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始原の裁定者と終結の器  作者: 解放さん
序章 生きる意味

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怖い魔女にご挨拶

異様な雰囲気の中に四人組が佇む。

村の入り口まで歩いてきて、入り口に立ちふさがる魔女との対面したまではいいが、誰も口を開かない、口を開くことを躊躇われるような威圧感があった。

目の前にいるのはおじさんより一回りも二回りも年下で僕と同い年くらいの年齢ではなかろうかという少女であったが、迫力があり僕もフリージアも気軽に声を出すことができない。


フリージアに至っては震えて僕の裾を掴んでくる始末。


魔女はただおじさんを凝視している。


おじさんも気圧されつつ、話さないことには埒が明かないと思ったのか、一度咳払いをして話始める。


「お久しぶりですね!!アストレアさん会うのはかれこれ十年ぶりくらいでしょうか?またお会いできてうれしい限りです!」


無理やり笑おうとして笑顔が引きつらせるおじさんのそんな言葉に帰ってくるのは沈黙だけだった。


おじさんを凝視していた顔は初めて動き、フリージアを見つめ、そして僕を見つめ、そしてまたおじさんへと注がれる。


目が合ったのは一瞬だったがその目には感情というものがないかの如く鋭く、そして冷えた目だった。


「何しに来たの?厄介事を持ってこないで欲しいんだけど?」


発せられたその言葉は歓迎的なものは一切なく、心の底から面倒臭そうに思ってるのが伝わってくる。


そう言われてじゃあ帰りますともいかない事情がこちらにもあるので僕たちはおじさんを仰ぎ見る。


「じゃあ帰ります」

「「おい!!」」

ぺこりと頭を下げる坊主男に僕とフリージアのツッコミが重なる。


ハッ!として再び向き直るおじさんは気合を入れてまた話し始める。


「すまないが少しだけ時間をくれ、迷惑はかけない!あんたに聞きたいことが有ってここに来たんだ」


帰ってくるのは沈黙だが構わずにおじさんは話を続ける。


「ここにいる嬢ちゃんは見ての通りエルフだ、この嬢ちゃんは奴隷として俺たちと一緒に坑道で働かされていた、あんたなら坑道のことは知ってるはずだ」


アストレアと呼ばれたその魔女はエルフの少女をもう一度見て、なぜか僕の方も見てきた。


「この嬢ちゃんが言うには聖樹の近くにいたのにも関わらず攫われて奴隷として働かされることになった、あんたならそれがおかしいと分かるだろ?何か知ってることがあるのなら何でもいい教えてくれねぇか?!」


おじさんが頭を下げ頼み込む、隣のフリージアも頭を下げ「お願いします」と頭を下げる、僕もみんなと同じく頭を下げる。


「あなた名前は?」


それはフリージアに向けられて発せられた言葉だ。

声をかけられたフリージアはびっくりしながらも頭を上げおずおずと自分の名前を告げる。


「フリージア・エッセンテと言います…」


ビクビクしながら話すフリージアに魔女は「そう」とだけ言いおじさんに向き直る。


「エルフの森に戻っても問題ないわ」


言葉の続きを待っていた僕たちはしばらく経っても続きの言葉が来ないことに気づき。会話が終わっているのだと悟る。


「ちょ!ちょっと待ってくれさすがにそれで分かりました、とはならねぇよ!!俺たちが聞きたいのはまた嬢ちゃんが攫われないか、安全なのかって言う情報が欲しいんだよ!」


慌てながら話すおじさんに僕たちも一様に頷く。


「私は自分が持っている情報と照らし合わせて戻っても問題ないと言ったわ、それを信用するしないもあなたたちの勝手、事細かくあなたたちに説明する理由は私にはないわけだしね」


その言い草にさすがに僕は頭にきて一歩踏み出しその魔女にかみつく。


「それぐらい教えてくれたっていいだろ!?僕はこの子を安全な場所に返すと約束したんだ!!」


おじさんが僕の片肩を掴み落ち着けと言ってきたが、それを振り払い言葉を続ける。


「困ってるときは助け合うのが人じゃないのかよ!!お前は人の心とかないのかよ!!」


なんの感情も見せなかった魔女の瞳に初めて憎悪が浮かんだ気がした。


そして何の前触れもなく魔女の頭上に先端が尖った氷塊が現れたと思った瞬間僕めがけてそれが飛来する。

魔女から発せられる殺気に僕は体が硬直してまともに動くこともできず目をつむる。


何の痛みも感じなかった、僕は死んだのかと思ったが五感は機能している、恐る恐る目を開けると目の前にはフリージアの小さな背中が僕のすぐ前にさらにフリージアの前に大きな背中が僕らを守るように立ちふさがっていた。


氷塊の先端部分はゼルムの胸に軽く食い込んだ状態で止まっている。

そして氷塊は冷気だけ残し粉々になり霧散する。


「よくそんなガキの為に命を投げ出せるわね」

「俺の大事な息子なもんでね」


へへっと笑うおじさんと、変わらない無感情な声が交錯する


僕は本気で殺されそうになった恐怖と、おじさんとフリージアも巻き込まれて殺されそうになった状況に体中の血が沸き立つのを感じる。


「てめぇ!!ぶち殺してやる!!」


剣を抜き放ち2人を巻き込まないように横にずれ、突進しようとする、フリージアの制止する声が聞こえたが止められそうになかった。

魔女が僕の方を横目で見てるのが分かる、短剣を投げて相手のスキを作ろうと腰の短剣に手をかけ投げる準備をする。


「ガルムやめろ!!!」


おじさんの大声が僕の動きを止まらせ、僕と魔女との視界を遮るように躍り出る。


「剣をしまえガルム」


おじさんの諭すような声、そして近くに寄ってきたフリージアの温かい手が僕の手と重なり僕はフリージアの顔を見る。

心配そうな、泣きそうな顔で首を左右に振る。

僕は小さくごめんと言い剣を鞘に納める。


その様子を首をひねって見ていたおじさんは再度アストレアと向き合い頭を下げる。


「うちの馬鹿が粗相をして本当に申し訳ない」

「謝る必要なんてないわ、ハエが目の前を飛んだところで何も感じないから」


幸いにもフリージアがガルムを遠ざけてくれている最中なのでこの声は聞こえていない。

俺には目の前の魔女を責める気にもなれなかった。


「アストレア、お前とは長い付き合いだ、仲がいいわけじゃあないがお前の事情も知っている。お前には俺を殺さずに見逃してくれたっていう恩がある。だがそれは俺も同じのはずだろ?お前は俺に対しても恩が有るはずだ」


「それをしっかり説明することで帳消しにしろという事?」


俺はそれを否定するかのように首を振る。


「いいや、それだけじゃあ足りないな、お前には俺の頼みごとを1つ引き受けてもらう」


その内容を俺は口にすると初めてアストレアは驚くように目を見開く。そんな表情もすぐに元に戻る。

目の前の少女にとっても俺のこの頼みは死ぬほど嫌な頼みであろう、俺にとっても不安しかないが、この頼みは元からこの少女に話し託すことは決まっていたことだ。

今更変更などできないしするつもりもない、頼れるのはこの少女しかいない。


「最初の迷惑はかけないって言葉は何だったのよ?迷惑かけまくりじゃない」


ため息と複雑そうな顔を見せる魔女に「そんなこと言ったか?」ととぼけて見せるとまたため息をつかれる。


「あいつらもここに呼ぶからな?また挑発するようなことはやめてくれよ?」

「挑発する意図なんて初めからないわよ、言葉を飾らないから誰かの琴線に触れちゃうだけよ」


そこを意識してくれというお願いなのだがこの少女に言っても意味のない事なのだろう。


「お~い!!お前らこっちに戻ってこ~い!!」


大声で離れた場所にいる二人を呼び戻すと、フリージアに手を引かれながら2人がこちらに歩き始める。ガルムはむすっとした顔でそっぽを向いていて、まだまだ子供だなと肩をすくめる。


「優しい顔をするようになったわね」


隣の魔女が俺にそう言ってくる、こいつと初めて…いや再開した時の俺は荒れに荒れていたからな、そう思われるのもしょうがないのだろう。


「何言ってんだ俺は元から優しい顔を振りまくナイスガイだぜ?」


呆れさせてこの会話を終わらせるように、とぼけるようにそう言ってみせる。

アストレアは俺の顔をちらりと見て小さく「そうね」と言い視線を少し下に送るのであった。


「あなたの頼みは聞く、けれど結果については保証しない」

「あぁ…それでいい、それを決めるのは俺でもお前でもない、心配なんてしてないさ」


空は雲一つない晴天なのに俺の心とは正反対だなとしみじみと思う。










「コロシテヤル」


隣から小さく聞こえるその声を聞こえないふりをする。


心配ない、心配ない


心の中でその言葉繰り返し仮面のような笑顔で前を向き続けるのであった。


























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