宿敵①
「ウィリアムさん、村にもあの甲高い音って聞こえてたんだよね?」
「ああ、あれが聞こえたから急いで様子を見に来たんだ」
隣り合わせで走るウィリアムさんを見上げ問いかける。
「前にもあったよね?あれって何なの?」
「………王国軍が使う、非常招集用の信号筒だ」
やっぱりあれが原因だったのか…………引く判断をしたのは正しかったんだな、
仕留め切れてればこんな事にもなってないんだけどな。
反省をしてる場合ではないのは分かってるけど、どうしても考えてしまう。
「ガルム俺からも聞かせろ、王国の奴らと戦ったのか?」
「今の話の流れだとそうだと思う、
黒いマントを頭まで羽織ってたから詳しくは分からないけど…………」
言葉が帰って来ないので横を見ると険しい表情でこちらを見ていた。
「やっぱりヤバいよね…………」
「違う……いやヤバいのはそうなんだが、
俺が考えているのは別の事だ、
さっき言った非常招集用の信号筒は限られた人間しか持てない物なんだよ」
「限られた人間?」
「ああ、貴族や隊長が持つ物なんだ………だからこそ違和感がある」
違和感?ウィリアムさんの言葉の意味が分からない。
「僕とミオが襲ったのが貴族や隊長だったから、村が危険になるって話?」
よく分からない中で、思いついた答えを問いかけるが首を振られ否定される。
「貴族であれば、黒いマントなんてものは絶対に被らない、
そして隊長であればお前たちが無傷でいられるとも思わない。
俺の違和感はそこなんだ…………」
詳しく聞きたいけど今は呑気にそんな会話をしてる状況でもない。
「ごめん………僕らが3人取り逃がさなかったらこんな状況には………」
「3人取り逃がす?何人いたんだ?」
「16人だったけど?」
「…………13人はどうしたんだ?」
「殺したけど?」
「…………」
何でこんな質問をするんだ?
意味のある事だとは思えない、
どうして殺したんだとでも言うつもりだろうか?
だとしたらーー
「僕は間違った事をしたとは思ってないよ?」
「ミオが13人殺したのか?」
「………僕が5人でミオが8人、、」
僕を馬鹿にしてるのだろうかこの人は?
その質問は⦅弱いお前には殺せるわけがない》と言われてるようにも感じる。
声に怒りが混じのを抑える事が出来なかった。
「聞かせろガルム、なんでさっき俺の攻撃を避けなかった?
避けられたのに動かなかっただろ」
その確信をもった言葉を聞き、どう答えればいいか分からなかった。
僕自身にもその理由が分からなかったから。
ウィリアムさんの言う通り反応は出来たし、
避けようと思えば避けられた。
少し考え、一番しっくりくる答えを見つける。
「殺気が、なかったから」
「…………なぁ、俺と初めて一緒に稽古した時ガルムは手を抜いていたか?」
「え?いや全力でやってたけど?手を抜いたことなんて一度もない」
僕の言葉に苦笑いを浮かべ乾いた笑い声が聞こえてくる。
さっきから何なんだろうか?
何が言いたいかもわからないし、
質問される言葉には僕を見下すようなものを感じてしまう。
「勘違いしないでくれ、ガルムを馬鹿にしてるわけでも、貶してるわけでもない」
「え?」
心を見抜かれたようなその言葉に驚いてしまう。
「気づいてないのか?自分の異常なまでの”成長スピード”に?」
「え、っと、強くなってるとは思ってるけど、そんな大袈裟な………」
「ガルムはまだ12~14くらいだと思ってる、そんなお前が大人を5人も殺せることが異常なんだ」
…………それはーー
「僕が魔族だから、それしか理由なんてないでしょ?」
僕が魔族なのは分かってる、だけどその言葉を自分の口で言うのが嫌だった。
「そうだとしてもだ、この村に来たときのガルムにそこまでの強さなんてなかった」
そんな事を言われても、なんて言えばいいのか分からない。
「えっと、ごめん、結局ウィリアムさんは何が言いたいの?」
「え、ああ、すまんーー」
何かを言おうとしたウィリアムさんに目を向けていたが、
奥の森で光がちらつくのが見え、背筋が凍るのを感じた瞬間。
殺気ーー
目を見開く僕を見てウィリアムさんも左を向く前に叫ぶ。
「伏せて!!ウィリアムさん!!」
僕の声に素早くしゃがむウィリアムさんの頭上に剣が薙ぎ払われる。
空気が裂ける音が遅れて耳に届く。
切り返された刃が再びウィリアムさん目掛けて襲い掛かるーー




