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始原の裁定者と終結の器  作者: 解放さん
序章 生きる意味

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母娘④

私は今王室の前の扉の前で深呼吸している。


お母様の事は好きだ、だけどあまりにしゃべる機会がないのでやはり緊張してしまう。



扉の前には王室を守護しているエルフの兵士が2人前を見据えている。


「開けてください」


私がそう言うと両脇にいた兵士が扉を押し開けて私は中に入る。


扉が閉まり私はその部屋の奥を見る、玉座にはお母様が座っていてその隣には序列1位の側近が控えている。


扉から玉座までの道に長方形の赤いカーペットが敷かれており私はその道を進む。


玉座から3メートルほどの所で立ち止まりお母様を見上げると、側近に何かを話しかけ退出させる。


「お母様お久しぶりです、ご心配をおかけして申し訳ありませんでした」


その問いに答えず立ち上がり私の方に近づいてくるお母様を見つめる。

近くまで来たお母様は膝を床に着かせ抱きしめてきた。


「本当に心配しましたよ、助けに行くことが出来ずごめんなさい」


そう言い強く抱きしめるお母様に私も手を回し「気にしていません」と返す。



一国を預かる者がそうやすやすと動くことなどできない、それが自分の娘の危機であろうとも。

娘を攫われたから戦争しますなどとしていたら、どんどん泥沼に嵌ってしまうのは火を見るより明らかだ。


それを王女として分かっているからこそ、そこに関してフリージアが怒ることなどしない、助けを願っていたのは確かだが。


「お母様にとって私は大事な存在ですか?」

「!そんなの当り前でしょう!私にとってあなたは唯一の家族なのですから!」


私の発言を聞きそう言ってくれるお母様、お母様が私を大事にしてくれているのは、わたしも分かっている、意地悪を言いたくてそんな事を言ったのではない。ただ1つ私がお母様に怒っていることがあるからそれを解消したい。


「私も同じです、お母様のことが大好きで、とても大事に思っています」

「フリージア…」


私はお母様の肩を軽く押して距離を取る、お母様も少し驚いた表情をしていたが構わずにポケットを探り、手紙と木彫りの人形を取り出す。


グレタさんからあの日私が1人でいた理由はお母様に話していないと聞いた、グレタさんが見失ったという事にしたらしく、その気遣いがとてもうれしかった。


「お母様、あの日私が攫われた日、あの日に私はお母様の為にプレゼントを渡そうと準備していたんです」


目を見開き驚くお母様、誕生日会は大勢と一緒に参加こそすれ、私からのプレゼントは一度も渡したことがないのだから驚くのも無理はない。


「そんなものを用意してくれていたの?」


手で口を押え驚愕している。


私はそれを笑顔でお母様の前へと差し出す。


お母様も嬉しそうに手を伸ばし手紙を掴み損ねた。


私は掴まれる前に手紙を引っ込め笑顔でお母様を見る。


「ふ、フリージア?何をしているの?」

「私からの手紙とプレゼント欲しいですか?」


私は笑顔でそう尋ねる。


「それはもちろんよ!娘からのプレゼントを欲しくない母親などいません!」


私は手紙やプレゼントを後ろ手に隠し、いじけたように片足で地面をける。


「あのねお母様?私お母様にお願いがあるの、図々しいってわかってるんだけどお母様に会えない時間が長すぎて…、少しわがままを言ってもいい?」


「ええ!もちろんです!私もあなたを助けに行けなかったことが心苦しいと思ってたの!だから何でも言って?」


私は花開く笑顔を見せお願いを口にする。


「ほんと!?じゃあガルム君に謝ってね?」

「ん?ガルム君ですか?誰ですかそれは?」


まぁそうだろう、先ほどのグレタさん同様名前など分かるはずがないと分かっているが、いきなりストレートをかましても避けられるのがおちだ。


「お母様が殺せと命じた魔族の少年のことです」


その言葉でお母様の全身が固まる。笑顔のままフリーズするお母様は少し不気味だが話を続けよう。


「それが私のたった一つのお願いです、叶えてくれますよね?」


首を傾けお母様の反応を待っていると、息を吐きだしつつ動き出した。


「それはできません」


だからエルフはキライじゃ!そんな空耳が聞こえて来た気がする。(幻聴です)


「一国の女王として魔族に頭を下げることなどできません!」


「お母様は私が死んでても良かったって言うんですね!?うぅ」


両手で顔を隠し嘘泣きをする私に慌てて反応する。


「そ、そんな事は言っていない、だができる頼みと出来ない頼みがある!」


「私は一国の女王としてではなく、1人の母親としてお願いしているのです!!それともお母様は自分の命を救ってくれた者に不義理を働けと?それがエルフの生き様なのでしょうか!?」


私自身キャラじゃないと思いつつ、感情5割り増しぐらいで演技をする。


「そ、それは!」


ぐぬぬと歯を食いしばるお母様は初めて見たがそんな事を考えている暇はない。


「私は魔族であろうがなかろうが自分を救ってくれた人を蔑ろになど出来ません。私がお母様と逆の立場なら迷わず感謝を口にし頭を下げるでしょう!!」


まだ歯を食いしばるお母様に畳みかける。


「きっと魔族の少年はここを出た後にこんな噂を広めるでしょう、エルフの女王は義理も人情もなく、恩人に対して失礼な対応しかしない、頭のおかしい女王だと!!」


「なんだと!?」


「あくまで想像の話ですお母様、ですが私はお母様がそのような人物でないと分かっているからこそ、もしそのような事を言われたら悲しくて悔しくそして恥ずかしいです!!」


お母様が驚愕に口を開け放つ。


「し、しかし」


頭も固いも追加しとくのじゃ!またそんな空耳が聞こえた気がする。(幻聴です)


まだ迷うお母様に最後の攻撃手段を試みる、これがだめならもう打つ手はない。


私は木彫りの人形をポケットに隠し、

手紙をお母様の眼前に突き出す、そして真ん中を両手で持って語り掛ける


「お母様あの魔族の少年がいなければ私は今この場に居ませんし、生きていたかすら分かりません、そして私が持つプレゼントも永遠にお母様の下へ届かなかったでしょう」

「そ、それは…分かっています」


ビリッ!


私は両手に力を加えて真ん中に切り込みを作る。


「ああ!?おやめなさい!」


そう言い手を伸ばしてくるお母様から距離を取るように後ろに下がり、「動いたら破ります」と言い動きを止める。


「謝ってくれますよね?」


そう言いもう一度確認を取る。


「うううううう…………ぃ」


唸り声を上げ小さく何か言ったが聞こえなかったのでさらに力を込める。


ビリリッ!


「あぁ言います言いますから!!」


「何を言うんですか?」


「その魔族の少年に謝りますから!」


「本当ですか!!お母様なら分かってくれると信じていました!!」


誰かが周りに居たら、純度100パーセントの脅しだろとツッコミが入りそうなやり取りだ。



私は涙目になっているお母様に近づき手紙を手渡す、それを守るように抱えるお母様を可愛いと思いつつ。


()()()


私はポケットから第2弾を用意する


「お母様?プレゼントはその手紙だけじゃないんだよ?」


そう言い木彫りの仲睦まじい私とお母様の木彫りを目の前に差し出す。


「こ、こんなものまで用意してくれていたの!?」

「お母様これも受け取って?」


お母様が微笑みながらそれを受け取る。


「ちょ!フリージア!?」


前に手を引っ込めて距離を取って、さっきと同じようにする。


「待って、待って!魔族の少年には謝ると言ったでしょ!」


「うん!これはそれとは別だよ!」


私はお母様に分かりやすく話しかける。


「もし私が悪い事したらお母様は私にどうするように叱る?」


私のその質問に一瞬止まるがすぐに答えを出す。


「それはもちろんそれを反省して謝るように言うわ?」


「そうだよね!私もそう思う!」


「じゃあ、その逆でいい事をしたら私にどうするの?」


「それは褒めたり、感謝し……ハッ!!まさか!!」


私はえへへと笑いながら木彫りの人形の手を繋いでる部分に力を込める。


「私がお母様に言いたいこと分かりました?」


「そ、それとこれとはまた話が…」


ピシッっと音が響く。


「あぁ!私とお母様との絆が壊れかけようとしています!!これを止められるのはお母様しかおりません!!」


ピシシッ


「分かりました!!ちゃんとその少年に感謝を伝えますからもう止めてぇー!!」


「お母様!!」


その声を聞き力を緩めようとしたのだが。



バキッ!


「あっ!」


一歩遅く間に合わなかった。


「ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

声にならないお母様の叫び




玉座にお母様が座り直している、私は最初にいた位置でお母様を見上げている。



静寂





























であってくれた方が良かった。




部屋に響くお母様の泣き声、顔を両手で隠し本気で泣いている。


それを心配と困惑と色々な感情を抱えて見てるだけしかできない私。


気まずい、非常~に気まずい、大人のガチ泣きの対処など知らないし、その原因を作ったのも私の為どうすることも出来ずにいた。


この空気に耐えられなくなり恐る恐る声を出す。


「あ、あの~帰ってもよろしいでしょうか?」


それを聞き泣きながら首を振るお母様。


えぇ


そんな私の心の声などいざ知らず、泣き声が響く部屋で居心地悪く待っていると部屋の扉がノックされる。



私はものすごい勢いで振り返る。


何でもいい!この状況を打開してくれる何かを!!


そんな思いの下私が声を出す。


「女王様は今声を出せませんので王女である私が答えます!入ってきてください!」


私の声の後少し間が空き、扉が開かれる。


そこには先ほど退出していた序列1位のエルフと私と同い年くらいの銀髪の少女のエルフがいた、甲冑を身に纏い剣を指す姿は兵士のそれだ。


序列1位=カイゼル・エルムロードはお母様が泣いてる姿にびっくりした顔をして、私に視線を移す。


「あの、お母様にプレゼントを贈ったのですが、それが嬉しくて泣いてしまわれて…」


嘘は言っていないと自分に言い聞かせる。


「そ、そうでしたか」


困惑で立ち止まるガイゼルさん、女王が泣いてる姿など見ることなどないのだから。


だがこの場を早く逃げ出したい私は用件を聞く。


「お母様は今喋れる状態ではないので私が代わりに聞きます」


その言葉にガイゼルさんは驚きつつも説明を始める。


「ハッ!!我の隣にいる者の名はロザリア・グレタと申します!この者がルーバ・グレタの代わりとしてフリージア様の従者に就任することとなり、そのご挨拶にお連れいたしました!!フリージア様よりも5つ下ですが才能は折り紙付きです!どうぞご心配なさらぬよう!」


グレタ?


そう言えば娘さんがいるって言ってたけどこの子の事!?

私の5つ下って事は8歳で王城勤務してることになる。


凄いなんてもんじゃない!!


私が驚愕で目を見開いているとロザリアが一歩前に出てきた。


「改めまして申し上げます、ルーバ・グレタが娘ロザリア・グレタと申します、母からお話はかねがね伺っております、若輩の身ですが誠心誠意お仕えし、フリージア様を命に代えお守り致します!」


そういい綺麗な姿勢で頭を下げるロザリアを見てから、私の回答待ちだと気づきすぐに答える。


私は微笑みつつ王女としての言葉を返す。


「顔を上げてください、あなたの忠誠の言葉確かに受け取りました、私もまだまだ若輩の身であります。迷惑をかけることもあるでしょう、ですから共に成長していきましょう?あなたの働きに期待しております」


その声にロザリアは「ハッ!」と答え、配属はまた後日と言う事なのでその時に改めてゆっくり話しましょうということになった。


ふぅ~及第点は行けただろう!と自分に言い聞かせつつ


用事があるのでと言うことにして部屋から逃げる。



◇ ◇ ◇


ロザリアも配置に戻して王室には女王とガイゼルの2人だけとなった。


収まらない泣き声に困惑しつつもガイゼルが女王に話しかける。


「フリージア様変わられましたね」


それに頷きだけで返す女王を見て苦笑いを浮かべつつ、心でまた感心をする。





「気まずいな…」

そう小さく呟く声は泣き声でかき消されたのだった。
















書いてて楽しかった、ただそれだけ!!


後甲冑の来たエルフはエリートです!

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