母娘③
「お嬢様、私はこれを機にこの城からも出ていき、城下で暮らそうと思っております、そこで何かお店でも始めようと考えていますので、もし泣きたい時は何時でも私の所へ来てくださいね?」
何となくそんな気はしていた、近くに住むとは言えそう頻繁に街に顔を出せるものでもない、それはグレタさん自身が良くわかっていることだろう。
それでも私に逃げ道を作ってくれるグレタさんの優しさに「ありがとう」の言葉で返す。
「どうぞこれを、これはお嬢様が直接渡すべき物ですから」
ポケットから取り出された物に視線を落とす。
グレタさんの手にはあの時渡すはずだった木彫りの人形と1通の手紙がある。
「女王様の元へ向かうのですよね?」
私はそれに頷きで返しそれを受け取る。
「私宛の手紙と木彫りならちゃんと大事に私の部屋に置いてありますからね!宝物ですから!」
良かった、グレタさんにもちゃんと届けることが出来たんだ。
「うん、ありがとうグレタさん」
「それと私に変わる傍仕えなのですが…いえ、それも女王様からお告げになられると思います」
そっかもう代わりの人も決まってるんだよね。それに寂しさを覚えつつ何も言わない。
「行ってきますグレタさん」
「行ってらっしゃいませお嬢様」
そして私は王室に向かって歩き出し
グレタはそれをお辞儀で見送る、彼女の姿が見えなくなるまで。
「あなたが傍仕えで幸せだった」
「あなた様にお仕え出来て幸せでした」
2人の声はお互い届いてない、だが耳に届かなくても確かに伝わっているだろう。
1人1人に自分たちの戦いがある、私がお嬢様の代わりにはなれないように逆も然りだ、私にも私にしかできない戦いがある。
そこに優劣は確かに存在するだろう、責任の重さ、選択の自由、様々な違いがある。
だけど前を進む原動力には優劣はない。
自分の為、家族の為、恋人の為、友人の為、守りたい人の為。
その頑張る理由に決して優劣などないのだから。
戦いに優劣は存在する、頑張る理由には優劣は存在しない、




