消えない想いと消えない絆
処刑台の上に跪いてる俺の前には憎しみに顔を歪める群衆がいる。
ゴツ!
石が投げられ俺の額から血が流れ落ちる。
広場に埋め尽くす人の群れ。
目の前には俺に憎悪を向ける奴らがたくさんいる。
向けてくる言葉は全て恨み言。
そりゃそうだ、それほどの事を俺はしたんだからな、
見苦しく叫ぶつもりなどない。
俺の役目はちゃんと終えた。
「てめぇ!!何笑ってやがんだ!!
お前のせいで俺の妻も娘も死んだんだぞ!!
信じてたのに!!」
「知らねぇよ、てめぇが勝手に信じたんだろ?
ならその責任も当然てめぇのもんだ、押し付けてんじゃねぇよ」
「な!お前は貴族だろうが!!
俺たちを守るのが貴族の務めだろうが!」
「ああ?!
なら家族を守るのは親であるてめぇの責任だろうが、
なんでお前だけ生き残ってるんだよ、
命惜しさにてめぇだけ逃げ出したんじゃねぇのか?」
「ック………黙れ!!」
「そうだ!俺たちに責任を押し付けてんじゃねぇーよ!」
「何がしたかったのよあんたは!!」
「この状況で笑ってるあんたは悪魔よ!」
周りの奴らが一斉に騒ぎ始める。
「ハハ……いい顔してんな、お前ら」
ゴツ!
痛ぇな。
「皆さん静粛にお願いします。」
城の上の方から声が聞こえる。
「大罪人であるゼルム・ロード・バイセルは私の手によって捕えることが叶いました!
領民の皆様が恨み続けた男をついにこの日、地獄へと落とすことが出来るのです!」
歓声。
街に響き渡るその声で俺がどれほど恨まれてるのか知ることが出来る。
「ただ殺すだけでは皆さんの恨みは消える事はないでしょう!
生かして生かして!苦しみ続けさせるのです!!
この男がした所業をこの男自身に帰してやるのです!!」
再びの叫び声。
叫びというより、怨みそのものが形を持って押し寄せてくる
「さぁ!!この者に恨みがあるものは順番に痛みつける事を許します!!」
その言葉の後に静寂が包む。
1人、先ほどの男が処刑台にまで登ってくる。
「へ、へへお前は悪魔だ、悪魔を痛めつける俺は英雄なんだ」
「そうかい、その英雄は俺にどんなことをしてくれるんだい?」
「こうするんだよ!!」
ゴンッ!ゴンッ!ゴンッ!
笑いながら殴る男を見つめる。
(どっちが悪魔だよ)
「そうです!!それでいいのです!!もっともっと苦しめてやりなさい!」
後ろ手に繋がれた鎖で手は使えねぇ。
だけど立ち上がる事は出来るんだぜ?
ジャラジャラ!!
「ヒッ!お、おい!!コイツを取り押さえろよ!!」
俺の両隣に立つ兵士に騒ぎ散らす。
戸惑う兵士に構わず目の前の男と距離を詰め、
首筋に歯を当てる。
一瞬だけ、間。
――噛み千切る。
「ぎゃああああああーーぴぎゃ!」
叫ぶ男の頭を踏み砕き、声が止まる。
「さあ次はどいつだ?お前らなんかに俺が殺される訳ねぇだろうが、
また生き延びて今度はお前らを殺してやるよ」
流れ落ちる血を舐め笑いかける。
「な、なにをしている!!そいつを取り押さえろ!!」
その声と聴衆が処刑台に駆けだすのは同時だった。
その顔に憎悪と恐怖を浮かべて。
兵士たちは身の危険を感じ後ろへと逃げ出す。
瞬く間に俺の周りは埋め尽くされ激痛が体全体を襲う。
バカなやつらだな、
俺はお前らのおもちゃになるつもりなんてないんだよ。
頭突きを繰り出し蹴りを繰り出し聴衆の怒りを膨れ上がらせる。
「殺せるもんなら殺してみやがれ、ハハハハハ!!」
耳を掴まれ千切られる、足を折られ膝を着き、それでも立ち上がる。
目の前の男の鼻に噛みつき千切り取る。
蹲る男に膝蹴りを繰り出す。
終わりの見えない人の波が俺だけを目指して押し寄せる。
「忘れるなよお前ら!!俺という存在をな!!」
ーーー刹那
「抜剣ーーーーーーーーーー!!!!!!」
後ろからの大声と剣を抜く複数の音。
「我らの忠義を今示さん!!!!」
「「「「「「「うおおおおおおおおおお!!!」」」」」」」
その声は聞き覚えのある声ばかりだった。
しっかりと聞き分ける事が出来る。
人の断末魔が響き渡り俺の周りが静かになる。
「…………お前ら、なにしてんだよ」
8人の騎士が俺の周りを囲んでいる。
「我らの忠義は何があろうともーー」
「「「「「「「「ゼルム・ロード・バイセルと共に!!!!」」」」」」」」
「…………馬鹿野郎!!!俺はお前らが死ぬ事を望んじゃいねぇんだよ!!!!」
「ッ!だとしても!!あなたの死を穢す事は我らには耐えることなど出来ません!!」
「ごめんなさい…………」
「うう…………ゼルム様」
8人が一斉に俺の方を向く。
皆が涙を流し剣を俺に向ける。
(こいつらの覚悟を踏みにじる事はできねぇな)
「大きくなったなお前ら」
震える剣先に自分の顔が映る。
「…………ありがとうなお前ら、それと…………すまん」
「貴方と共に行けなかった事、それだけが我ら一生の心残りです」
「何言ってんだ、お前ら全員付いて来てくれるんだろ?」
「もちろんです!」
8人が頷き、泣きながら笑う。
「最後に残してきた奴らに”残させてくれ”」
城の方から叫ぶ声が聞こえる。
それよりも大きな声で。
「お前らー!!月狼団の誓いの言葉を!!」
【――仲間を守り、未来を紡ぎ】
【――為すべきことのために悪魔となり】
【――誇りを胸に存在を刻め】
その声はゼルムだけではなかった。
遠くの方で何重にも同じ言葉が重なる。
言い終わりーー
体に8本の剣が突き刺さる。
「ぐほっ!」
(ガルム……お前は、俺みたいになるなよ)
お前と、ずっと一緒に暮らしたかったな…………。
ありがとう俺を人に戻してくれて、
こんな俺を父ちゃんと呼んでくれて…………ありがとう。
目の前が暗くなっていく、
笑えているかな俺は…………
◇ ◇ ◇
広場に静寂が広がる。
全員が1か所を見つめ動かない。
8人の騎士が剣を抜き自分たちの首に剣をあてがい。
一瞬だけ目を閉じる。
――息を揃え。
そのまま、刃を引いた。
8人は中央のゼルムに倒れ込むーー
それは主を最後まで守る姿にも見えるーー
ガンダムUCの「B-Bird」を聞きながら執筆しました。
歌詞
思い切り叫ぶ声が聞こえない距離でも
きっとその胸に届くから
Go round and round,
There is no end of the world
同じ闇に浮かぶ夢を見よう
閉ざされた地平の彼方に
その影を 探しているよ
いま此処で分かち合うものが
痛みでしかないのなら
祈りは翼を広げて 光を纏うように
僕らの夜明けを連れて来る
Oh, brave your truth 誇り高く
同じこの刻を越えよう




