別れの時
今はモース村を抜けて20分ほど歩いた位置に来ている。
◇ ◇ ◇
あの後少しの間落ち込んで座り込んでる僕とオロオロして僕の後ろを行ったり来たりしているフリージア。
おじさんが頭をかいて僕を無理やり立たせ背中を思い切り叩く。
「シャキッとしろガルム!これで俺たちには何の迷いもなくなったんだ、落ち込むのは全部終わってからでいいだろ?」
おじさんにそう言われ静かに頷き僕たちは歩き始めたのだった。
「ガルム君元気出して?」
緑色の髪を肩口まで伸ばし赤い瞳でぼくの顔を心配そうに見つめるフリージア。
その顔を横目でちらりと見て直ぐに視線を前に戻す。
僕は考えてしまう先刻魔女に言われたことではない、あれはもう一種のトラウマに近くなってるから数に数えない。
この心配そうに僕を見つめるエルフの少女との別れが近くなっていることを実感して足取りが重くなってきてしまう。
もちろん故郷に帰すのがこの子のためだ、そしてこの子もそれを望んでいる。
そんなことは最初から分かっている、だが僕には戻るべき場所があるのか?考えないようにしていても、別れが近いからこそ、勝手に頭の中に割り込んでくる。
フリージアを帰し、その後は?おじさんと一緒にいられる?僕を月狼団の一員として残してくれる?
分からない、だけどレオの言葉がよみがえる。
「その後のことはお頭が決める」
その言葉は僕にはもうすでに結末が決まっているようなものを感じる。
パン!!
僕は思いっきり両手で自分の頬を叩く。
その音にフリージアもおじさんもぎょっとした顔になる
僕に今できること…
「が、ガルム君?どうしたの」
「いやぁ~なんか僕嫌われることが多いなって考えてたらなんか勝手に落ち込んじゃってさ!でも大丈夫!もう慣れちゃったよ!!」
あははと笑う僕の目の前にフリージアが来て僕の両手を力強く握る。
「私はガルム君のこと大好きだよ!!ガルム君はすごく優しいの!!自分の為じゃなくて誰かの為に行動できるガルム君はかっこいいもん!!」
耳と顔を真っ赤にして目を合わせてくれるフリージアにありがとうと言い頭を撫でる。
「……ん」
フリージアは俯いてそのまま右後方に下がってしまう。
そんな様子を温かく見守っていたゼルムも言葉を続く。
「俺もガルムのこと好きだぜ?なんてったって俺の唯一の息子だからな!?」
そう言い今度は僕がおじさんに頭をわしゃわしゃされる。
なぜかフリージアもそれを見て僕の頭を撫でてきた。
凄く温かい気持ちになり、目が潤んできてしまう、それを隠すように目をギュッ!とつむり涙をひっこめる。
「もういいから!」
その手から逃げるようにして前を走るとフリージアも追いかけてきて「まって~」と追いかけてきたのでかけっこが始まってしまう。
子供たちの遠ざかる背中をゆっくりとした足取りで眺めるゼルムの微笑みが徐々に悲しみ含む表情に変わる。
「ごめんなぁ」
その声を聴くものはいない。
一筋の涙が落ちる。
あの日以来枯れていたはずのその涙はとても美しかった。
ゼルムは静かに自分の両手を見つめ、そして無意識に月狼の入れ墨がある部分を掴む。
それにどんな意味があるのかを知るのかは彼だけだろう。
小さく月狼団の誓いの言葉を口ずさむ。




