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始原の裁定者と終結の器  作者: 解放さん
1章 モース村

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人か魔物か㉒

門から延びる広い通路の端を歩く。

吹き抜ける風に煽られながら、遥か下に広がる屋根の群れへと視線を落とした。


「変わった街だよな。俺もいろんな街を見てきたが、こんな造りは初めて見るよ」


左下を見ながら進んでいるとゼノスからその言葉が飛んでくる。

正直ゼノスやシェリから話を振られるのが一番助かる。


「だね、僕はまだ2つの街しか行ったことないけど変わってるよね」


それでどこが変わってるのだろうか?

手当たり次第に探っていくか。 


「壁がある街って普通の事なの?」

「ん?そうだな~珍しくない、よな?」

「だね、王国の場合は国境から近い街には大体壁があると思う」


へぇ~。 やっぱりこの2人に色々聞いた方がいいよな。


ゼノス達が僕と一緒に行動する理由を聞くべきだと思ったけど……。

信用できる出来ないわ関係ないか。


(警戒を解かないようにすればいいだけの話だ)


「この街が他の街と違う部分って他にもあるの?」

「丸い街ってのは珍しいな、最大の特徴は中心にある大聖堂だろうな」

「それと奴隷区だね、そんなのがある街初めて見たよ」

「奴隷区って?」


ゼノスとシェリが顔を見合わせて小声で何か話している。

目の前の会話より遠くに聞こえる悲鳴に顔を南側に向ける。


「ガルムはその……奴隷だったのか?」

「いや、僕は孤児だったよ」

「そっか、急にごめん。もしガルムが奴隷だったら、

奴隷区の事を教えるのはどうなのって話になってさ」


その理由を聞いて僕も胸を撫でおろす。 

坑道から逃げ出してきた奴隷だと知られるのはさすがにヤバいだろう。

これからは奴隷だったことを隠していくことを心に決めて続きを促す。


「奴隷区は文字通り奴隷が住む区画だ、奴隷だけじゃなく貧困の奴らや犯罪者なんかも住まうスラムの総称だな」


「奴隷区の人達って普段何をしてるの?遊んで暮らしてるわけでもないんでしょ?」


アストレアに教えられた常識で住民にはそれぞれ役割があると聞いた。

その話を踏まえれば奴隷区に住む人たちにも何かしらの役割があるという事だ。


(奴隷、か)


「私たちも全部知ってるわけじゃないけど知ってる範囲で話すね?

一番多いのは労働力。後は奴隷商から商人が買って各地に売り飛ばされるとかかな。この街の平民や貴族に買われてそこで商売や家事を手伝ってるケースもあるよ。最後のが一番ましかもね」


「そうか?俺は労働者として暮らす事の方が幸せだと思うがな?」

「なんでよ?」

「最後のは平民や貴族と一緒に暮らすんだぞ?どんな扱いを受けてるか…………考えるだけで嫌になるぜ」

「まぁそれはそうかもだけど、優しい人に巡り合う事もあるでしょ?」


兄妹間での考えの違いをぶつける2人に呆気に取られる。


でも話を聞く限りこの2人は奴隷の事を憂いてくれている。


「っと!悪いガルム」

「いや、大丈夫。そもそも何で奴隷が生まれるの?」

「えーっと色々あるんだけど――」

「ガルム悪い、その話をする前にちょっといいか?」


シェリの話を遮ってゼノスが手をあげるので頷きで返す。


「俺たちはこのままここにいていいのか?

その……魔物の襲撃は終わってないから手伝いに行った方がいいんじゃ?」


「お兄がガルムと一緒にいるって言ったんでしょ!?ガルムが動かないんならそれでいいじゃん!」

「お前は極力戦いたくないだけだろ?」

「うっ!」


図星なのかシェリが顔を背けるのを見つつゼノスに向き合う。


トロールの群れと戦っておいてあれだが正直この街がどうなろうと対して興味はない。

むしろ奴隷区の話を聞いて魔物側に付けばよかったと本気で思ってるほどだ。

当り前だがそんな事を言うつもりはないが。


「東側の方は分からないけどさ南側から魔物が侵入してるの気づいてる?」

僕の言葉に2人が南側を振り向く。


街壁の上の冒険者の動き。奴隷区から聞こえてくる叫び声。

明らかに南側だけ慌ただしい。


「目も耳も良すぎ……」

「だな、全然気づかなかった」


(…………人間と魔族ってここまで違うのか?)


「重要なのはここからだよ、あれ見てみてよ」


南側の通路の奥の方を指さし2人に王国兵の動きを見せる。


「えっと領兵が街を守ってるよな?」

「分かった!兵隊が守ってるから無理して動かなくていいって事だ!」

「違うよ?」

「シェリ……お前はどんだけ恐がってるんだよ」


「僕が言いたいのは誰も奴隷区に入って助けようとしてない事を言ってるの」


僕のその言葉に2人の表情が止まる。


「どうして誰も助けに行かないの?冒険者も、王国兵も」

「「…………」」


2人の沈黙だけが場を包み視線も僕と合わなくなる。


「僕と一緒に行動したいって言ったよね?」


その言葉でようやく2人の顔が僕を向く。


「僕は奴隷区の人を助けに行く。それでも一緒に来るの?」


「そ、れは」

「…………」



「そっか……ありがとう!また会った時に色々教えてよ。じゃあね」


その言葉を残して南側への通路を駆け抜ける。


2人に言いたいことは山ほどあった。

全部、吐き捨ててやりたい。



だけど王国に根付いたモノを知らない僕がそれを言うのも違うとも思った。

……知らなきゃいけない。

知らないまま、判断したくない。


この世界の闇も、光も何もかもを。



誰が正しくて、誰が間違ってるのか。

それは、自分で決める。





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