未曾有①
はぁ、はぁ……。荒い息のまま僕は後方を振り返る。
エルフのの兵士達が僕を必死の形相で追ってくるのが見えるが距離はどんどんと開き今では少し余裕もできてきていた。
けど…。ぼくはちらりと自分の足を見る、僕は足がこんなにも速かったのかと疑問にも思う。
全力疾走などイノシシと追いかけっこした時くらいだが、あの時よりも少し?早くなっている気もするし。
僕は首を傾げつつまた後方を確認したまま走る。
「なんで攻撃してこないんだ?」
フリージアと別れ、走り出してから僕は攻撃と言う攻撃をもらうこともなく、ただ追いかけっこをしてる状態だ。
走りながらでは弓が使えない?その可能性はあるが出来ない事もないだろうと疑問にも思う。
それにエルフが得意と言う魔法が飛んでこないのも分からない、これも走りながらでは使えないなどの、何かしらの制限があるのか?
「クソ、なんかモヤモヤする」
「こんなことならおじさんやフリージアにもっといろいろ聞いておくんだったな…」
そんな事を言った所で、今現在答えが分かる事はないためその考えを振り払う。
僕は走りながら前の視界に映る地面を無意識に見る。
僕にはよく分からない、だが動いてるのだというフリージアの言葉が蘇る。
「なぁ出口の方向とか分からない?」
僕の片腕の中で両手を僕の腕にぶら下がる形の子犬に話しかける。
すると子犬の片腕が左後方に向けられる。
すでに言葉が通じることに驚きはなく、指さされた方向を見る。
「まじかぁ~」
僕の後ろにエルフが追ってきてる状況でのその方向は歓迎すべきものではなかったが、すでに子犬を疑うなど頭にはない。
「うっし!」
その声と同時に僕は子犬が指し続ける方角を頼りに急停止、急反転をしてまた全力で駆けだす。
今は左前方に見えるエルフが驚きつつも何か指示らしきものを出しているが、この状況で鉢合わせを回避するのは不可能だ。
なら俺は全力で逃げる、エルフの兵士を傷つけることは考えていない、最悪殴打や蹴りで退かすしかない。
もしフリージアの知り合いがいたらフリージアを悲しませることになるから。
その心を読み取れる腕の中の聖獣の難しそうな顔などガルムは知らないままに。




