孤独②
クララが動きを止め、始まりと同じように一礼を僕に向ける。
僕だけに送られた舞に大きな拍手で感謝を伝える。
(ありがとうクララ)
拍手が鳴り止むまで頭を下げ続けたクララがこちらへと戻ってくる。
「クララにはこれくらいしか出来ないから………」
「これくらいなんて言うなよ、おかげで心が軽くなった」
「本当?」
「ああ!本当だよ」
クララに笑顔で答えるとクララも安心した表情に変わっていく。
「ガルムお兄ちゃん」
「なに?」
ん?
沈黙が訪れ左を向く。
クララがこちらをまっすぐに見つめ、
口を開きーー
閉じられる。
クララが顔を逸らし川面の方へ視線を移した瞬間に言葉が紡がれる。
「どこにも行ったりしないよね?」
その言葉に息を飲んでしまう。
この静寂がなければ聞こえないほど微かな息づかい。
「少し街に行く事になったんだ、だから少しこの村を離れるかな!
長くても1週間くらいで帰って来るよ」
「本当に帰って来るの!?」
「ああ、ちゃんと帰って来るよ」
クララの顔を見ないまま頭を撫でる、
今顔を見せれば伝わってしまう。
………
「クララはどうして眠れないんだ?」
「え?」
「えっと………今日起きたことがーー」
「俺様と契約してる影響だろうよ」
「ちょっと!!」
黒丸がこちらを向きながら話しかけ、
その内容にクララの方に目線をやると困った様に顔をしかめる。
「黒丸どういうことだ?」
「寝てる間は抵抗力が弱まるからな、その影響で俺様の感情が流れ込むんだよ。
人が憎い、殺したいって言う感情がな。
ッハ!
この子娘が自分の親をーー」
「うるさい黙って!!!」
クララの大声にヘビの言葉が止まる。
黒丸の口が縫い付けられたように動き、クララを睨みつけていた。
「クララ………」
「アハハ……大丈夫だから。
……大丈夫、だから」
(精神を蝕むってそう言う事だったのか………)
「どれだけ寝てないんだ?」
「何言ってるの?ちゃんと寝れてるよ?今日はたまたまで………」
「黒丸と話しをさせてくれないか?」
「………それはダメ」
首を横に振り、スカートを強く握りしめる。
「黒丸が余計な事言いそうになったら止めていいから、だから頼む」
「………黒丸喋っていいよ」
「人間が俺様に命令しやがって虫唾がーー」
「黒丸そう言うのはいいから僕の質問にだけ答えてくれ」
言葉を止め僕を見つめる。
その瞳が細められるが何かをいう事はなかった。
「クララにその感情を送るの辞めてくれ」
「無理だな、俺様自身好きで送ってるわけじゃない」
「え?嫌がらせじゃなかったの?」
クララの驚く声が聞こえてくる。
だけど僕の顔はさらに険しくなっていく。
黒丸がいう事が本当なら強制的に流れてしまうという事だ。
(対処のしようがないじゃないか………)
「………黒丸との契約を解除したほうがいいんじゃないか?」
「………嫌だな」
「………それは」
「どうしてだよ?お互いにその方がーー」
「俺様は死にたいわけじゃない」
死ぬ?
その言葉にクララを見る。
「………強制契約の弊害なんだって、お姉ちゃんが言ってました………お互いが死ぬ事になるって」
「は!?」
あいつそれを分かってて!
いや、あの状況なら仕方がなかったのか?
クソ!
アストレアがいないと何もわからねぇ………。
「お兄ちゃんといる時だけは、いつも通りでいられるんだよね…………だから、」
その言葉にクララがさっき言った言葉が繋がる。
どうして次から次に………。
(これが呪いって事なのかよ?)
大きく息を吐き、黒丸に目を向ける。
「黒丸、どうすればお前の人間への恨みを無くせるんだ?」
「人間種がいなくなればだな」
「全員が悪い奴じゃない事も分かってるはずだろ!?良い人間種だってたくさんいる!」
「………たとえいたとしても、俺様が1人1人に向き合うはずがないだろ?そんな面倒な事をな」
「その子とも心が繋がってるんだろ?その娘は良い人間じゃないのかよ?」
「………………悪い人間ではないな、今のところはな」
「どうしてお兄ちゃんがいう事にはちゃんと答えるの!?」
その言葉にそっぽを向く黒丸の首をクララが掴み、ガクガクと揺らしている。
「ねぇ!どうしてなの~!」
「クララ」
「ん?」
クララが動きを止めこちらに向き直る。
「黒丸の人間への恨みをどうにかしないとクララの悩みは消えないと思う………
そしてそれが出来るのはクララ自身でしかないとも思ってる」
「………うん、分かってる、クララが黒丸の恨みを消して見せるから!」
「悪い………力になれなくて」
歯を食いしばり下を向く僕の手の平にクララの右手が重なる。
「ガルムお兄ちゃんはいてくれるだけで助けになってるよ?
お兄ちゃんには知られちゃったし、また相談してもいいよね?」
「ああ、もちろんだ!
もう村に帰ろう?いないのがバレたら騒ぎになっちゃうからな」
「うん!!」
クララの笑顔の裏にどれほどの辛さがあるのか僕には分からない、
これも僕のせいなのだろうか………。
(何処まで逃げられないんだよ………)
クララと手を繋ぎ笑顔で話しながら村へと戻る。
クララの笑顔が、少しだけ怖かった。
明るい話が書きたいよ~~~(泣)




