宿敵②
ーー間に合わない!!
「ごめん!」
「グア!」
僕の蹴りがウィリアムさんを捕え左へと吹き飛ぶ。
先ほどウィリアムさんがいた場所に剣が突き刺さり目の前の男と目が合う。
血走った目、歯茎が見えるほど噛みしめる歯。
「お前らはこのガキを始末しろ!!俺はーー」
「待て!」
目の前の男がウィリアムさん目掛けて走る。
「舐めんじゃねぇ!」
そいつの背中目掛けて拳を振り下ろす。
「ッ!」
瞬時に腕を引っ込める。
僕の腕があった場所に2本の剣が通り過ぎるのを見て冷や汗をかく。
追いかけていた男がウィリアムさんへと走り去るのを見送るしかなくなる。
(2人、こいつらさっきの…………)
目の前の男2人を交互に見る。
「こ、こいつ………、魔族じゃねぇかよ!!聞いてねぇぞ、おい!」
「関係ねぇ!!さっきの狐はどこ行った!?あいつだけは許さねぇ!!」
「俺は降りるぞ!!死にたくねぇ!」
「勝手にしろよ!ギャアギャア騒ぎやがて、魔族でもガキじゃねぇかよ!お前がガキにビビッて仕事を放棄したって伝えまわってやるよ」
「てめぇも女殺されたくらいでぴいぴい泣き喚いてたじゃねぇか!」
何なんだこいつらは?仲間同士で喧嘩し始めやがった。
「お前らの目的は何なんだよ?」
僕の声に2人の言い争う言葉が止まる。
「…………逃げたきゃ逃げろよ弱虫野郎」
「…………やってやるよ、魔族なんて、怖くなんてねぇ!」
答えるわけもないよな………。
「はぁ……」
腰の剣を抜き放ち2人を見つめーー
駆け出す。
――――――――――――
「ハハハハハ!!コイツ弱ぇぞ!」
「ビビらせやがって!力だけが強いだけじゃねぇかよ!」
「くそ!」
やっぱりだめだ…………。
2人がかりの剣の嵐に防戦一方になる。
「オラオラオラァ!」
「魔族が強いって噂は嘘だったんだな!!俺も戦争に参加してればよかったぜ」
笑いながら剣を振り、軽口を叩く男たちを見つめる。
2人の剣が同時に襲い来る瞬間を狙って力強くはじき返し、距離を取る。
離れた男たちがにやけ顔で僕を見つめ様子を伺っている。
「追撃してこないの?」
「追撃ぃ?しねぇよそんな事、
魔族のお前が絶望する顔をもっと眺めていたいからな?
ギャハハハ」
「そうだな~…………お前があの狐の居場所を教えてくれたら見逃してやってもいいぞ?」
「教えたら見逃してくれるの?」
2人が視線を絡ませ僕に向かって笑顔で頷く。
「もちろんだ、なんならお前も仲間に入れてやるよ?
魔族の仲間なんて俺に箔が付くからな」
「俺もあのペットの狐を差し出すなら仲間に入れてやるぞ?
毛皮を剥いでお前にプレゼントしてやるよ」
「おいおい、仲間になるかもしれない奴にそんなひどい事するなよ」
「…………お前はホントにバカクソ野郎だな、仲間にする訳ねぇだろ」
「は?!俺は本気だぜ?魔族を従えたら舐められる事もなくなるぜ?!」
「まぁ…………それは確かにな、よし!今のは嘘だそんなことしねぇから安心しろ!」
2人の会話を聞き剣を鞘に納める。
「お!降参するか?いいぜ、迎え入れてやるよ」
「あの狐の場所は教えろよ?
あいつを鍋にして食ったら仲間として迎え入れてやるよ」
「おいおい、毛皮を剥ぐより悪化してんじゃねぇかよ」
「うるせぇ!俺の女を殺したあいつを許せる訳ねぇだろうが!!」
下を向き男たちの方へと歩き出す。
こんな奴らにも勝てないのか…………。
(やれると思ったんだけどな、諦めるしかないか)
2人の男の前にまでたどり着く。
攻撃すらしてこない、舐めているのか、余裕だと思われてるのか、
いや、両方だな。
「おじさん達勘違いしてない?」
「勘違い~?」
顔を上げ2人を見上げる。
「ッ!気味の悪い目しやがって」
「その無表情どうにかなんねぇか?うっかり殺しちまいそうだぜ」
「あんたら程度でミオが殺されるわけないだろ、それにーー
僕にすら勝てないよ、お前らじゃ」
はぁ。
(剣を使って勝ちたかったんだけどな………僕の相棒が力に耐えられないからな)
「あははは!態度だけは立派だな」
「そうかい、なら死ねよ!!」
左の男が笑い右の男が剣を振り下ろす。
バキィィン!!
「え?」
「は?」
目を見開く男たちが砕かれた剣を見つめ、僕を見る。
笑っていた顔からーー
恐怖に引きつる顔へーー
その表情の変化が面白いと感じる。
【イグニス左の男を焼いてくれ】
心で魔法に呼びかける。
「ギャアアアアアア!!熱い!!助けて!!」
「っひ!!」
左の男の周りから炎が出現し男を飲み込む。
「殺さないでね?」
【僕が殺すから】
「うわああああ!!」
ゴキッ!!
「ぐあああああ!!」
逃げ出そうとした男の右膝に前蹴りを叩き込む。
関節がありえない方向に曲がり右膝を抱え、倒れ込む男を見下ろす。
「ねぇ?お前なんて言ったの?」
2人の絶叫が響き渡る。
【イグニス足だけ燃やしといて】
左の男の全身を覆っていた炎が足だけに纏うのを確認して、倒れてる男に視線を戻しーー
左足を踏み潰し。
右足を踏み潰す。
聞いたことのない絶叫が辺りに響き渡り遠くで聞こえていた剣が打ち合う音も消える。
両足を燃やされ倒れ込む男の前にしゃがみ込む
目は開かないのか閉じられ、ヒューヒューと言う呼吸音だけが耳に届く。
「僕の声は聞こえる?」
声に反応して手を前にバタバタと振る。
聞こえてるみたいだな、よかった。
「魔族の事…………
死ぬ前に、分かるといいね?」
それだけ言い残しまた這いずって逃げようとする男に向かう。
「ひいいいいいい!!ごめんなさい!!ごめんなさい!!許してください!!」
這いずる男の横に立つと頭を両手で抱え込み許しを請う。
「目的を言えば見逃してあげるよ」
「し、知らないんだ、本当だ!本当に知らないんだよ!!
あいつ!あいつに俺たちは雇われただけなんだよ!!」
指を差しウィリアムさんと戦っていた男の方へ顔を向けると、
ウィリアムさんとマント男が動きを止めこちらを見ていた。
地面に倒れる2人を見て、マントの男の方に視線を戻し歩き出した瞬間ーー
黒いマントを翻し森の中へ走り去り、
その後ろをウィリアムさんが追いかけて行く光景を見つめる。
「…………任せとけばいいか、」
「もう知ってることは何もないんです!お願いです!助けてください!」
「お前を生かさせばミオに危険が及ぶかもしれないだろ?生かすわけないだろ」
「しません!もうあなたたちに関わりませんから!!」
(うるさいな………)
グシャ!
「ぎゃああああああ!!!」
右の太ももを踏み潰す。
簡単には殺さない、最大限傷めつけてから殺す。
じゃないと…………
僕の中の感情が暴れだしてしまいそうだったから。
風が吹く。
嗅いだことの無い香りにそちらを振り向く。
鎧だ。
馬に乗った5人組がこちらに駆けてくるのが見える。
「なぁ、なんでそんな安心した顔してんの?」
「え?い、いや…………」
…………
今度は――左の太ももを踏み抜いた。
絶叫。
関係ないんだよ、誰が来ようと。
――ダッ、ダッ、ダッ。
規則正しい馬蹄の音が、地を叩きながら迫ってくる。
「やめなさい!!あなた何をしているの!!」
「…………こりゃあひでぇな」
こちらと距離を開け女性の叫ぶ声と男性の声が聞こえる。
「た、助けてください!!殺される!!早くコイツーー」
グシャっという音と頭蓋骨を砕く音が辺りに響く。
「な、何をしているんだお前は!!」
若い女性の叫びと馬が駆け出す音を聞くがそちらを見ずもう一人の男に近づき。
「あんたの答えを聞きたかったんだけどな」
同じように頭を踏み潰す。
「ーー!!貴様ああああああ!!!」
うるさいな。
槍を持ち、遠くからこちらに突進してくる女を睨みつける。
馬が足を上げ、
足を止める。
進まない。
「……っ、なんで……」
女の手綱が震えていた。
(ウィリアムさんは大丈夫かな…………)
鎧を着た奴らを無視して森の方へと駆け出す。
「お、おい!逃げるな!!
な、なんで動いてくれないの!?」
「ルクシア!!戻れ!!」
「しかし隊長!!あいつが原因かもしれないんですよ!?」
「いいから戻れ!」
後ろのその声を聞きながら森へ向け速度を上げる。
「無事でいてくれ!」




