ミオの強さ④
既に日は隠れ薄暗くなっているが僕らはまだ村の中にいた。
東からの花火はいまだなり続けている。
そんな事を気にすることなく目の前の料理を平らげているところだ。
「やっぱりエリザベスさんのご飯は旨いな!!」
「うん!プリプリでジューシー!!」
「分かる~ママにもこれくらい出来て欲しいよ!」
「そうなんですか?僕には違いがあまり…………」
ウィリアムさんが飯くらい食べる時間はあると言ってくれたからだ。
急いでるのは変わらないのでアーサー宅の家の前で食べている。
なぜかクララとラインも一緒に。
「そんなに私のご飯って美味しいの?
そんな事滅多に言われないのよ?」
「お店開けますよ!………多分!」
「断トツで一番!モグモグ、比べる、モグ、までもない、モグモグ」
「食いながら喋るなよ…………」
ミオに呆れているとクララが暗い顔しながら話始める。
「……クララの所は一度それが原因でパパとママが喧嘩しちゃって、
そこからパパとクララで料理の事は言わないようにって約束になったの」
「争いを生む料理か……」
「あはは……私の料理が悪いみたい」
「ヘンリーの所は…………」
ウィリアムさんが後ろにいるので全員が視線を向ける。
「うぐ!………俺の所もクララちゃんと同じようなもんだ、ヘンリーが{毎日エリザベスさんが料理担当でいいじゃん}って言ってな、取っ組み合いの喧嘩してたよ、はぁ」
その時の光景を思い出してるんだろうか?
苦々しい顔で首を横に振っていた。
「エリザベスさんが教えてあげればいいんじゃないの?」
「それが出来ないのよ……、私は聖魔法を使って肉や野菜を瑞々しくしてるから」
「へぇー!そんな使い方もあるんだ!?」
「聖属性の魔法って珍しいですからね」
「そうなの?」
「両親から聞いた話と本に書いてあった知識ですけどね、
聖属性を使えるだけで一生生活に困る事はないらしいですよ?」
「アストレアちゃんも聖属性だけは使えないらしいのよ」
それは凄い!
分かりやすい凄さの説明だ。
「ミオは使えないの?」
「うちは火と陰陽だけ」
「陰陽?」
ラインに説明を求めてそちらを見るが、
眉間に皺をよせ首を振っている。
「ミオ陰陽ってどんな魔法なの?」
「うーん、内と外に干渉する魔法?」
「ミオ自身と外側に干渉する?」
「違う!内と外!」
「”うち”と外?」
指でミオを指してから外側全体を手でパラパラと示す。
「ガルムさん、中と外って意味じゃないですかね?」
ミオが頷くのでそれであってるらしい。
説明が下手くそ過ぎる!
「うちもまだ陰陽に関しては扱いきれてない、
陽に関してはまだ使えたことないし」
「分かったもう大丈夫!分からない事が分かったから!」
「…………ガルムが聞いてきたのに、それより行かなくていいの?」
「そうだった!エリザベスさんごちそうさまでした!」
「食器は私が洗っておくわ?あまり無理しないでね?」
「えっと、ありがとうございます!」
お言葉に甘えて食器を手渡し、そのまま東の平原へと駆ける。
「よっしゃ!元気いっぱいだぜ!競走しようぜミオ?」
「やだ!」
「負けるのが嫌なんだろ?」
「…………負けないし」
にやけ顔をミオに向けるとムッとした顔を見せる。
結構負けず嫌いなんだよなこの娘。
急にスピードを上げるミオに慌てて追いつく。
「おま!それはずるいだろ!」
「…………なんで追いつくん」
「なんか言った?」
「何でもない!」
鳴りやまない花火を聞く、
東に向かうほどに音は大きくなり、
花火以外の音も耳に届くようになる。
「どんなお祝い事してるんだろう?ミオはどう思う?」
「話、はぁ、かけないで!」
「引きこもりだったから体力ないの?うお!」
尻尾が振り払われ慌てて地面に伏せ回避する。
僕の事を気にせず走り続けるミオ。
「ミオさんそれはいくら何でも…………」
そっちがその気なら…………。
体制を立て直し走り、ミオとの距離をグングンと縮めーー
ズザァ!
「ふぎゃ!」
「お返し!」
後ろからタックルをかまし地面に倒れ込む。
素早く起き上がり前に駆け出す。
「僕の勝ちだな!」
後ろを振り返ると地面に倒れたまま足をジタバタしてるミオがいた。
「はぁ、いじけちゃったよ」
頭をかきミオの元に駆け寄る。
近づくほどに僕の悪口が聞こえてくる。
「ぼけ!かす!あほ!」
「そこまで言わなくても………」
先に仕掛けて来たのはミオさんじゃんとも言えず跪く。
「ごめんミオ、ちょっとやりすぎたーーえ?」
「捕まえた!」
ミオの6本の尻尾が僕の体を包み込み身動きが取れない。
立ち上がりそのまま走るミオを見て察する。
「まじかお前!おまえはこんな勝ち方でいいのかよ!」
「やったー!!ガルムに勝ったー!!」
「こんの!!う、動けねぇ!」
着いてすらいないのに勝利宣言をされる。
必死に抜け出そうとするがびくともしない。
――――――――――――――――――――――――
「ふぅ、いい勝負だったね?!」
「………どこがじゃい!」
「接戦だったじゃん!!いや~もう少しで抜かれる距離だったよ」
距離的に言えばそうだろう。
「荷物みたいに運ばれてただけなんだけど?」
「気のせい気のせい」
そこまでして勝ちたいのかこいつは…………。
はぁ、まあいいか。
2人で物見櫓の上に上がる。
街の方を見つめると明かりがいつも以上に輝いていた。
目を凝らすとここからでもうっすらと人の動きが分かる。
(どれくらいの人が住んでるんだろう?)
――ドン。
胸の奥が、ひどくざわついた。
太鼓の音と花火の音が同時にここまで届く。
ラインが披露してくれた太鼓と違って嫌な感じだな。
「開戦の合図みたい」
隣のミオが目を細めそんな事を言う。
「僕もミオと同じことを思ってたよ」
街が気になる、
好奇心でそう思うのかは分からない。
けど今は村を守ることが最優先だ。
村の人たちが最優先に決まってる。
「ガルム?」
「どうした?!何かいたのか?」
周りをすばやく確認してミオを見る。
そこには心配そうにこちらを見るミオがいた。
「なんで苦しそうなの?」
「え?」
苦しそう?僕が?
顔を触ると強張っているのが分かる。
顔の筋肉をほぐすように手を動かす。
「悪い悪い、なんか気合が入りすぎてたみたいだ」
「そう?」
「ああ、大丈夫だ」
ミオが頷き前に視線を戻す。
僕も一緒に暗闇を睨みつける、
見るべきは街じゃなく平原だ。
それを心に言い聞かせて。




