人か魔物か⑬
バルゴロスに向き直る。
うちが命令を出した時点で跡形も残らないだろう。
「解除!」
6本の巨大な影は地面に戻り静寂が訪れる。
バルゴロスの下半身も再生を始める。
茫然とするバルゴロスに歩み寄る。
「………どういうつもりだ?」
「直接手を下したいって思っただけだよ」
尻尾を1本に纏める。
バルゴロスが正座をして目を閉じる。
「目を開けて、殺される瞬間から目を逸らさないで」
「フッ!手厳しいな」
目を見開きウチを見つめ続ける。
「痛みのない魔法かけてあげる」
「いらん!」
「それを決めるのはウチだよ?分かるよね?」
「…………好きにしろ」
ガルムが隣へと歩み寄ってくる。
安らぎを感じつつバルゴロスに手の平を向ける。
「信じるものほど脆く、
仰ぐものほどよく砕ける。
月なき闇に、真実より残酷な夢を灯せ。」
【幽月幻灯】
視覚的に何かが起きたわけじゃない。
ごめんね、ウチは我儘なんだ。
「言い残す事はある?」
ウチの言葉に天を見上げ月を見上げる。
「同胞を巻き込んだ事、申し訳なく思う。
…………そなたの涙に応えられなかった我を、どうか許してほしい。」
ガルムと顔を見合わせ首を傾げる。
「やれ!」
月を見上げたまま首を差し出す。
力強く飛び上がりバルゴロスの視界に入り目を合わせる。
そして――
グシャ!!
その音と共に首に尻尾を突き立て、ねじ切る。
バルゴロスの首が草原を転がり地面を向いたまま止まる。
地面に着地して急いでバルゴロスの首へと駆け、持ち上げる。
尻尾で巨大な頭を支え最後まで月に顔を向ける。
意識が消えるその時まで。




