人か魔物か⑥
シェリに見られるのが耐えられなくなりもう一度門を見る。
剣の鞘で鉄柵をカンカン叩いて開けろ開けろとまだ騒いでいる。
正直うるさい。
「うるせーぞ!終わったら開くんだから待ってろや!」
門の真上にいた冒険者の怒号が下にまで届く。
「外に出てこれない腰抜けは黙ってろよ!」
「んだとこらぁ!役割ってのがあんだよひよっこが!」
言い合いをしてる2人を見ながらゼノスに質問をする。
「なんで開けないの?今なら開けてもいいと思うんだけど?」
「緊急時の対応は外か中かで金額が変わるんだよ、
外に行って戦う奴は金額も大きく、反対に街の中で戦う奴は金額が少なくなるという風にな。
今開けたら街の中で戦ってた奴が外に殺到するかもしれない、だから開けないのさ」
「あいつらもそれは知ってるんでしょ?なんで中に入りたいんだろうね?」
「さあ?知らないんじゃないか?」
「昨日今日で騒ぎ起きすぎでしょ、違う街行った方がいいんじゃない?」
昨日の犯人がこの毛玉だとは夢にも思わないだろうな。
ゾクリ――
体中に悪寒が走り後ろを睨みつける。
城の方ではない。
さらにその向こう――街の反対側からだ。
「おい!森の中から大量に魔物が出てきてるぞ!!孤立しちまうぞ!!」
誰かが言ったその言葉を皮切りに街壁が騒がしくなる。
「目の前からも何か進んできてるぞ!!」
「おいおいおい!トロールの大群じゃねーか!…………しかもあれは」
周りが騒がしくなっても反対側から目を逸らすことが出来なかった。
一番ヤバいのは僕たちの所じゃない。
「ギカントロールもいるのかよ、なんでこんな場所に…………シェリ!ガルム!逃げるぞ!」
逃げる?なんで?
ドーン!
ドーン!
ドーン!
先ほどの鐘の音ではなくもっと重い音が街中に響き渡る。
「最大警戒の音だよ!ガルム早く逃げよう!」
今度はシェリの声が僕に届く。
反対側から視線を外し平原を見つめる。
本当に大量にいるな。
人間の3人分の高さのトロールとその倍はありそうな奴が1体いる。
「どこに逃げるの?」
「そ、れは……」
「戦わないと生き残れないよ?」
僕の頭に手が置かれる。
「いい事言うな少年!儂もその意見に賛成だな」
まじかよ………。
僕と同じように口元を仮面で隠し、笠を被った白髪の男が目だけで笑い下に落ちていく。
アイツだけじゃない………石段から今上がってきた筋肉が凄い男を見ても感じる。
多分まだいるんだろうな…………ヤバい奴が。
「岩が来るぞ!!!」
誰かが叫んだその言葉に真っ先に反応したのはゼノスだった。
「シェリ!!やるぞ!!」
「はいはい!分かりましたよ!!」
街壁の縁に2人が飛び乗り弓矢を番える。
「穿雷一擲!弱点を穿ち全てに亀裂を走らす!」
「崩雷一擲!轟撃一つで万物を砕く!」
矢が、光を帯びていた。
2人から矢が放たれその軌跡を追う。
2人から放たれる矢は1本の長い矢のように繋がっていた。
岩にぶつかりーー
縦に亀裂が走りーー
轟音と共に中央に大きな穴が開く。
すげぇ…………
さっきから体の鳥肌が収まってくれない。
やばいな――
楽しい!!
手に持つミオを空に放り投げる。
狐姿のままのミオに笑いかける。
「ミオ!やるぞ!」
「状況全然分からないんだけど…………」
「デカブツ共を殺す!」
「人間側ね、りょーかい…………ガルム口裂けちゃうよ?」
「裂けねぇよ!いや、今なら裂けてもいい気分だな」




