人か魔物か㉓
南側に向かうごとに冒険者や王国兵の数が多くなっていく。
(南って言うより東側に向かってるのか)
先ほどいた場所からは見えなかったが南に向かうほどに見えなかった東側の様子も見えてくる。
「…何と戦ってるのか本当に気になるな」
見える限りで、街壁は四か所近く崩れている。
その隙間からは、絶え間なく魔法の光が漏れ出していた。
上空に視線を向ける。
東側から、弾き飛ばされた人影が宙を舞っていた。
だが――
落下するその体を、翼の生えた獣に跨った王国兵が空中で受け止める。
そんな光景が、あちこちで繰り返されている。
(僕がいた西側も危なくなるかもな…………)
あの2人には警告したほうがいいか、
死んでほしいわけじゃない。
来た道を戻るために振り返る。
「え?!」
ゼノスとシェリが、こちらに向かって走ってくるのが見えた。
思わず、声が漏れてしまう。
距離はまだある。
それでも――2人と目が合う。
ゼノスが片手を上げる。
その合図を見て、僕も地面を蹴った。
◆
「何してんの?」
膝に手をつくシェリ。
肩を上下させるゼノス。
その2人を見て思わず眉をひそめてしまう。
「俺たちも一緒に行く」
息を整えながら、それでもはっきりと言い切る。
「…………はぁはぁ」
シェリはまだ呼吸が乱れている。
「2人は、奴隷を助けに行く事に乗り気じゃないよね?」
視線を外さずに言う。
さっきの沈黙を、なかった事にはさせない。
「……はぁ……そうだね。乗り気じゃないよ」
シェリの正直な言葉に思わず頬が緩む。
「俺も同じだ」
ゼノスもそれに続く。
無言で2人を見つめる。
ここで終わらせる気はないと、伝えるように。
「………理由が出来た」
ゼノスが息を吐く。
拳を握りしめながら。
「誰かの為じゃない。俺たち自身の為に」
「ここで何もしなかったらさ……」
シェリが小さく笑う。
自嘲混じりに。
「私たち、一生このままなんだよ。
見て見ぬふりして、納得したフリして、逃げ続ける」
一歩、前に出る。
「それが……嫌なの」
「……だから来た」
ゼノスが言葉を継ぐ。
「俺達自身どうしたいのか分からない。
それでも――立ち向かわないといけないんだ」
その言葉に、ほんの一瞬だけ間が落ちる。
(……いいな)
綺麗じゃない。
正しくもない。
でも――“本物”だ。
「後悔することになるかもよ?」
奴隷がどんな扱いを受けるかなんてのは痛いほど知っている。
坑道と同じだとは思わないけど………奴隷の醜さは――
絶対に変わらない。
「待ったりしないから」
「それでいい」
「うん」
地面を蹴る。
その背中を、2つの足音が追う。




