ミオの強さ⑥
木々の間に身を沈め、息を殺す。
湿った土の匂い。
そこに、煙がじわりと混ざる。
「うぅ……尻尾に臭いがぁ……」
「言っただろ、これしかないんだ我慢してくれ」
ミオの六本の尾が、地面を抉っている。
突き立てられた尾が円を描き、
隙間なく囲いを作る。
その内側で、くすぶる木材の煙が静かに溜まっていく。
「……来るぞ」
耳が捉える。
遠く、地を叩く音。
最初は微かに聞こえた音、
だが、次の瞬間。
地面が震えた。
「今だ!」
ミオの尾が唸る。
叩きつけるように振るわれた瞬間、
煙が前方へと“爆ぜた”。
「うわッ!?」
視界を奪われた影が、揺れる。
馬が暴れ、足音が乱れる。
見える!
煙の奥、揺れる影がその場で動き回っている。
全力で地を蹴り距離を潰す。
馬上の影に向かって飛び上がる。
(殺す!)
腕を振り上げ首へと叩き込む。
ゴキッ――
骨を打つ鈍い感触。
「ガッ……!」
首を折る手応えが腕に残る。
力なく崩れ落ちる死体を掴み右にいる馬の頭へと投げつける。
馬が驚き前足を上げたのを横目に前方にいる影に飛び掛かる。
足場にした馬の骨がゴキっと鳴る。
その音を聞くのと目の前の男の頭を掴むのは同時だった。
「誰だ!!おまーー」
握り潰す勢いで掴み――
そのまま馬上から“引き剥がす”。
バランスを失った体が宙に浮き。
腕ごと振り抜き、地面へ叩きつける。
――ガンッ!!
鈍く、重い音。
動かないのを確認し、先ほど馬から落ちた奴の方へ駆けだす。
立ち上がろうとする影に向かい剣の柄を握りしめ首めがけて一閃ーー
ドサッという音と手ごたえを感じる。
「ぎゃああああ!!」
「なんだこいーー」
左の方向からも悲鳴が聞こえる。
「敵襲!敵襲!」
事態に気づいた瞬間剣を抜き放つ音が辺りに響く。
(3人殺った、煙も薄くなってきてる………)
「お、おいやめろ俺は味方だ!!」
「わ、わるい!」
声が聞こえた瞬間そちらめがけて飛び上がる。
左の男にそのまま膝蹴りを食らわしーー
空中で回転して踵で右の男の頭にめり込ませる。
ドン!
地面を転がり素早く起き上がる。
「5人目!!」
「8人目!!」
僕の声に呼応するようにミオの声が聞こえる。
あと3人!!
「退け!!退け!!」
「逃がさねぇ!!」
煙はもう消え去る寸前だ、一気に決める!!
3頭の馬が尻を向け逃げ去るのを確認する。
【イグニス!!あいつらのーー】
最後まで言葉を発する事は出来なかった。
ヒュオーー!!
うるさい風切り音と共に上空に何かが打ち上げられる。
ヒュオーー!!
ヒュオーー!!
馬上の男たちが立て続けに打ち上げる物の音を聞き足を止める。
「……僕たちも退くぞ!!」
「え?いいの?」
「ああ、全滅させるのが目的じゃない………嫌な予感もするしな」
一番後ろの男がこちらを振り返る。
素早く森に入り、モース村とは別方向へと駆けだす。
(意味があるか分かんねぇけどな)
「急いで物見櫓の所へ戻るぞ!!」
「分かった!」
走りながら手に付いた血を見つめる。
何も感じない僕は異常なんだろうか?
むしろーー
(違う!守れた事を喜んでるだけだ)
後味の悪いものを感じながら森を抜ける。




