魔族(ウィリアム)
鞘を投げ捨て、
駆け出す。
ガキィンッ!!
刃と刃がぶつかり火花を散らす。
フードに顔が隠れ食いしばった歯だけが目に映る。
一瞬の静寂はお互いが剣を押し返すことで”始まる”
こちらのゆっくりとした剣の動きに合わせるように相手も同じ速度で刃を打ち合わせる。
その動きは徐々に速度を上げていき、何度刃を交えたか分からない。
「てめぇのその癖は相変わらずのようだな?」
「ーー!!!グレース…………貴様か!!!」
声を聞き一瞬で昔の記憶が駆け巡る。
「生きてるって信じてたぜ!!アルフレッド!!」
体の熱を強制的に上げ、
振り下ろす剣の速度をさらに上げていく。
疑念は確信へと変わり。
様子見からーー
殺意へと瞬間的に切り替える。
(この男は…………この男だけは!!)
「殺す!!」
「いい顔するようになったじゃねぇーか!!俺も同じ気持ちだよ!!」
お互いが既に剣の軌道など見ていない、お互いの顔を睨みつけ、
体が動くままに腕を動かしている。
「うおおおおおおおおおおおお!!!!!」
「死ねやああああああああああ!!!!!」
コイツ!
俺の速度に対応してきている?
違う、徐々にスピードを上げている
(こいつも、俺と同じ………)
「驚いたか?俺も使えるぜ?開脈をよ!!」
グレースの体の周りの熱が肌を焼く。
お互いの呼吸が浅くなっていく。
背中の古傷がズキリ!と痛み、グレースの右腕に見える俺が付けた傷痕が目に映る。
あの時、血を浴びて笑っていたこいつのーー
「がああああああああ!!!」
速度をさらに上げグレースの剣より早く首に俺の刃が届きーー
ーー逃げられる。
「はぁはぁはぁはぁ」
「はぁはぁ、っくそ…………」
後方に離れたグレースが首に手を当て手の平の血を見る。
「瞬歩も……使えるのか………」
沈黙だけが俺たちを包み込む。
(長く保てないのはお互い同じのようだな)
荒い息と上下する肩は限界が近い事を教えてくれる。
その瞬間ーー
絶叫がガルムの方から聞こえてきて素早くそちらを見るーー
(何を、してるんだ…………)
ガルムが這いつくばる男の両足を踏み抜いたのを見て理解が遅れる。
殺すのではなく傷みつけるだけの行為を見て背筋が震える。
(俺は本当にガルムより強いのか?)
ガルムの姿を見て本能的な恐怖を感じる。
体の震えはその答えを表してるようにも感じた。
横目で見るグレースも顔を引きつらせる。
ガルムがこちらに歩き出しーー
グレースが森へ駆けるのは同時だった。
「逃がさん!!」
森へ逃げる背中を瞬間的に追いかける。
森へ入る瞬間もう一度ガルムを見るーー
足を大きく上げるのを見て、顔を前に戻す。
絶叫がまた響き渡る。
喉が鳴る。
ガルムは他の魔族と違う…………。
分かっている、そんな事は。
俺たちを守るためにあいつは頑張っているだけだ!!
理解してなお、恐怖は消えてはくれなかった。




