人か魔物か⑲
怒りに顔を歪ませるトロールの群れを見て、バルゴロスが慕われている事が分かる。
「ミオどうすればいい?あいつら怒り過ぎて話が出来なさそうなんだけど?」
「うーん……どうしようね?」
(僕が聞いてるんだけど……)
僕とミオの中で戦う事はすでに頭にはなく、どうやってバルゴロスを連れて帰ってもらうかを頭に思い描くがいい方法が思いつかない。
僕らがここを離れたとしても追ってくる可能性があるしな…………。
「ガルム、いい方法思いついたんだけど……」
困ったような顔をしながら僕を見上げてくる。
「魔法を使って何かするつもりか?」
数が少なくなってるとはいえトロールの数は100体~200体はいる。
昨日のミオの状態が頭を掠める。
「ううん、そうじゃなくて。
バルゴロスが起きるまで、うちが引っ張って街から遠ざけようかなって思って」
「なるほどね……うん、いいかもしれないね!―—ん?なんでそんな顔をしてるの?」
なぜかミオは困り顔のまま僕を見つめてくる。
「ガルムはどうするのかなって思って……」
「ミオに付いて行く、当り前だろ?」
ミオの顔がさらに険しくなる。
「ガルムは街に行って、村の事が優先でしょ?」
「……ミオと一緒に行った方がいいって思う」
口に出すつもりはないがミオの魔法は今の僕にとっては必要なものだ、
何より、ミオがいないと色々と不安なのだ、情けないけど。
「ウチは1人でも大丈夫、それともウチを優先して村を見捨てるの?」
歯を食いしばりミオを見つめるしか出来ない僕から目を逸らし、ミオが走り出しバルゴロスの足元へと進んでいく。
「じゃあ行くね!?ガルムはトロールの集団に巻き込まれないようにしてね!」
バルゴロスの両足に尻尾を巻きつけ、巨体を引きずりながら走り出す。
「ミオ!!!」
動きが止まるがミオが振り返る事はしなかった。
言葉が喉で止まる。
それでも絞り出すように――
「村とミオのどちらかを選ぶしかない状況になった時。…………村よりも、お前を選ぶ」
それだけ伝え、僕も街道の方向へと迂回する。
「ガルム!!!」
先ほどとは逆の現象が起きる。 同じように振り返ることはせず言葉を待つ。
「その選択をした時、うちはガルムを許せなくなる。ウチ自身さえも」
その言葉に思わず振り返るとミオと目が合う。
ミオが大きく息を吸い――
「自分の夢から逃げないで!ガルムの夢にウチを入れないで!!
ウチはどんな時もガルムの隣に立ってる存在なの!!」
その声が聞こえたと同時に重い音が遠ざかる。
「…………そう、だよな。ミオ、ありがとう」
頼んだぞ。
心の中でそう呟き、振り返らずに走り出した。




