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始原の裁定者と終結の器  作者: 解放さん
1章 モース村

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撃退④

その後お風呂に入り、今は村長の家の中で向かい合って今日起きたことを簡潔に話し終える。


「そうか………やはり来てしまうか」

椅子に体を預け、家から見える夜空を仰ぎ見ている。


「村長や村の皆は死にたいわけじゃないんだよね?」

「ん?当たり前じゃろ?むしろ誰よりも自由に行きたいと願う奴らばかりじゃろうて」

顔をこちらに向け怪訝そうな顔を見せるが構わず言葉を続ける。


「ならどうして逃げたり隠れたりしないの?

村長ならこう言う事が起きるって分かってたんじゃないの?」


他の皆はどうなのか知らない、だけど村長は何か気付いてる様子を見せていたし、

アストレアから逃げろとも言われている。


なのに――


歯を食いしばり落ち着くように心に言い聞かせる。


「ガルムの言う通り儂も襲撃がある可能性は考えていた」

「ならなんで!ーー」


村長の顔を見て言葉を止めてしまう。

微笑と困惑を混ぜたような、泣きそうなその顔の意味が僕には分からない。


「そうじゃの………アストレアちゃんがいなければわしらは遊牧民の様な生活をしていたかもしれん、

別の国を目指してそこにたどり着いていたかもしれん。………いや、それも違うの。

ガルム、十年目の宴の時に儂が言った事を覚えておるか?」



「えっと、生きてることが奇跡だって、それと、わしらの命がいつ奪われようとも覚悟はしていただろって言ってたね」


「そうじゃ、初めてこの地に来た時から、儂と妻はここを死に場所と決めておるんじゃよ。

今は皆が集まり村長として村の皆を一番に考えておるが………儂がここを離れる事はない。」


「村長の覚悟は分かるよ!?だけどそれは『諦めてる』だけじゃん!」


生かしたいと思う人が、いつ死んでもいいと思ってる事に腹が立つ。

全てを捨てて守ろうとしているのに、

それじゃあ僕がしようとしてる事すら……無駄になる。


だけどそれは僕の我儘なのも分かってる。


「ガルムと儂は似た考えだと思っておる。似て非なるものではあるがの」

「どういう事?」


瞬時に理解できず顔をしかめる僕に微笑ながら話してくれる。


「いつ死ぬかもしれない村の皆に、1日でも多く笑っていて欲しい、襲撃があるかもしれないと伝えれば皆の顔が曇るのは明らかであろう?ガルムはどうじゃ、どうして村の皆に何も言わないんじゃ?」


確かに似てる部分はある。

村長の話に合わせるように話す。


「村の皆がいつも通り笑顔で生活が送れるように、

僕が今してることを知れば皆の顔が曇っちゃうから、かな」


「ガルムの言う通り諦めじゃ……でもな、もう抗う段階は過ぎとるんじゃよ」



………これ以上会話をしてても平行線だろう。

この村を捨ててでも逃げて欲しかった、

だけど無理そうだな。



「この村から離れる事はないって事で良いんだよね?」

「………そうじゃ、少なくとも儂はな」


村長から目線を逸らし、すぐに戻す。


「分かった、それとは別のお願いがあるんだ」

「なんじゃ?」

「しばらくしたら、街に行きたい。街に入る方法を教えて」

「………どうしてじゃ?」

「このまま待ってるだけじゃ守れない……

中から襲撃の情報が分かればもっと早く対応できる」


(黒幕が誰か分かれば、そいつを殺せばいいだけだ)



どれくらい沈黙が続いただろう。

目を瞑る村長を見ていたが一向に動くことはない。


ガタ!


僕が椅子を立ち上がろうとしたら村長が先に立ち上がり、

後ろの棚に向かい何かを手に持ち戻ってくる。


「魔族とばれないようにな?それとこれを持って商工会の人間に見せるんじゃ、力になってくれる。

手紙も書いておこう、念のためにな」


村長の名前が書かれた金属のエンブレムを渡される。

エンブレムに彫られているものを見つめる。

羽の生えた女性が目を閉じ天秤を掲げている。


村長が椅子に手を付きテーブルの1点を見つめて動かない。


「僕なら大丈夫だから」


その言葉にゆっくりと顔を上げぎこちない笑顔を見えてくる。


「…街に行くときは儂が一緒に行く、儂がいないと入る事は出来んからな」

「………ありがとう、村長」


「ちゃんと戻ってくるんじゃぞ?ガルムも儂の村の一員なんじゃからな?

ヘンリーが言った事は深く考えんでいい」


それに答える事はせず玄関の扉を開け外に出る。



自分の家に戻り、ミオが眠る部屋へと入る。


(今日は寝よう)


ミオの隣に寝転び目を閉じる。



【気味が悪ぃな、近づくんじゃねぇよ!!】

【邪魔だよどけや!!】

【あんたに飯は与えるなって言われてるんだよ、目を付けられるのはごめんだよ】



「………はぁ」


目を開け天井を見つめる。

辛い過去が一気に思い出され最悪な気分が抜けてくれない。


もし今の僕があいつらに会ったらどうするんだろう、

もし奴隷の時と同じように接してきたとき………。



殺せるから殺す、

……それはあいつらと同じになるって事じゃないのか?


それだけは………絶対に嫌だ。


今日の出来事が頭を駆け巡る。


ウィリアムさんの考え――


エリザベスさんの考え――


村長の考え――


そして僕の考え。



眠る事も出来ぬまま、それを夜明けまで考え続ける。













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