迷いの森⑤
「見つからないねぇ~」
フリージアのその声に頷きつつ、あたりを見渡す、あれからどれくらいか分からないが結構歩いて探したが、全然見つかる気配がない。
と言うよりも何もいないのだ、鳥も動物も魔物も、音がするのざわざわとなる葉の音だけだ。
フリージアも実際に迷いの森に入ったことはないらしく、生態系のことまでは分からないらしい。
そこで何か考えるそぶりを見せたが結局言葉は出てこなかった。
今は聖樹は真後ろにあり中央からは離れてしまっている
「フリージアそろそろ中央に向かおう?」
「でも…」
フリージアが抱えた子犬をギュッと抱きしめるのが分かる、心配なのはわかるがこれ以上探しても見つからない可能性の方が高い。
「僕はフリージアを帰すことを第一に考えてる、それが僕のするべき事だから。だから行こ?」
フリージアは下を向きながら頷き、胸の中の子犬も心配そうに鳴いている。
ゾクッ!!!
聖樹に方向転換してフリージアがそちらに歩き出すのを後ろから見送り、僕も歩き出そうとしたところ急な寒気が僕を襲う。
殺気ではない、敵意も感じない、だが心地のいいものではない何かを感じる。
呼吸が無意識に早くなる、どこから?後ろ?横か?目だけ動かし左右を確認する。
視界の端に何かが見える、『違う!』囲まれてる!?
いつの間に?音も足跡も何もかも聞こえなかった。
僕の右端の視界には金色の光が見え、左の視界には蒼い炎を纏った”なにか”が見える。
後ろにも何かいる、さっきまで何も感じなかったのに本当にいきなりだ。
確認することもできない、そちらを見たら殺されるんじゃないかと言う錯覚を覚える。
とうとうまともに息を吸う事さえできずに苦しさで胸を押さえて膝をついてしまう。
前を歩くフリージアはこの気配を感じないのか遠ざかって行ってしまう。
助けを求めるように手を伸ばす…
「ワン!!!」
その声が聞こえた瞬間さっきまでの空気が消え失せ、僕は慌てて息を吸い込む。
「ッハァ!!ハァハァ!!ック」
左右を慌てて確認するがそこには先ほど見えたモノは何もなかった。
後ろも振り向くもそこにも何もいない……いや、いる
僕はゆっくりと視線を上にあげると木の上に二メートルほどのでかい梟がこちらを見ていた、全身真っ黒で額には月のように黄色い丸の模様がある。
「ワン!」
またあの子犬の声が聞こえたと思った瞬間フリージアがこちらを呼ぶ声が聞こえる。
「ガルム君?どうしたの?」
フリージアの方に振り返り心配そうに僕の顔を見てくるが僕は慌てて後ろの木の上を指さす。
「いや、木の上に…」
そう言い振り返り指さした場所には何もいなかった、だが空を舞い落ちる黒い羽根が僕の見たものは夢などではないと教えてくれる。
しばらく茫然自失になってるとまたフリージアが声をかけてきてこちらに来ようとしたのを制止して「すぐに行くから待ってて」とだけ言い地面に落ちた黒い羽根の方へ歩く。
なぜそうしたのかは僕にも分からない、意味のない事かもしれないが僕はそのでかい黒い羽根を拾いポケットにしまう。
心配そうに見ているフリージアの元に駆けより謝りつつ子犬の方にも視線を送る。
何も考えてなさそうな顔を見て微笑みながら頭を撫でると気持ちよさそうに目を細める。
「ありがと」
「ワン!」
「え?ガルム君今なんか言った?」
小さくいったその言葉は少女には聞こえなかったらしいが、きっとこの子犬には届いてることだろう。なぜかわからないが、この子犬に助けられたような気がするから。
「ねぇその子犬僕に抱かせてくれない?」
「うん!いいよ!羨ましくなっちゃった?」
笑いながら子犬を突き出してくるフリージアから子犬を受け取り。
丁寧に扱うように子犬を抱きしめる。
どうかお守りください、そう心で呟きながら。
「ワフ!」




