表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
始原の裁定者と終結の器  作者: 解放さん
序章 生きる意味

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/144

未曽有④

噛み切られた、いや嚙み切らせた左腕の傷を見つめて、あいつに悪い事をしたなと、心で謝る。


両手が解放されたことで身軽になりつつも、あいつに助けられっぱなしなことを実感する。


僕の横を矢が飛翔する、すでに肩と腹に矢が突き刺さっている。


痛い、当り前だ、だが痛みには幸いと慣れている。坑道にいたことで役に立つことなんてないと思ってたが、つるはししかり、痛みしかり、何が自分の役に立つかなどは分からないものだなと思う。


そんな事を考えて走っていると森の中から上の崖めがけて岩の塊が飛んでいく。

僕が走る進路上にぶつかるそれを見てヤバいと悟る。予想通り岩の衝突を引き金として土砂崩れのように岩が降り注ぐ。


僕に襲い掛かるその岩の群れから目を離さないように上を見ながら回避に専念する。


しかしすべてを避けるなどできない、小さい岩だとしても鋭い衝撃が僕を襲う。


それが運悪く、いや必然だろう左腕の噛み後にぶつかる。


脳天に稲妻が走るかのような衝撃の後に強烈な痛みが僕を襲い動きを止めてしまう。


その僕の上に影がかかる、巨大な岩が僕の頭上に迫りくる。



[死]



頭に瞬時にそれがよぎる。


岩が迫る。


逃げ場はない。


 


左腕はすでに使い物にならない。

肩と腹には矢が刺さっている。


 


痛い。


 


だが、止まらない。


 


(まだ……動ける)


 


歯を食いしばる。


 


足を踏み込む。


 


岩が落ちてくる。


 


 


――死ぬ。


 


 


分かっている。


 


それでも、体は勝手に動いていた。


 


右腕を引く。


 


拳を握る。


 


 


(……無理だろ)


 


 


頭では分かっている。


 


それでも。


 


 


(止まれよ……!)


 


 


願う。


 


 


だが岩は止まらない。


 


 


その瞬間。


 


 


「ガルム君!!!!」


 


 


顔を上げる。


 


 


フリージア。


 


 


泣きそうな顔で、こちらに近づいてくる。


 


 


 

――まだ終わってない。


 


 


 


拳に力が戻る。


 


 


(腕に力を――)


 


 


思い浮かべる。


 


 


(壊れるな)


 


 


(限界を越えろ)


 


 


 


その瞬間。


 


 


体の内側で、何かが外れた。


 


 


骨が軋む。


 


筋肉が裂ける。


 


それでも、止まらない。


 


 


「うおおおおおおおおおおおお!!!!」


 


 


拳を突き出す。


 


 


――ドゴォッ!!


 


 


衝撃が走る。


 


 


普通なら、その瞬間に腕は砕けて終わりだった。


 


 


だが。


 


 


砕けない。


 


 


折れない。


 


 


壊れない。


 


 


 


「……は?」


 


 


自分でも理解できない。


 


 


あり得ない。


 


 


だが現実として、腕は残っている。


 


 


 


そして。


 


 


岩の方が、軋んだ。


 


 


ピシ、と音がする。


 


 


ヒビが入る。


 


 


だがそれは、表面ではない。


 


 


内側から、崩れる。


 


 


 


「なんだ……それは……」


 


 


誰かの声が震える。


 


 


 


次の瞬間。


 


 


ドガァン!!


 


 


岩が、弾けた。


 


 


破片が四方に飛び散る。


 


 


だがガルムの周囲だけ、まるで守られているように静かだった。


 


 


 


拳が震える。


 


 


血が滴る。


 


 


だが――


 


 


(……折れてない)


 


 


あり得ない。


 


 


自分でも分かる。


 


 


これは“耐えた”んじゃない。


 

 


その異常を理解する前に、


 


 


後方から、ぴょこぴょこと歩いてくる影が見えた。


 


 


小さな子犬。


 


 


場違いすぎるその姿に、思わず笑う。


 


 


力が抜ける。


 


 


視界が暗くなる。


 


 


 


(……なんだよ、それ)


 


 


 


そのまま、ガルムの意識は落ちた。


 




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ