人か魔物か⑳
…………ミオなら大丈夫だ。
大丈夫じゃないのはむしろ僕の方だろう。
不安を押し込め、遠ざかる魔物の群れから視線を外す。
あれは………。
「ガルム!!」
トロールの群れを迂回して街に向かっていると街の方向からゼノスとシェリがこちら目掛けて走り寄よってくる。
「良かった、一緒にいた狐はどうしたんだ?」
「生きてる……信じられない」
ゼノスが僕の周りを見てそんな事を聞いてくる。
うーん、なんて説明すればいいんだろう。
絶対あの狐は何なんだとか言われるだろうしな………。
「さっきの狐は……トロールを街から遠ざけてくれてます」
「……あの狐、ただの獣じゃないだろ?」
「それに……妹さんの形見も消えてる」
一瞬迷い、開きかけた口を閉じる。
あれを使うしかないのか?アストレアから学んだあの技を………。
眼を見開き早歩きで前に進む――
「え?お、おい!」
「ちょっと!」
後ろからの驚きの声を聞きながらも、早歩きを止める事はない。
「さてと、この状況なら外壁をよじ登っても大丈夫だよな」
「ちょっと待ってよ!」
街に入る方法を頭で考えていると、
僕の肩に手が乗せられる。それを無視して構わず突き進む。
「ちょ!止まれ~!」
後ろから両肩を掴まれ、唸り声を聞きながらシェリを引きずる。
「ガルム頼む止まってくれ!」
反対側の様子も見に行くか?いやでもな………嫌な予感がするしな。 今のうちに街に紛れ込む方が安全だよな。
いや待てよ?
足を止めて考え込む。
ミオは今日中に戻ってくる………よな?
戻って来なかったら1人で動くのは当たり前だけど、選択肢が減るのは痛いな。
兄妹が周りで何かを言ってるが自分の考えに没頭する。
最優先は村。 次に首謀者。
村を守る事に関しては夜から朝にかけてモース村の方向を見張るつもりでいるから大丈夫……朝に動かれたらお手上げだけど、それはこれから考えるとして。
問題は首謀者だ。 1週間を目安に探すつもりでいる。 見つからない場合は街を出てモース村周辺に戻るとして…………日中しか動けない分出来る限り無駄は省かなきゃいけない。 問題なのはどうやって探すかだ、手掛かりなのは犯罪者達だった事、黒いフードを被ってた事。
周囲が騒がしい。
考えてる間にも声が割り込んでくる。
(はぁ、うるさすぎる。)
「……あの、二人の用件は何?」
離れる気配がないので顔を上げて2人と向き合う。
「あ、動いた」
「用は特にないんだけどな?その……」
(用がないのに僕に近づくわけないでしょ)
「お兄、別に隠す必要もないんじゃないの?用がないのに話しかけてるなんて変でしょ」
「確かにそうだな、どうやって伝えようか迷っててな」
シェリの言葉に心で頷きつつゼノスからの言葉を待つ。
「この騒ぎが収まるまで、一緒に行動させて欲しい」
「っと!その前に!!ガルムはこの後はどうするつもりなの?!」
シェリが会話に割り込み顔を見合わせる。
シェリがゼノスに顔を横に振ったり手で後ろを指さししてるが、意味は当然分からない。
2人の顔を交互に見た後シェリからの質問に答える事にする。
「街に入って様子を見る。状況次第では動くけどね。 ゼノスの提案については理由を聞いてから、かな」
僕の発言を聞いてシェリは胸を撫でおろして、
ゼノスの方は顎に手を当て考える様子を見せる。
「シェリ、そのまま伝えても問題ないよな?」
「うーん、いいんじゃない? と言うか断られても西門から動かなかったら安全でしょ?」
安全ねぇ…………。
ドゴーン!!
反対方向から音が響き目の前の2人が街の方へと視線を向ける。
「お二人さん狙われてるからしゃがんだ方がいいよ?」
ゼノスがシェリに素早く覆いかぶさり地面に伏せる。
数秒して兄妹の頭上を飛んでくる矢を見送り街道方向を睨みつける。
魔物に乗ってこちらを狙ってたゴブリンはすでに見えない。
(なんで街道方向はあんなに苦戦してるんだ?)
見た感じ強そうな魔物もいないのに。
「まずは街に入って話さない?」
「「………そうですね」」
地面に倒れ込む2人に手を貸し門の方まで歩き出す。




