人か魔物か⑨
トロールたちが警戒して足を止める中、僕とミオも一度動きを止めた。
「なぁ、ここは他の奴らに任せて反対側に行かないか?」
狐姿のミオがじっと僕を見上げ、耳をぴこぴこと動かす。
やがて街の方へ視線を向け――
「却下!」
街の方角からは、微かに悲鳴まで聞こえてくる。
「ガアァルルオオ!!」
不快な叫びと地響きを撒き散らしながら、一体のトロールが迫る。
その瞬間、街側から放たれた光線が奴の腕を吹き飛ばし、
続けざまに頭部まで爆ぜさせた。
……すげぇな。
弓であんな真似ができるのか。
心で兄妹に感謝を告げる。
振り向けば、街道側の右門も森側の左門も別の戦場になっていた。
左門――森側は特に派手だ。
森の奥から絶え間なく魔法が飛び、爆音が鳴り止まない。
疼きが止まらない。
心臓が早鐘のように鳴る。
視野が狭くなっていく――
ミオの尻尾が1本視界に割り込む。
「ガルムよ~落ち着け~」
「何だよその口調は、落ち着いたよありがとよ!」
少し残念に思いつつ、乱れた呼吸を整え、右門へ目を向ける。
戦闘は地味だが深刻だった。
ヘルハウンドより一回り大きい魔獣が、冒険者たちを翻弄している。
その時だった。
風の流れが、不自然に街の方角へ吸い込まれていく。
魂まで引きずられるような錯覚。
空気が止まり、戦場が凍りついた。
――ォオオオオオオオオオ!!
咆哮が空気を震わせ、地面を揺らす。
胸の奥まで掴まれたような圧が走る。
ここじゃない。
もっと遠くからだ。
三つの咆哮が重なり、
一瞬だけ、僕の戦意すら吹き飛ばす。
その瞬間、戦場は別物に変わる。




