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始原の裁定者と終結の器  作者: 解放さん
1章 モース村

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撃退②

「本当にすまん!」

「気にしないでください。少し走りづらい程度ですから」


背中のウィリアムさんに、笑って返す。

力の入らなくなった彼を、おんぶして運んでいた。


……にしても、運びづらいな。


腕にも手にも力が入っていないせいで、体がぐらぐらする。

落とさないよう支えるだけでも一苦労だ。


このまま黙って歩くのも妙に気まずくて、僕は前を見たまま口を開いた。


「……そんなに強い相手だったんですか?」

少しの沈黙のあと、背中越しに低い声が返ってくる。


「…………俺と同じくらいの力量の奴だよ」

やっぱり、ミオが言ってた奴で間違いなさそうだ。


ウィリアムさんに付いてきてもらって正解だった。

僕一人だったら――死んでいたかもしれない。


「俺がこうなってるのは、開脈を使ったからなんだ」

「開脈? 何それ?」

「まだアストレアさんに教わってなかったか。武極に至るまでの、第一段階だよ」


武極。


(ウィリアムさんも使えたんだ………。)


「どうすればその第一段階に行けるんですか!?」


強くなれる方法を知りたくて振り返り尋ねる、ウィリアムさんは少し困ったように唸った。


「えっと……体を死ぬ気で鍛えてたら、なんかこう、体が熱くなってきてな。その状態になると、動きがすごく速くなるんだ」


「……………………」


……この人の説明に期待した僕が悪かった。


「す、すまん! 自分でも、どうして出来るようになったのか、うまく分からないんだよ」


「いや、大丈夫です! 死ぬ気で鍛えるってことは分かりました!」


そう返しながらも、心の中では少しだけ肩を落とす。


本当なら、その状態のウィリアムさんと訓練してみたかった。

でも……もうウィリアムさんやヘンリーとの訓練は、ちょっと怖い。


そんなことを考えているうちに、村の近くまで戻ってきていた。


足を止め、少しだけ後ろを振り返る。


「もう村に着きますけど、このまま行きます? それとも降りて、肩貸して行きますか?」

「そう、だな……肩を貸してもらっていいか?」

「分かりました。降ろしますよ」


ゆっくり地面に足を着けさせると、ウィリアムさんの足は情けないくらいに震えていた。


子供におぶわれたまま村に入るのは恥ずかしいだろうしな。


肩に腕を回させ、そのまま引きずるように歩く。

直ぐに村の入口が見えてきた。


「手前で降ろして正解でしたね?」

「ほんとにな、なんで子供達を寝かしておかないんだよ…………」


村の入り口に待つのは村長だけだが広場には皆が集まっていた。

まだ村長だけしかこちらに気づいてない。


(あれ?ミオとエリザベスさんはいないな)


こちらに気付いたアンナさんとヘンリーが駆け寄ってくる。

広場に集まる皆もゆっくりとこちらへと集まって来る。


「あなた!!」

「父ちゃん!!」


心配に顔を歪める2人をみて申し訳なく思う。


「俺は大丈夫だ、少し無茶しすぎただけだから」


アンナさんが反対側に周り肩に腕を回す。


「ガルム君ありがとう!あとは私が家まで送るから大丈夫」

「うん、ゆっくり休んでね?」

「ああ、ありがとうガルム」


遅い足取りで家まで進む2人の背中を見つめる。


「ほれ、ヘンリーも早く家に帰るんじゃ」

「…………」


村長の言葉を無視して僕の方まで近づいてくる。


「ガルムは何をしてるの?」

「…………言っただろ?訓練をーー」


「嘘つくなよ!!」


ヘンリーの大声が耳に残る。


(まぁ、そうなるよな。)


僕の体に付いた血を見てそんな嘘は無理がある。

ミオの状態とウィリアムさんの状態を見たのなら尚更……だよな。


だけどーー


「ヘンリーには関係がない事だよ」



関わらせたくない、何も知らずに平和な村の日常を過ごしてほしい。


なぁ、アストレア。


教えてくれよーー


どうすればーー


()()()()をさせずに済むんだよ。



ヘンリーから逃げるように横を通り抜ける。



「ガルム話がーー」

「ガルムのせいじゃないのかよ!!」


村長が僕を呼び止める声と、

ヘンリーのその言葉が重なり足が止まる。


「父ちゃんがボロボロになってるのも!!王国の奴らがこの村に来たのも!!」


僕は今どんな顔をしてるんだろう?


村の人達が視界に映るーー


顔を背ける人ーー


悔しそうにする人ーー


心配そうに見つめる人ーー



皆にこんな表情をさせてるのは僕なんだ…………。


(ならどうすればよかったんだよ……あいつらを見逃せばよかったのかよ……)


「ヘンリー君…………ガルム君はーー」

「言わないでエドワードさん!!」

「で、でも」

「…………いいんです」


エドワードさんが下を向き、僕は村長に顔を向ける。


「先に……ミオの所に行ってもいい?」

「うむ、ガルムの部屋で休んでおるよ。

風呂も沸かすから体も綺麗にしておいで?」

「ありがとう、少しだけ待ってて」


歩き出し家に向けて歩き出す。


「無視してんじゃねぇーよ!!」


足を止めヘンリーの方へ体を向ける。

何かを言おうとする村長やエドワードさんに手で制する。


「その原因が僕だとして、お前はどうして欲しいんだよ?」

「ッ!この村から出てけよ!ガルムがいなくなればこの村も平和になるよ!!」


ヘンリーとの間合いを一瞬で詰める。


ヘンリーに振り下ろされる拳ーー


それを()()()ーー



「早くエドワードさんを家に帰して!!」

「いい加減にしろよガキ!!」


ヘンリーに掴みかかろうと暴れるエドワードさんを止め、後ろの大人たちに叫ぶ。


村人総出で連れていかれる姿を見つめ、

尻もちを付くヘンリーに向き直る。


「ヘンリーの言う通りだよ、お前は何も間違ってない、…………全部僕のせいでこうなってる。

アストレアが帰るまではする事があるからさ…………それまではいさせてもらう。

アストレアが戻ってきたら…………この村から出ていくよ」


その言葉を残しヘンリーから離れ家に向かう。


「お兄ちゃん……」

「ガルムさん……」


「…………大丈夫だ!仲直りしていつも通り!」


笑顔を見せ頭を撫でようと手を伸ばし、

血に濡れた自分の手を見て引っ込める。


「…………アストレアが帰って来たらさ、また皆で笑いあえるようになるから、

お前らは笑顔でいてくれ!ガルムお兄ちゃんのお願いだ!」


クララが首を振り、ラインも唇を嚙みしめる。



「お兄ちゃんが笑顔じゃないと、笑えないよ…………」


(ごめんクララ、今は無理そうだわ)


「ごめんもう行くわ、ヘンリーの事守ってやれよ?それはお前らのする事だ」


足早にその場を離れ家入り、

扉に背中を預けそのまま座り込む。


「僕は守った、守れたんだ…………皆を…………それだけで、十分だろ。」


床に黒いシミが増えていく。


泣きたくないのに涙が止まってくれない。


なんで僕は人じゃないんだよ…………。





































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