やり残し②
「眼鏡がこれで最後って言ってたよ!」
「眼鏡って、僕以外に誰の名前覚えてるんだよ」
「エリザベスさんとクララだけど?」
「なんでその2人だけ覚えてるんだよ…まぁいいけどさ」
14時ごろに僕ら3人以外は村を出発し、
それからぶっ通しで動き続けようやく終わりが見えて来た。
空は既に暗くなり頭上には巨大な炎が辺りを照らしていた。
「トーマスさん今って何時ですか?!」
「確認してくるからちょっと待ってて!」
距離があるトーマスさんに大声で話しかけ、
家に駆け足で入っていく彼を見送る。
「後はうちがやっておくよ?」
「そうだな~、頼む」
ミオに後は任せ屋根から飛び降り振り返る。
僕が書いた文字を見つめる。
【魔族も認めた偉大なる村長へ、受け入れてくれた恩を一生忘れません】
「ガルム君、もう少しで23時なる時間だったよ」
「ありがとうございます、
後は僕とミオで出来るからトーマスさんはキャンプしてる場所に先に行ってて?」
屋根を見つめたまま伝える。
「ええ分かりました、
ガルム君とミオちゃんがいてくれて良かったよ、お疲れ様」
「いえいえ、トーマスさんがいてくれてよかったです。
途中分からない所が沢山ありましたからね」
「じゃあ私たちで皆に自慢しようね!?」
「ですね!着いたら僕とミオの分を一緒に自慢しててください」
背中からの笑い声と「先に行ってるよ」の声が聞こえ足音が遠ざかる。
振り返りトーマスさんの背中が見えなくなるタイミングで家の反対側に回る。
皆のメッセージも見終わった後、
懐から村長から貰ったメモを見つめそれぞれの家に入る、
――――――――――――
村長の家に荷物を置き、飾られた仮面を付ける。
「ガルム~終わったよ」
村長の家から出たタイミングで上から声が聞こえ隣にミオが着地する。
「お疲れ様」
ミオの頭を撫で僕らの家の中に入る。
「ミオ、持ってく物は本当に何もないのか?」
「うーん、じゃあ毛布だけ持って行こうかな」
「背袋に入る?」
「無理やり入れる!」
2階に駆け上がるミオを見送り、
僕は本棚から数冊本を抜き出す。
汚したりしたらアストレアに殺されそう……。
2階の階段を上り部屋に入る。
毛布を一生懸命に詰め込むミオの横を抜ける。
窓際に置いてある瓶を手に取る。
中には大きな黒い羽根。
それを背袋に入れる。
後は……。
横に立て掛けてある空舞剣を手に取る。
「これは村長の家に置いて行くかな、ミオそろそろ行くぞ?」
「うん!今詰め終わった」
パンパンになった背袋に苦笑しつつ窓の外を見る。
視線の先が少し明るくなり駆け足で家を出る。
村長の家に空舞剣を投げ入れミオと一緒に北の森の方へ走る。
坂を駆け上がり村の見える位置で止まる。
ミオと並んで村を見下ろす。
「ガルム、本当にいいの?」
「いいわけないだろ?嫌に決まってる」
「なら……」
「いいんだよ、これで」
ミオの視線が突き刺さるが村を見続ける。
「ん?」
右手を見るとミオの手が握られていた。
右手に力を込め握り返す。
村に入る皆を2人で見下ろす、
村長の家まで皆が進み村長が屋根を見上げるのを見守る。
「泣いてるよ、笑顔で」
「見えてるよ、ちゃんとね……」
村長を皆で慰める光景を見つめ微笑と共に東へと足を進める。
繋ぐ手に力が籠められる。
「ミオ?」
首を振り笑顔を向けてくる。
「街に行くの楽しみだね!」
「……そうだな、楽しみだ」
戻る事のないモース村に別れと感謝を心で伝えミオと2人街を目指し歩き続ける。
一度も振り返ることなく。




