ。
そう頭を切り替え私とガルムの目線が合い、私は頷きで返す。
「セイって魔族だったんだ!?」
ズコッ!
『違うわ!!私は正真正銘の神じゃ!』
え?ッと驚くガルムに呆れつつ事実を話す。
『お前の事だよガルム、私自身お前が魔族であると知っていると思っておったが、所々でおかしいところがあったからな、そして今お前が自分の事を人間であると思い込んでることが分かったよ』
「いやいやいや、冗談でしょ?」
手を振り笑顔で信じようとしないガルム、それはそうか、極端な例じゃが人間だと思っていたのが実は虫でしたなどと言われても信じられる事ではないしな。
『そんな悪趣味な嘘はつかんよ、真剣な話だガルム』
私の真剣な空気にガルムの顔が引きつる。
「待ってよ、僕が魔族だなんて今まで一度も言われたことないんだよ?!それにおじさんだって、フリージアだって僕にそんな話をしてこなかったのはおかしいじゃん!」
『私なりの推測だ、だが冷静に聞けよ?最初の疑問だがな、お前はそのおじさんに守られてきた時間が長いと言ったな?そのおじさんは影響力があったともな、周りの奴隷に対してガルムが魔族であることを言うなと言っていたら周りもそれを守るんじゃないか?それはお前自身が自分は魔族とは思っていなかったからじゃないのか?』
黙って聞くガルムに心苦しく思うが話を続ける。
『次の疑問のおじさんとやらがお前に言わなかった理由は先ほどと同じだ、周りに言うなと言ってるのに自分が言うはずがない、伝えるタイミングを図っていた可能性もあるな、そして最後にフリージアだな、ガルム、お前もあの子の優しさを知っているだろう?魔族であることが原因で辛い目にあうことが多いお前に魔族と言うワードを使うことが負担をかけることに繋がると思ったんだろう、だから言わなかった』
思考がぐちゃぐちゃになっている少年は言葉を何も発さないが、私の言葉も理解し始めている、と言うよりも自分が今まで受けてきた事と照らし合わせてそれが嘘ではなく本当なのではと思い始める。
ガルムの止まっていた足が動き始める、歩いていないと思考がパンクすると思った無意識の行動だろう。
『急にこんな事を言って悪いとは思うが安心せい!お前のおじさんとやらが外で待っているのだろう?今まで守ってきてもらったのならお前が成長するまでそのおじさんに付き従えばよいだけじゃ!』
「おじさんはもういないよ…」
『え?』
口を大きく開けてガルムを見上げる。
「ここを出たら1人で生きていくことになる」
『……マジ?』
「マジ」
理解した瞬間に驚きがあふれ出てしまう。
『えええええええええええ!』
「セイうるさい…」
『す、すまん』
今朝もこんなやり取りがあったなと思いつつくだらない事は脇に置いて、ガルムがここを出た後の未来を妄想する。
①行く当てもない魔族の少年が街に出る
②魔族が理由で迫害される
③すべてを憎み生きるために悪に手を染める
④成長して力を手に入れる
⑤世界の全てを壊すべく暴走する
⑥BAD END!!
そんな悪い妄想を振り払うかのように首を振る、だが私の焦りは消えない。
やばいやばいやばい!
「ねぇ、セイは付いてきてくれないの?」
そう言い私を抱く腕に力が入る。
しょうがない私も付いていく!、それが言えたらどれだけ楽だったろうか。
だが私にその選択肢は選びたくとも選べない。私は地面に視線を向け首を振る。
『行ける事なら行きたいさ、だが我らはこの森を守ることが絶対なんだ、少しの間なら問題はないが長い間この森を離れることは出来ない…』
「じゃあ!その少しの!!…」
言葉の途中で言葉を止めるガルムに私の顔は苦しくて顔が歪む。
歯を食いしばる音が聞こえてくる。
「ック!」(おじさん!フリージア!)
私は静かに地面に下ろされガルムの顔を見上げる。
「パンッ!」
ガルムが自分の頬を思いっきり叩くのを驚きながら見つめる。
「ふぅぅぅぅ」
深く息を吐いた後私をもう一度抱え直し前に進み始める。
『お』「今ここで悩んでても仕方ないよね、皆が僕を避けていた理由それが知れただけでも良かった!そして僕が1人で生きていくことが大変な事も、だけど僕には約束があるからね!フリージアや、おじさんが頑張ってるのに僕だけ立ち止まる事なんて出来ないよね」
私にいつもの笑顔を見せるガルムに目を細める。
目の前には森の境界線だろう光が漏れ出ている。
ガルムとの別れがもう近い、もう一度ガルムを見るとまっすぐに前を見据え力強い眼をした少年がいた。
『おいガルム』
私の声に足を止め私を見つめるガルムに目を合わせて口を動かす
「強くなれ」
そんな言霊を彼に送る。
これくらいは許してくれよ?
少年は驚きつつも「当り前だ」と答え光が溢れる自由へと進み始める。
この少年はかっこいいなと心で想い私の目も希望に煌めいていく。




