人か魔物か⑱
離れて行くお爺さんの背中と街道側に走り去った冒険者の背中を見つめた後、2人の戦いに視線を戻す。
(やっぱりすごいな)
バルゴロスの上半身が地面に這いつくばり、その周りを六本の巨大な影が聳え立っていた。
バルゴロスが上を見上げ、ゆっくりとミオに視線を移す。
「天晴だミオ!!後ろの少年もありがとう!
見届けてくれて、我らの勝負を汚さないでくれた事、感謝するぞ!!」
ミオを称えた後、僕にも言葉を投げかけられる。
右手を上げる事でそれに返答する。
勝負あり、だな。
ゆっくりと歩きミオに向かって歩き始める。
それと同時にバルゴロスを囲んでいた巨大な6本の影が地面に吸い込まれていく。
バルゴロスのでかい声だけが耳に入る中ミオの隣に立ち、正座をするバルゴロスを見上げる。
「言い残す事はある?」
ミオの体が光るが、
何も起こらず光は霧散して消えていく。
「同胞を巻き込んだ事、申し訳なく思う。
…………そなたの涙に応えられなかった我を、どうか許してほしい。」
ミオの問いに帰って来るその言葉に眉をひそめミオと顔を見合わせる。
魔物側にも何かしらの理由があるのだと理解する。
聞きたい、……だけど声を無理やり抑え込む。
まだこの2人の戦いは終わってないから。
「やれ!」
その言葉を合図に、ミオが高く飛び上がる。
1本に纏められた尾が、真っ直ぐに首を捉える――
だが。
尾は、寸前で止まった。
空気だけを裂き、バルゴロスの首筋を掠めていく。
――沈黙。
次の瞬間。
ドン!!
巨体が前に崩れ落ちる。
ミオが僕の方に歩み寄ってくる。
「何をしたんだ?」
バルゴロスが突然倒れるが、死んではいない。
「魔法で自分が死んだ幻を見せたの」
眼を開けたまま動かない巨体を見つめた後ミオに視線を戻す。
「…………殺さなくて、いいのか?」
「うん………ダメ、だった?」
何処か不安そうな顔を見せるミオの頭に手を置き、首を振って笑いかける。
「いいや、ミオがそうしたいって思ったんなら、それでいいんだよ」
死を覚悟した者からしてみればミオの行動は侮辱以外の何物でもない。
だけどそれは、ミオ自身が一番分かっている事だ。
個人的な事を言うのであれば殺してほしい、この誇り高い魔物もそれを望んでいる。
けど……ミオの決断の方が僕にとっては重い。
ミオがこの先間違った選択をしたとしても――
変わらず付き従うだけだ。
……ミオが、そうしてくれるように。
グガオオオオオ!!!!
雄たけびが響き街の方から生き残りのトロールがこちらに向かってくる。
「ガルム……その」
「あいつらを殺すな、だろ?」
ミオの顔が笑顔に変わり頷く。
「こいつを連れて帰って貰わないといけないしな」




