人か魔物か⑦
ミオと2人で街壁の下へと飛び降りる。
「お、おい!」
「何してんの!!」
ゼノスとシェリの言葉がすぐに遠くなっていく。
全身で風を浴び近づく地面に足を埋める。
「なんでミオは軽やかに着地できるんだよ」
「女の子だから!」
「僕は一生出来ないじゃん」
埋まった足を地面から抜き出し周りの冒険者を見つめ。
鉄柵の向こう側にいる衛兵に体を向ける。
「この鉄柵はずっと開かないの?」
「えと、王国軍が来ると思うからそれが来るまでは…………」
「どれくらいで来るの?」
「10分~20分だと思う、すまん」
「責めてるわけじゃないからいいよ」
門の前にいるのはさっきの4人組と怪我をして座り込んでる冒険者が20人ほどいた。
「街の中に入りたい奴いる?」
「俺達だ!」
「あんたらは知ってるから良いよ、他には?」
僕の言葉に顔を見合わせパラパラと手が上がる。
合計で15人か。
「おい!そんなこと聞いて――うわああああ!!」
ミオが6本の尻尾で冒険者を包み壁を駆け上がるのを見つめる。
「言わないでも分かるなんてさすがだな」
「あ、あの」
「ん?ああ、あんたは街に戻らないの?」
「その………」
確か金が必要だとも言ってたな、まぁいいか。
「あの……私も一緒に戦わせてください!」
戻って来たミオに指で白い服の少女を示す。
「ミオ、この子も上に連れてって」
「え?!きゃぁぁぁ!!」
後1往復か面倒だな。
「ミオ!下から投げるから受け取ってくれ!!」
「分かった!!」
残り3人になった冒険者の足を片手で2人掴む。
「「え?」」
手に力を込め体を回転させる。
「うわああああああ!!!!」
「いやああああああ!!!!」
「おら!」
勢い止まらず城壁の上の方まで飛ぶ2人をミオが尻尾で受け止める。
あと一人。
「待って、待って!!やっぱり下に残ります!!」
「…………」
座り込んで涙目になってる女性の体を魔物の大群の方へ向ける。
「皆で止められなかったらどうなっちゃうんだろーね?」
「でも~」
「はいはい、目を瞑っててくださいね」
「まっ――」
同じように足を掴みそのまま上に投げ飛ばす。
キラキラと輝くものがあったがきっと涙だろう、詮索しないであげるのが優しさだよな。
「ミオ!行くぞ!!クソ、出遅れちゃったよ」
僕がこうしてる間にも20人ほどが戦場を散って走り出している。
隣に降り立つミオを見て一緒に走り出す。
「目立たないようにするんじゃなかったの?!」
「いや、そうなんだけどさ、どうしても抑えがね………、
僕だけが目立つわけじゃないんだから大丈夫!大丈夫!」
「うちはガルムの暴走を止めるべき?」
「この戦場を見てるだけなら魔物側に付くぞ?」
少しミオが考えてにやりと笑う。
「嘘嘘!ここからの裏切りは絶対しないから!」
「そっちの方が面白そうだったのになぁ~」
君の暴走の方が恐いんだけど…………。
◇ ◇ ◇
下から連れてこられたり投げ飛ばされた冒険者を一度見る。
放心してたり泣きじゃくる冒険者を不憫に思いながらガルムの背中を追う。
「お兄あいつ何なの?」
「…………俺が聞きたいよ、魔術師だと思ったんだがな」
その言葉に顔を向けると兄もこちらを向く。
「なんで魔術師?」
「街壁にいたし飛び道具は持っていなかったからな」
あぁ、確かにそうだよね。
2人でまたガルムを見つめーー
固まる。
「なんかでかい炎が増えてるんだけど…………」
「…………怪力の魔法使い?羨ましい」
ガルムの拳が唸る。
トロールの首がねじ切れたように宙へ舞い、次の瞬間、炎に呑まれていた。
それにーー
「狐だ」
「狐だね」
何処から出て来たのか分からない狐がガルムと一緒に戦いそちらにも驚く。
尻尾が伸び縦横無尽に動いている。
転ばせたり、突き刺したり、2体掴んでぶつけ合ったり。
巨石を砕いた時に「ミオ!やるぞ!」と言っていたがその時に何かしたの?
「お兄巨石砕いた時どこ見てた?」
「崩れる巨石を見てたぞ」
私も同じだ。
今考えてもしょうがないか、目の前の事に集中しよう。
それにしても。
「あいつら全然止まらないな」
「だね、無鉄砲すぎ………」
お兄が息を強く吐き鋭い眼光に変わる。
私もそれに合わせる。
「ガルムの援護を優先するぞ!」
「おっけ!デカいのはお兄ね」
「任せろ!」
二人の弓弦が同時に鳴る。
雷光の矢が一直線に戦場を裂いた。
何なんだろうあの少年は…………。
その想いを心に残し戦場を睨みつける。
◇ ◇ ◇




