人か魔物か⑫
手の平大の大きさの石を握りしめ、天高く放り投げる。
空気が凍り聞こえてくるのは街からの喧騒だけになる。
お互いが腰を屈みこみ。
石が落ちた瞬間――
ドゴォン!!
直前まで私がいた地面が爆ぜた。
巨大な足が地面を抉りながら目の前に迫る。
3本の尻尾を使い地面を強く弾き体を右に飛ばす。
残った3本は迫りくる足の前に伸ばしながら残す。
尻尾がバルゴロスのスネに触れた瞬間に巻き付ける。
そのまま強大な力に引っ張られ体が宙を舞う。
空中で目が合い笑いあう。
巻いた尻尾を解き、スネの部分に尻尾を突き立て固定する――
振り子のように後ろに下がり、一気に前に弾き飛ばす。
「はあ!!!」
目の前に迫ったバルゴロスの鳩尾目掛け。
掌底を叩き込み、
巨体がくの字に折れ曲がる。
「ぐおおおお!!」
体が後ろによろけるの見た瞬間。
地面に叩きつけられる。
影が頭上を覆い闇へと変わる。
足だ。
咄嗟に尻尾で体を覆う。
重い衝撃が伝わり地面にめり込んでいく。
「もっと遅いと思ったんだけどな~」
素早い速さのバルゴロスに少し驚いてしまう。
痛覚はある……なら”恐怖”も当然ある。
尻尾に伝わる重圧が消え、また衝撃が加わる。
それは止まることなく続く。
地震のような地響きが連続する中考え続ける。
「うーん、どうやって崩そうかな」
色々やってみるか………。
全部出来るかな
「一歩を奪い、二歩を沈め、三歩にて絶つ。
闇よ、足を喰らえ。」
タイミングを見極める、尻尾への重圧が消えるその時を――
今!
【冥影封歩】
防御を解き上を見上げる。
凍った様に動かない足裏を見つめ、
6本の尻尾を1つに纏め。
足裏に突き刺しながら伸ばし続ける。
「ぐおおおおおお!!!!」
痛みを感じても動くことなど出来ないだろう。
(持続時間が短いのが難点だけど……)
突き刺した尻尾を抜いて距離を取る。
1,2,3、4,5,6,7,8
8秒で治りきる足を見つめる。
効果が切れ片膝を着き睨みつけてくる。
「ごめんね、まだ終わりじゃないんだ」
その場に片膝を着いて止まった時点で、もうお終いだよ。
「一歩を奪い、二歩を沈め、三歩にて絶つ。
闇よ、体を喰らえ。」
【冥影封歩】
同じ魔法であり、同じ魔法ではない。
バルゴロスの下に黒い円が広がる。
気付いた時にはもう逃げる事は出来ない影の沼。
暴れて沼から抜け出そうとするが止まることなく体を沈ませ、動きを止める。
「へぇ、影に入るのにも限界があったんだ、知らなかった」
普通なら飲み込まれた時点で大体が死ぬ。
少し不憫に思う。
「一歩を奪い、二歩を沈め、三歩にて絶つ。
闇よ、存在を喰らえ」
【冥影封歩】
3回目
影の円が瞬時に閉じ、血が地面に広がる。
再生しない下半身を見つめる。
「なぜだ!」
それには、うちも答えを持っていない。
歩みを進めバルゴロスの手が届かない距離で止まる。
降参する?
その言葉を言いかけ飲み込む。
「一歩を奪い、二歩を沈め、三歩にて絶つ、四歩目は既に無し。
闇よ、永久を喰らえ」
【冥影】
決して逃げる事の出来ない、どこまでも追い続ける絶望の影。
6本の巨大な影がバルゴロスの周りから生える。
隙間からバルゴロスを見つめ続ける。
天を見上げ6本の黒い影を見つめた後―—ウチと目が合う。
牙を見せニヤリと笑うその顔に後悔も恐怖もなかった。
「天晴だミオ!!後ろの少年もありがとう!
見届けてくれて、我らの勝負を汚さないでくれた事、感謝するぞ!!」
ガルムを振り返ると右手を挙げて答えていた。




