人か魔物か③
下では魔物が後退して森の方まで押し込まれていた。
攻撃が届かない、届いても巻き添えが発生してしまう為街壁からの攻撃は止んでいる。
笑いあう声が響き、弓の弦を緩める者もいる。
なぜか僕の周りだけ人が寄ってこないのだが、好都合でもある。
周りを見てどんな人がいるのか確認していると街側を歩く男女2人組と目が合い、こちらに歩みを変えてくる。
「ミオ、人が来るから喋るなよ」
弓を背中に背負う2人を視界に納めながら、
下を向いて語り掛ける。
「よお兄ちゃん、隣が空いてるなら俺たちもそこで見ていいか?」
「お好きにどうぞ?僕の場所でもないですし」
「恩にきる………答えたくなかったら良いんだけどよ、その仮面と手に持ってるモノは何なんだ?」
「正直薄気味悪いよ?」
「お、おい!お前は何でいつもそうなんだよ!」
「お兄は人が好過ぎるから代わりに警戒してあげてんでしょ?」
「いやだからって…………」
兄妹なんだ、似てるといえば似てるか。
「顔に傷があるから見せたくないんだよ、手に持ってるモノは僕の体の一部だよ」
「ほぉ?なるほどな」
「顔の傷持ちくらいそこら中にいるし、体の一部とか意味わからなすぎ」
兄の方が呆れながら妹の方を見ているが、妹は眉間に皺を寄せたまま僕を見ていた。
「ただれてるんだよ顔がさ………、この毛玉も妹の形見なんだ」
僕の言葉に気まずそうな顔を見せ顔を逸らす。
「す、すまん、余計な事を聞いた」
「…………ごめんなさい」
誰かに聞かれた時の為にミオと一緒に考えた嘘は思いのほか効くらしい。
首を振る事で気にしてない事を伝える。
少し沈黙が続くが男の方が手を叩き明るい声で仲間を待っているのか聞いてきた。
「いや、僕は1人だけだよ」
「え?!パーティ組んでないのか?」
え?それっておかしいのか?
兄妹揃って驚く顔をするので僕も驚いてしまう。
パーティをまだ組んでいない事にするか?
それとも冒険者じゃない事にするか?
いやいや、一般人がここにいるのもおかしいだろ。
下を向き毛玉を抱きしめる力が増してしまう。
「ちょっとお兄」
「え?あ!すまん!今の質問は忘れてくれ!」
ん?
顔をあげると慌てた顔をした男と兄の肩にグーでパンチをする妹がいた。
「あーっと、そうだ自己紹介をしよう!俺はゼノス、こっちは妹のシェリだ」
「僕は、、」
名前は言ってもいいのか?
う~ん………まぁ大丈夫だろ。
「ガルムって言います」
「ガルム?」
「似てるね」
名前で何かわかるのか?
……やばいな、会話するだけで一苦労なんだが。
「続きの名前は何て言うんだ?俺たちはグリフィスって言うんだ」
「…………えっと、ガルムだけだけど」
「ああ、孤児か奴隷なのか」
バン!!
と言う音と共にゼノスの尻をシェリが蹴り抜く。
「いってぇ!!」
「あんたはデリカシーを勉強しろ!!」
奴隷だった、その言葉にドキリとしてしまう。
名前だけでそんなことまで分かるのか?
ここは危険覚悟で聞いた方がいいよな。
「あの、どうして名前だけでそんな事が分かるんですか?」
兄妹で顔を見合わせ、ゼノスが頭を下げてシェリに手で促す。
ため息をつき一歩前に近づいてくる。
「王国だと貴族は3つ、平民は2つ、奴隷や孤児は1つだけの名前なの」
「へぇ、そうだったんだ?じゃあ嘘ついて偽名作った方が良さそうだね」
またかよ…………。
もう僕の発言全部驚かれてるじゃん。
「僕変なこと言ったの?」
「えっと、それがバレた時は犯罪者になるんだけど…………」
…………だから?
と言いそうになって一旦止める。
なんか兄妹でヒソヒソと耳打ちをしてる姿を見て冷や汗をかく。
「ガルム、お前お金持ってるか?」
「え?いや何もないけど…………」
お手伝いをして稼いだ分はトーマスさんに返してある。
それ以降はお金を貰わず狩の手伝いをしていた。
「宿とかはどうするんだ?」
「外でいいかなって、外壁の下なら雨も防げそうだよね!」
笑顔で僕の名案を言った後。
ゼノスが目元を手で隠し、シェリは悲しそうな顔に変わる。
「えっと、妹が持たせてくれた布団もあるんだけど…………」
さらに悲しみを増した表情に変わり訳が分からなくなる。
兄妹で頷き合い僕をまっすぐ見てくる。
「ガルム俺たちのパーティに入るか?」
「私らが泊ってる宿のお金も出すからさ…」
「ごめんなさい!!」
頭を下げ2人の申し入れを断る。
「「え?」」
「え?」
口をあんぐりと開ける2人と同じ顔になる。
周りでは「やっちまえ!」などの声が聞こえて騒がしくなるが、
僕らの周りだけ静かな空間が出来上がっていた。




