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始原の裁定者と終結の器  作者: 解放さん
1章 モース村

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やり残し①

黒丸との約束を終えクララを家に戻す。


再び川に戻り、水と魚さんに謝りながら魚を採り、

村に戻る頃には空が白み始めていた。



魚の入ったバケツを広場に置き、そのまま家に戻る。



本棚から何冊か抜き取り、椅子に腰を下ろした。


(知らないままだと、誰かを殺す結果になる)



        ――――――――――――――――――――――――


「お帰りなさい」


声が聞こえ、本から目を離して上を向く。

頭上に火の玉を浮かべながらミオが微笑みを向けていた。


「ただいまミオ、もう体は大丈夫なの?」

「ちょっと体が重いけど大丈夫!」

「ごめんな無理させちゃって」

「うちが好きでやってるの!だから謝らないで!

”半身”に謝る必要なんてないでしょ?」


その言葉に「そうだな」と返して僕も微笑みで返す。

イグニスに感謝を告げ僕の横に戻って貰う。


時計を見ると11時を少し過ぎた頃だった。


「ミオ、今日中に村長の屋根を直そう」

「うん!」


骨組みは昨日で終わってる、後は屋根材を嵌め込めば出来上がる。

トーマスさんは後2日で出来上がるって言ってたけど、

今日か明日には終わらせたい。


家の扉を開けトーマスさんを探す。


エリザベスさんと一緒に木材置き場で作業してるのを見つけ走り寄る。


「2人ともおはよう、トーマスさんちょっといい?」


それぞれが挨拶を返してくれ、トーマスさんが作業を中断して立ち上がる。


「内緒話かな?」

「ここで大丈夫、下での作業がどれだけ残ってるのか聞きたくてさ」


「後2、3時間って所かな」


「上での作業は?」


「ガルム君やミオちゃんがやって明日って所かな」


「今日で終わらせることってできないかな?」


「夜通しやれば終わらせることは出来ると思う………

だけど村長が家にいる間は出来ないし、夜の作業は危ないし」


メッセージ付きの屋根は一気に仕上げなきゃならないしな。


「僕やミオなら問題ないよ、それに明かりなら僕の魔法で何とかできるし」


顎に手を当て考えているトーマスさんを見つめる。


「私を含めた3人であれば可能だと思うよ?分からない部分も出てくると思うからね」

「…………それなら協力してくれませんか?」

「もちろん私は構わないけど、村長はどうするんだい?」

「今日は村の皆で夜通しのキャンプにでも行ってもらうよ、村長には僕から言っておきますよ」



―――――――


トーマスさんからの了解を受け、

僕は村長の家の前で村長と向かい合う。


トーマスさんには村の人たちへの報告を任せてある。


「急で悪いんだけどさ村の皆でキャンプに行ってくれない?」


瞬きを繰り返し驚いていたが真剣な表情に変わる。


「………ガルムの事だ理由があるんじゃろ?」


「村長がしてる事ってまだ終わってないよね?だから余りの分は僕がするよ」


「皆に何も言わずにか?」


村長の言いたいことは分かる、だけどのんびり待ってる余裕はないから。


「1日でも早く街に行きたいんだ………僕のせいにしていいから、だからお願い」


頭を下げる僕の上からため息が聞こえてくる。


「ガルムのせいにはせんよ……分かった皆を連れてキャンプに行ってくる。

残りについてはメモに書いて渡そう」


頭を上げ困り顔の村長に笑いかける。

「ありがとう、トーマスさんは僕達と一緒に残るから」


「トーマスも残るのか?」


首を傾げる村長に、同時に屋根の修理も進めたい事を伝えると納得した様子を見せてくれる。

出発の時間やキャンプをする場所などを聞き村長と別れ。


「あ!そうだ」


まだ聞くことがあったので再び村長の前に戻る。


「村長ごめん!街に行く件で聞いておきたい事があったの忘れてた」

「ん?なんじゃ?」


「ミオを連れて行っても目立ったりしない?」


村長が僕を見つめミオを見つめる。

ミオにはまだ街に行く事を伝えてないので首を傾げ僕を見つめていた。


「目立つじゃろうな、そもそも仮面を付けるガルムも目立つんじゃが……」


そりゃそうか、

外の常識が分からないと本当に不便だな。


「まぁ仮面を付ける人間は一定数いるが、尻尾が6本の亜人は珍しいと思われるじゃろうな、

最悪目を付けられる」


「亜人じゃないし………………」

ミオの小声を無視しつつ考え込む。


正直村に残すか連れて行くかで答えが出ていない………。


村に残しておけば安心できる、その代わり僕の方が安心できなくなる。

その逆も然りだ。


「ガルム!尻尾隠せるよ!」


ミオの体が光に包まれ狐の姿に変わりーー


最終的に出来上がった()()を見つめる。


「これで目立たないよ!」


毛玉の中心からくぐもった声を聞き毛玉を持ち上げ村長と向き合う。


「これで……目立たない?」


大きめの毛玉を両手で抱え村長を見る。


村長が家の中に入り戻って来た手には仮面が握られ、無言で僕の顔に被せる。


「どう?」


頭をかいて困った様に笑う。


「なんて言うか、ガルムの注目度が増しておるな」


まぁ僕だけに視線が集まる分にはいいか。


「ミオはずっとこの状態で苦しくはないのか?」

「苦しくないよ?尻尾に包まれてるだけだし」


なら長時間でも大丈夫か。


はぁ


どっちを取ればいいんだよ…………。


「ガルム、ミオちゃんも一緒に街へ連れて行こう」


立ち尽くす僕に村長からの後押しを貰うが、答える事は当然できない。


「いや、でも……」

「もし村に何かあれば”これで”ガルムに合図する、

その時に全力で駆けつけてきてほしい」


村長が懐から細長い物を取り出し、手の平に置いて見せてくる。


「なにこれ?」

「王国で使う信号筒じゃの」


確かにあの音なら街にいても届くな。


「………ん?なんで村長がそんなの持ってるの?」

「商人時代の名残じゃよ、軍にも卸しておったからの、

これで少しは安心できるじゃろ?」


少し考え、頷きで村長に答える。


「分かった、街に行くのは村長の屋根を直した翌日って事で、

東の方に物見櫓が立ってるからさ、そこが集合場所ね」


「一緒に村から行かんのか?」


「見張りが優先だからさ」


仮面を村長に返しミオを地面に転がす。


「村長、1週間で僕らが戻って来なかったら……皆をよろしくね?」


それだけ言い残し、屋根の上に飛び乗る。


「ミオ!材料持ってきてくれ!」


地面に転がる毛玉に叫ぶと少女の姿に変わり、頷いてトーマスさんの元へ走っていく。


村を見回していると、子供達が集まり僕を見上げていたが背中を向け移動する。


「ガルムお兄ちゃん!」

「ガルムさん!」


声が背中に刺さる。

それでも振り返らなかった。



(料理を教わるって約束だけは叶えられそうにないな………)



ミオが尻尾を伸ばし木材を渡してくれ、作業を始める。



後悔はない。

――そう思い込むことにした。



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