未曽有②
この少年は決して甘いわけではない、必要とあれば人を殺すことなど躊躇わないだろう、
私はそれを間違ってるなどとは思わない。
そんな事はこの世界でずっと繰り返してきたことなのだから、だからこそ我々は疲れているのだがとため息をつく。
私が離れればこの少年は死ぬのであろうな、魔族と言うだけで忌み嫌われるのだから、全ての人種にとっての共通の敵、本来であれば魔族が住むのは南の海を隔てた場所にある(陸地でも遠回りで繋がってるが……)
この地方でおそらく魔族はこの子だけ…孤独か…この少年の生末を想う。
そんな事を考えていると前方からエルフが10人飛び出しガルムを取り押さえようと飛び掛かる。
咄嗟の所で回避したガルムは進行方向のエルフの1人に飛び蹴りで地面にエルフを倒す、片足がエルフの腹に乗るがお構いなしに踏み込み私が示す方向に駆ける少年。
「ぐえ!!」
子供の体重とはいえ思い切り踏み込まれそんな声が聞こえてくる。
意外と容赦ないなこいつと思いつつ木がなくなり視界が開ける。
しまった!!目が見開き己を恥じる。
目の前にあるのは横一線に続く岩の壁だ、断崖の下に私たちは躍り出た。
最短距離を指し示していた為、失念していた。
左右を見て状況を確認する少年
「さすがにやばいな」
ガルムの声と私の心の声が一致する。
今なおそこらから音が聞こえ近づいてくる。
私は不意にガルムの顔を見る、申し訳なく思う顔が出ていたらしい。
「お前のせいじゃないぞ?お前を信じて突っ走ったんだから俺が悪いし、今でも信じてるから」
そう言って笑いながら私の頭を撫でる少年、心でも私のことを責めず、疑わず、どうするかを考えるこの少年。
その優しさがさらに後悔を深くして下を向く。
「だけど…ここまでだな」(こいつをこれ以上巻き込むことはできない)
ガルムの心を聴きハッ!となり急いで腕に強く噛みつく。
絶対に離さない!!
すでに答えは出てるのかもしれない、私はこの少年を死なせたくない、死んでほしくない!!
ブチ!!
ドン!
えっ?は?
地面に投げ落とされて、
遠ざかって行く少年の背中を私は見つめる。
その後をエルフたちが追う姿が目に映る。
引き剝がされた?なぜ?
私の口には生暖かい皮の付いた肉が咥えられている。
私は震えで口が開き、口の物が地面に落ちる。
分からない、今湧き出してくる感情が何なのか、驚愕、怒り、心配、後悔さまざな感情が私の中を渦巻く。
歯を食いしばりぎりぎりと音が鳴る。
「馬鹿者がぁ」
思わず言葉が出てしまう、もう二度と話さないと心に決めていたというのに。
私は天に顔を向け力の限りの遠吠えを響かせる。
『あの少年を助けろ!!!死なせるな!!!』
私も急いで後を追いかけようと走り出す。
(間に合うか?違う、間に合わせる!)
ドゴォッ!!
私の目の前を通り過ぎた者は、そのまま断崖に突っ込みクレータを作る。
私を見て、私の目線の先に素早く視線を向けそのまま飛び去って行った。
慌てて私もその後を追う。
くぅ、このプリティな足も今となっては憎らしい!!
そして私はもう一度遠吠えを上げるのだった。
『急げ!!』




